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航空業界労組が取り組む、少し異例な人材不足解消の取り組みの中身 (2017/4/14 瓦版

関連ワード : インバウンド 交通 労働・雇用 

なぜ労働組合が人材不足解消に動くのか

少子高齢化を背景に、多くの業界が人材不足にあえいでいる。業務が回らなくなりかねないほど危機的な状況もある。航空業界も例外でなく、人材確保が重要課題だ。異色なのは、同業界で結成する労働組合が自ら、この危機に向き合う動きをしている点だ。現場での危機感がそれだけ強いといえばそれまでだが、その狙いはどこにあるのか…。

空港業界の人材問題について解説する航空連合会長・松岡氏

空港業界の人材問題について解説する航空連合会長・松岡氏

航空業界の裏に忍び寄る深刻な人材不足の影

労働組合は、経営側との労使交渉で、賃金や労働時間などの労働環境改善を実現する印象が強い。政策提言などによる産業の健全な発展にも取り組んでいるが、基本は内向きの活動がその軸だ。だが、航空業界の労組、航空連合は、3年前から外向きの活動を開始。その名も「空港で働く魅力発信プロジェクト」を実施し、能動的な労働環境改善に取り組んでいる。

プロジェクト発足の理由はズバリ、人材不足だ。航空連合会長の松岡宏治氏は、次のように経緯を説明する。「空港で働く職場から『採用が計画通りに進まない』、『離職が増加している』という多くの声が聞こえてくる。労働条件の維持・向上など、労使で取り組むべき課題はあるが、今後のインバウンドのさらなる増大を考えてもこのままでいいのか、という問題意識から、経営側とは違う視点で若年層へ航空業界への関心を持ってもらいたいと考えた」。

チェックイン・案内などを行う「グランドスタッフ」

チェックイン・案内などを行う「グランドスタッフ」

<人が足りない、人員を増やせ>。こうした場合、それを材料に経営側に交渉するのが一般的な組合のスタンス。だが、現状でもギリギリの中で、日本は、2020年には現状の倍近い4,000万人、2030年には、6,000万人もの訪日外国人旅行者の受け入れを目指している。訪日客の約95%は航空を利用する。この状況が続けば、需給バランスが崩れ、空港機能がパンクしかねないほど、事態はひっ迫。時間のかかる交渉では到底間に合わず、組合自らがアクションを起こさざる得ないほど、現場には危機感が充満している。

そもそも、人手不足の状況下では採用がうまくいかなければ、企業は人員不足のまま、会社を回すことになる。この場合、問題となるのが、教育面の弱体化だ。指導すべき人材が、業務に忙殺され、疲弊。人材が育たないことで、さらに負担が増し、離職者の増大へとつながっていく。その結果、さらに既存人員に負荷が増え、離職という負のスパイラルに陥ることになる…。今後、確実に現場負荷が増大することが分かっている航空業界が、とりわけ強い危機感を持つのも無理はない状況なのだ。

インバウンド需要増大で空港機能パンクの恐れも

とはいえ、航空業界とえば、いまだ就職人気ランキングで上位に名を連ねる。人手不足といえわれても、すぐにピンとはこない。だが、それは、パイロットやCAで、それ以外の航空業務従事者は、地味でハードな側面もあり、人手不足が顕在化しつつある。そこで、同プロジェクトでは特に、チェックイン・案内などを行う「グランドスタッフ」、搭乗橋の着脱や手荷物・貨物の搭降載などを行う「グランドハンドリング」、受託、搭載計画立案などを行う「貨物」の3職種に絞り、その広報活動からアクションを起こした。

搭乗橋の着脱や手荷物・貨物の搭降載などを行う「グランドハンドリング」

搭乗橋の着脱や手荷物・貨物の搭降載などを行う「グランドハンドリング」

決死の覚悟とは裏腹に、外部への訴求は極めてソフトだ。対象が若年層であることもあるが、経営側とは違う視点ゆえに、それなりに振り切れている。「企業イメージに頼るつもりはありません。我々としてはあくまで職種に魅力を感じてもらえるようなアピールを意識しています」(松岡氏)というように、いわゆる採用コンテンツのような見てくれのよさは抑え、現場目線で、しっかりと仕事そのものの魅力を伝える工夫が随所にちりばめられている。さらに、SNSや動画によるオリジナルソングの他、マンガも活用するなど、業界に興味がなくても見てみたくなるコンテンツを揃える。

こうした活動は本来、経営側がすべきことだ。だが昨今、企業でもトップや人事を超え、現場発信で環境改善の動きが増大傾向にある。こうした流れは、もはや、経営側の施策レベルでは追いつかないほど、現場に構造変化の波が押し寄せている表れといえるのかもしれない。逆にいえば、弱体化が叫ばれる組合が、復権するチャンスともいえる。単に企業にお伺いを立てるだけの構図から脱却するきっかけになるとすれば、働き方改革の文脈からも相乗効果を期待でき、大きなうねりにつながる可能性もあるだろう。

提供:瓦版

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