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脱毛サロンが行政処分により倒産、特定商取引法による規制について (2017/5/10 企業法務ナビ

関連ワード : 法律 消費者 

はじめに

脱毛サロン「エターナル・ラビリンス」を運営していたグロワール・ブリエ東京(東京都港区)が4月5日に破産手続開始決定を受けていたことがわかりました。同社は昨年8月24日に消費者庁により特定商取引法に基づく行政処分を受けていました。今回は特定商取引法による規制について見ていきます。

エステサロン

事件の概要

グロワール・ブリエ社は2003年から脱毛サロンを展開し、有名芸能人を起用した広告戦略で急成長を果たし2015年には売上高が約41億円となっておりました。しかし広告戦略による会員数の増加を重視するあまり、それ以外の設備投資にまで手が回らず、増加した会員が予約を取れない、施術を受けられないといった事態に発展しました。

消費者庁の発表によりますと、同社はそれにもかかわらず「間違いなく予約が取れます」などと表示をしておりあました。また実際には17万円を超える契約をすれば月あたりの価格が9500円になるにすぎないにもかかわらず、「通常月額9500円」と、あたかも月9500円で施術が受けられるかのように表示を行っておりました。消費者庁は昨年8月24日に同社に対し9ヶ月間の業務停止命令を出しました。

特定商取引法の規制対象

特定商取引法は特定商取引を公正にし、消費者の利益を保護しまた商品の流通、役務の提供を円滑にし国民経済の健全な発展を目的としています(1条)。ここに言う「特定商取引」とは(1)訪問販売(2)通信販売及び電話勧誘販売(3)連鎖販売(4)特定継続的役務提供(5)業務提供誘引販売(6)訪問購入を言います。特定継続的役務提供とはエステティックサロンや語学教室といった長期間継続的に役務を提供する類型の取引を言います。業務提供誘引販売とは仕事を紹介すると言う口実でそれに必要だからと商品を販売する態様のものを言います。今回は特に特定継続的役務提供について見ていきます。

規制内容

1.書面の交付義務
事業者が特定継続的役務提供について契約をする場合、契約前には「概要書面」を、契約締結後には遅滞なく「契約書面」を相手方に交付しなければなりません(42条)。その記載内容は(1)事業者の氏名、住所、電話番号等(2)役務内容(3)その他購入が必要な商品がある場合は商品名、種類、数量(4)役務の対価(5)支払時期と方法(6)役務提供期間(7)クーリング・オフに関する事項(8)中途解約に関する事項(9)割賦販売法に基づく抗弁権に関する事項⑩前受金の保全に関する事項等が挙げられます。

2.誇大広告の禁止
特定継続的役務提供に関して広告をする場合、役務内容または効果等について「著しく事実に相違する表示」「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させる表示」が禁止されております(43条)。いわゆる誇大広告の禁止であり、その内容は景表法が規制する有利誤認表示や優良誤認表示と同様のものとなっております。

3.その他禁止行為
誇大広告以外にも契約の締結時または締結後にその解除を妨げる目的で事実を違うことを告げる、故意に事実を告げない、相手を威迫して困惑させるといった行為が禁止されます(44条)。

4.書類閲覧
前払い方式で5万円を超える特定継続的役務提供を行う場合は、事業者は消費者が財務内容等を確認できるように貸借対照表や損益計算書等の書類を用意し、消費者が求めた場合は閲覧できるようにしておくことが義務付けられております(45条)。

違反した場合

上記の義務等に違反した場合は業務改善指示、業務停止命令といった行政処分がなされる場合があります(46条、47条)。また罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科等が課されることもあります(70条等)。

コメント

消費者庁の発表によりますと、グロワール・ブリエ社は事実と異なり「月額制」「通暁月額9500円」「全身10部位脱毛し放題、月額4980円」等の虚偽誇大表示を繰り返しておりました。また実際には多数の会員が予約が取れないにもかかわらず「他社よりも予約が取りやすい」等の不実告知がなされておりました。また消費者への書面交付や財務内容不開示だけでなく、解約した消費者への返金についても虚偽の事実を告知するなどして拒否や遅延といった不履行を繰り返していたとのことです。これにより9ヶ月間の業務停止という厳しい処分が出されることとなりました。

このように長期間の業務停止は場合によっては即倒産につながるものと言えます。また誇大広告等は同時に景表法の優良誤認表示等にも該当し高額の課徴金が課されることも有りえます。規制の対象となる事業を行う場合にはどのような規制が設けられているかを正確に把握し対処することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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