女性が長く働き続けるための職場づくりに知っておくべき5つのポイント (2017/6/30 瓦版)
実態に即した施策でなければむしろ逆効果
職場での女性活躍の推進が求められる風潮が高まっている。確かに職場に女性はたくさんいる。では実際、その環境は女性が活躍する状況にあるのか…。トマーツイノベーションがさきごろ、大規模調査に基づき実施した管理職向けセミナーで議論された内容から、その実状をあぶり出す。
セミナーの目的はズバリ、働く女性の意識や置かれた環境を正しく理解した上で、活躍できる職場づくりの意識を高めること。裏を返せば、徒に職場で女性活躍を推し進めても、独りよがりではむしろ、逆効果になりかねないということだ。
1:女性は男性以上に就労継続意欲がある
まず大前提として、女性は本当に就労継続の意欲があるのかという点。これについては、中原淳氏が同社の女性活躍推進プロジェクトで実施した調査で明確な答えが出ている。「できるだけ長く働き続けたい」と思う人の割合は、女性が75%で、なんと男性の65%を上回っている。意外なようだがココはしっかりと押さえておく必要がある。
2:女性はお金よりやりがいを重視する
その上で重要になるのが、働く上で重視するものという点。同じ調査で、男女差が大きかったのは、「大変でもやりがいのある仕事をすること」(女性:30%、男性:18.5%)、「給与アップなど見返りがある仕事をすること」(女性:4.3%、男性:10.6%)の2項目。女性はやりがいを、男性はお金を重視していることが露骨に反映されている。
この2つの項目からだけでも、マネージャーはいかにすれば、女性をイキイキと働かせられるかのヒントがみえてくるだろう。それは、やりがいのある仕事を任せ、しかも、長期的あるいはコンスタントに仕事を振るということだ。逆にいえば、男性部下のように出世をちらつかせながら、仕事を任せるというのは逆効果でしかないということも認識しておく必要がある。
では実際のところはどうなのか…。この点についても同調査で明らかになっている。「男性の方が仕事の割り振りや評価の面で優遇されていた」と感じた女性は45%で、男性の31%を大きく上回った。上司の意向はともかく、女性が「そう感じた」という割合が高いという事実は、難題だがさらなる配慮が必要という結果といわざるを得ない。
3:女性比率が高いほど業績は向上する
この結果を偶然やどうしようもないことと捉える上司もいるかもしれない。だが、同調査で分かった無視できないデータがある。それは、女性社員の比率と会社の業績の関係だ。女性比率が1割未満の会社の業績は10.1%上昇、以下、1割程度で18.9%、2割程度で28.5%、3割以上で42.2%と女性比率に比例し、業績は向上している。いかに女性を上手に活用するかが、マネジメントにおいて重要であることを、いやが上にも示す結果といえるだろう。
女性が活躍するほど業績をアップするという事実は、もはや男女平等という観点を超え、人口減少でパラダイムシフトに直面する働き方において、女性が活躍する職場づくりが企業の生き残りを左右しかねない新スタンダードといえるほどのインパクトがあるといっても大げさでないだろう。
4:女性は機会の平等を強く求める
同調査がその影響度でランク付けした「女性が長く働き続けたいと思う職場」のトップ3は、1位が「機会を男性同様に与えてくれる職場」、2位:「助け合いのある職場」、3位:「残業を見直す雰囲気がある職場」となっている。そもそも男性以上に長く働き続けたい割合が高い女性だけに、職場での男女の区別はモチベーションを下げる要素でしかないということだ。
セミナーに参加したのは、男性19人、女性22人。その従業員規模は100名以下が3割、101~300名が6割。業種はIT3割、サービス3割、卸・小売2割、製造1割だった。参加者は、それぞれのテーマについてグループに分かれ、議論を重ねたが、多くのテーブルで、調査結果にうなずきながらも、実際の現場での難しさを実感する声も漏れ、女性活躍の職場づくりの難しさが透けてみえた。
なかでも考えさせられたのが、「せっかくいい空気が浸透しても何年かすると人が入れ替わり、リセットされてしまう」という声や「業務の見える化の難しさ」だ。理屈では分かっていても、実際の現場は流動的で、人格も人それぞれ。柔軟に対応するにしても、物理的な限界もあり、万人を納得させるのは至難の業だ。
5:今後も働く女性の比率は向上する
講師を務めた同社の田中敏志氏は、女性が活躍する職場づくりのヒントして次のようにアドバイスを送る。「労働力減少、平均給与の減少トレンドなどから、今後も働く女性の比率は向上していく可能性が高い。女性活躍推進法の施行もそれを後押しする。そう考えると女性が長く働き続けられる職場づくりは重要課題といえる。配慮し過ぎることなく、女性に平等に機会を与え、遅くまで働くことがエライという風潮を解消するなどの取り組みを、こまめな面談等で本人意向を踏まえながらマネジメントすることが求められる」。
日本が世界に後れを取り始めた元凶は、女性活用の失策にあるという声もある。そもそも、「女性だから」という発想はナンセンスでしかなく、限りなくゼロに近づけ、男性が育児に参加することも当たり前になっていかなければ、日本は後退こそすれ、前進はない。男女雇用機会均等法の施行からは30年以上が過ぎている。中途半端にズルズルと一進一退を続けてきた男女の労働格差の問題は、もはやとっくに解決のタイムリミットを過ぎている…。
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