働き方改革でも副業・兼業を推進へ 企業が導入するためには何が必要か? (2017/8/21 JIJICO)
3割以上の企業が副業・兼業を容認
NPO法人「二枚目の名刺」が実施した「平成29年 大企業人事の副業・兼業に関する意識調査」の結果によると、34.8%の企業が一定の基準を設けながらも副業・兼業を認めている一方、基準を設け禁止している企業は61.9%と過半数を超えています。
副業については「働き方改革」でも推進する方向で、「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」という項目があります。項目では、「副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」としています。
政府の目的としては、将来的に労働力人口が減少するとされる中、副業・兼業を容認する事で労働力不足を補い、さらには収入の増加につながり可処分所得が増え、景気にも貢献するというところでしょう。
副業・兼業が認められないケース
政府や一部の副業・兼業を容認する企業がいる中、副業・兼業が認められないケースについても抑えておきたいと思います。
ひとつは、競合他社での副業・兼業です。特に技術職や研究職、一定以上の役職者について本業で業務上知り得た機密情報を守るためにも禁止をする事が多く、本人が意図せずに情報を漏らしてしまうことも考えられます。
次に、本業に支障をきたすような副業・兼業です。例えば、事務職であったとしても、本業が終わった後に深夜に働いたり、本業の休日にアルバイトとして他社で疲労するような業務に就いてしまった場合などです。
本業の企業では労働者の心身の疲労や健康状態、あるいは勤務時間数を考えて休日としているにも関わらず、これに反して副業・兼業をしてしまうと、かえって疲労が蓄積して注意力が散漫になってミスを起こしやすくなってしまいます。
さらに勤務時間中に副業・兼業を行うのはもっての外です。事務職でパソコンを使ってデスクワークをしているように見せて、実は本業以外の仕事をしていたなどがあります。
副業・兼業を導入するために必要なこと
また副業・兼業による労働時間の管理や労働災害への対応などは、副業・兼業を前提としていない現在の労働基準法では、企業も具体的な対策を講じる事ができない事も、副業・兼業を積極的に推進するに至らない要因と考えられます。
働き方に対する考え方が転換点にある現在、これから先、働き方は常に変化し続けていくと考えられ、今は副業・兼業禁止が当たり前でも、数年後には副業・兼業が当たり前になる可能性も十分あります。
働き方改革で多様な働き方が推進される中で、副業・兼業を導入するために何が必要なのか考えてみてはいかがでしょうか。
- 著者プロフィール
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成澤 紀美/社会保険労務士
IT業界の人事・労務トラブル解決、就業規則に強み
自身も元SEで、お客様の約8割がIT関連企業。業界にいたからこそ分かる業界のクセ・スピード感、また多くのIT関連企業がお客様だからこそ集まってくる同業他社の動向を活かした人事・労務対策が強みです。
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