副業と法律:第3回 社員の副業を会社は知ることができるのか? (2017/9/11 nomad journal)
前回、基本的に副業は自由にできることをお話しました。しかし、自由にできるとわかっていても、勤務先に副業禁止規定がある以上、副業はやりにくいですね。もし、会社に副業していることが知れたら、何らかの処分を受けることになるかもしれない、そう思うと、やはり腰が引けてしまいます。
副業は、なぜ勤務先にわかってしまうのでしょうか。今回は、その理由をまとめてみたいと思います。
1.副業の実態はこうしてあぶり出される
(1)ポイントは住民税!まずはその仕組みを理解する
本業、副業の別を問わず、所得は原則として確定申告をする必要があります。確定申告された所得額をもとに、所得税や住民税など納付すべき税額が決まります。
会社員の方であれば、会社が毎月の給料に対する所得税を給料から天引きして徴収し、みなさんに代わって納税していますので確定申告は不要です。しかしあくまで毎月の給料をもとに課税額を算定したものなので、他に控除すべき額がある場合は年末調整を行います。こうして最終的な課税額が決まり、それを基に所得税および住民税の納税額が決まります。
住民税は前年分を翌年に支払います。住民税の額は市町村から会社に通知され、所得税と同じく会社が給料から天引きして支払っています。
では、市区町村はどうやって住民税を計算しているのでしょうか。
会社は毎年、住所地の市町村に対し給与支払報告書という書類を提出しなければなりません(地方税法第317条の6)。この給与支払報告書に基づき市町村が住民税額を算定し、会社にフィードバックしているのです(住民税課税決定通知書)。
(2)すべての所得額は市町村から会社に通知される
住民税が決定される過程で重要な点は、すべての所得データは市町村に集まっている、ということです。副業であっても給与所得にあたれば、副業先が給与支払報告書を提出します。
住民税課税決定通知書には、本業および副業を含めた合計所得額と住民税額が記載されるため、これを本業の会社が見れば、副業していることは簡単にわかります。
こうして会社に副業がバレるというわけです。
2.会社に知られず副業できる? 普通徴収と特別徴収の違い
副業で得た所得を会社にバレないようにはできないのでしょうか。
住民税には普通徴収と特別徴収という2種類の徴収方法があります。住民税を会社が代わりに支払う方法を特別徴収といいます。これに対し、自分で所得を確定申告し納税する方法を普通徴収といいます。
副業を会社に知られるかどうかは、この徴収方法の違いがカギを握ります。
特別徴収では、総所得が記載された住民税課税決定通知書が会社に送付されるため、会社は本業以外の所得についても把握できます。一方、普通徴収では、副業による所得は住民税課税決定通知書に記載されません。そのため副業により増加した住民税も記載されなくなります。会社は住民税課税決定通知書から副業の存在を把握することができないというわけです。
副業を会社に知られたくないなら確定申告の際、普通徴収を選択してください。方法は簡単です。申告書には特別徴収にするか普通徴収にするかの項目がありますので、「自分で納付」の欄に丸を入れて提出すれば普通徴収になります。
ただし、普通徴収にできるのは原則として自ら確定申告する場合のみです。副業で得る所得が給与所得にあたれば、副業先には給与支払報告書を市町村に提出する義務があります。この場合、住民税は特別徴収となり会社に副業分の住民税額が知られることになります。
3.マイナンバー制で副業の所得は丸裸に?
普通徴収を選択しても、会社にマイナンバーを知らせなければならなくなったので所得が一元化され、結局、会社に副業がバレるのではないか・・・そういった心配をする方もいるようです。
マイナンバーとは、国民一人ひとりに与えられた12桁からなる固有の番号です。マイナンバーは、国民の収入を把握することを目的としています。それは正しく税金を課税し徴収することや社会保険料の徴収、給付手続きを間違いなく行うとともに不正受給を防止するためです。
マイナンバーは、行政が正しく手続きを行うためのものであるため、その過程で把握した所得が会社に通知されるようなことはありません。したがって、マイナンバー制が導入されたからといって、それによって副業が会社にバレるということはないのです。
副業が会社にバレるかどうかは、あくまで住民税の徴収方法によります。マイナンバーとは無関係です。
4.まとめ
アルバイト代は現金手渡しだから大丈夫・・・と思っている方がいるかもしれません。しかし、所得が多いか少ないか、銀行振り込みか手渡しかに関わらず給与支払報告書が提出されていれば、副業している事実はいずれ会社に知られることになります。
なお、給与所得にあたる場合でも住民税を普通徴収の扱いにできる自治体があるようです。今後、副業を認める会社が増えると思われますが、とりあえず今は会社に内緒にしておきたい、そういう場合は、普通徴収にできるかどうか市町村の窓口に相談してみるとよいでしょう。
記事制作/白井龍
- 関連記事
- 副業と法律:第1回 収入アップと副業禁止規定の間で苦悩する会社員
- 副業と法律:第2回 副業する前にチェックしておきたい副業禁止規定
- 世界の面白い副業:Uberって、どうなの?
- 働き方改革でも副業・兼業を推進へ 企業が導入するためには何が必要か?
- 正社員副業の常識を覆す柔軟で合理的な働き方