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高齢者がフレイルにならないために取り組んで欲しい運動について (2017/1/5 JIJICO

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フレイルとは?

フレイルは、英語で虚弱を意味する「Frailty」をもとにした造語です。メタボやロコモといった身体問題の症候群を略語化することで社会に浸透しやすいようにと日本老年医学会により2014年に「フレイル」という考え方が提唱されました。

動作が遅くなったり転倒しやすくなったりするなど身体的な問題(ここにはロコモやサルコぺニアが含まれる)だけでなく、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題、独り住まいや経済的な困窮などの社会的な問題も含むのが特徴です。放置すれば介護が必要な状態に陥り、場合によっては生命にかかわる、見逃すことの出来ない状況です。

ジョギング

日本老年医学会のワーキンググループ代表を務めた、京都大学の荒井教授は自分で出来る予防法として以下のことを提案しています。

  1. たんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食事
  2. ストレッチ、ウオーキングなどの運動
  3. 身体の活動量や認知機能を定期的にチェック
  4. 感染予防(ワクチン接種など)
  5. 手術の後は栄養やリハビリなど適切なケアを
  6. 薬の種類が多い人は主治医と相談

私はシニアフィットネスの専門家ですので、ここでは「運動」について詳しく解説していきます。

フレイルを運動で予防するには?

フレイルで重視するのは、「立てますか」「歩けますか」「日常の外出が出来ますか」(交通手段利用も含む)といったことです。

運動で「立つ」「歩く」「日常の外出に伴う移動時における様々な状況に対応できる」足腰の筋力をキープしておきたいですね。

様々な研究結果や文献などでは「ウオーキングやストレッチ」を勧めています。日時的な入院でベッドに寝たままになった時もでも、脚の筋トレをしましょうとも言っています。

ここではっきりさせておきたいのは、「立つために必要な筋肉」「歩くための筋肉」「その他の動作に対応する筋肉」は同じではなく、その動作ごとに必要な筋肉や力の出し方は違う、ということです。言い換えれば、どんなに寝たままで体操をしていても、立った時には全体重が脚にかかるわけですから、その体重を支えられるだけ必要な筋力を保持できなければ、やはり立つことは出来ないのです(厳密に言うと、筋力だけでなく、骨や関節の安定性、神経との連携が大切になります)。

同様に歩くということは、脚を前に出すときにどうしても片足立ちになる瞬間があるわけで、その時に片足で体重を支えられなければ、1歩たりとも前に踏み出すことすらできない、となります。

つまり、いかなる手段、様々なマシンや補助具、を使ってでも、立つためには立つ動作を両足に体重がかかった状態または同じくらいの重量がかかった状態でのエクササイズをしなければなりませんし、歩くためには片足で立って、反対の足を前に持っていくことが出来るような筋トレが必要なのです。単に歩いているだけでは、徐々に出来ないことが増えていきます。それはウオーキングだけでは、衰えていく筋力に歯止めをかけるだけの負荷になっていないからです。ここはやはり、若干の筋トレと併用したいところです。

フレイルを予防するための筋トレ

またストレッチだけでは、筋トレになりません。固くなった筋肉をほぐす効果はありますが、筋力アップにはならないのです。特に、「しっかりストレッチだけ」だと、筋肉に力が入りにくくなる人もいますので、これから動く!というときはゆっくりのんびりのストレッチよりは、軽めのストレッチ+軽い筋トレで筋肉をアクティブな状態に持っていきましょう。

もちろん無理はいけませんし、痛みがある、体重をかけたら壊れるなど個々人の状況は鑑みなければなりませんが、ハッキリ言って椅子に座って脚をブラブラさせるエクササイズだけを長年続けていても、立ち歩くことに対しての効果は疑問なのです。

立つための筋トレ:パラレルスクワット&ボールはさみ

ここでは、今はやや不安はありつつも自力で通常に立てる、歩ける、移動できる人を対象とします。それが難しいと感じられる方は無理をせず、主治医などに相談してから試みてください。

立つための筋トレとして、パラレルスクワット&ボールはさみを行ってみましょう。

(1)椅子に浅く座り、ひざに柔らかいボールを挟む。
10回つぶす。
10回終わったら軽く内ももに力が入った状態で、背筋を伸ばし、軽く前傾する。
両足の裏にしっかり体重をかけ、手をももに載せて、頭を少し前に出すと同時にお尻を浮かせる。
ボールを落とさないよう、ももとお尻に力を入れて立ち上がる。

(2)お尻を後ろに突き出し、手はももの上、頭は前に。
足の裏でしっかり床を踏みながら、お尻を下ろしていく。もも裏に椅子が触ったらゆっくり座る。

(1)(2)を10回繰り返す。
呼吸は決して止めないように。

歩くための筋トレ:フロントランジ&片足立ち

次に、歩くための筋トレとしてフロントランジ&片足立ちに挑戦してみましょう。

(1)気を付けの姿勢で立つ。
片足を一歩前に踏み込み、ひざを曲げる。
足の裏でしっかり踏ん張る。

(2)ひざを伸ばしたら、前の脚に体重をかけ片足立ちになる。

*(1)から(2)へ行くのがつらい、難しい場合にはスタート姿勢(気を付け)に戻ってください。
左右交互に10回。

移動のための筋トレ:もも上げ・レッグカール・つま先立ち・つま先挙げ

最後に移動のための筋トレです。ここではもも上げ・レッグカール・つま先立ち・つま先挙げを行います。

・もも上げ
(1)交互にゆっくりももを上げる。左右。どこかにつかまって行ってもOK

・レッグカール
(1)壁やしっかりとした椅子の背もたれなどにつかまって、少し前傾。
(2)片足ずつかかとでお尻をけるようにひざを曲げる(お尻までつくかどうかは不問)。
左右交互に10回。

・つま先立ち
壁やしっかりとした椅子の背もたれなどにつかまって、カカトを上げ下げする。(座って行う。立って行う。両方やってください) 両足同時に10回。

・つま先あげ
立って、片足ずつ、つま先を上げる。左右交互。((座って行う。立って行う。両方やってください) 左右交互に10回。

フィットネスクラブ等でマシンが利用できる方は、『レッグプレス』をまずはお勧めします。痛みや不快感がない範囲の重さではじめて、最終的には自分の体重プラスアルファが目標です。

立つための筋トレ、歩くための筋トレ、移動するための筋トレを続けることで「立つ」「歩く」「日常の外出」が難なくできる足腰の筋肉をしっかりさせていきます。これこそが高齢者がフレイルにならないために取り組んでほしい運動といえます。

提供:JIJICO

著者プロフィール
吉田 真理子/健康運動指導士、フィットネスインストラクター

吉田 真理子/健康運動指導士、フィットネスインストラクター
NPO法人 フィットネスビューティー100/秦フィットネス研究所
痛みや怪我を抱えていても、それを解消する最適なトレーニング方法を指導。グループ指導だけでなく、パーソナルトレーナーとしても活躍。近年は「シニアフィットネスの専門家」として各方面で活動を拡大中。 【経歴】 ・東京体育専門学校 社会体育科  ・日本体育大学 体育学部社会体育学科。 学生時代、ほとんどスキー学校や合宿で年間100日くらい山こもり。 雪のない時期だけ出来そうなものとして改めてエアロに着目。 ・CCY(株式会社スポーツプログラムス・コンディショニングセンター代々木)所属 就職活動代わりに養成コースへ入り、なんとかスタジオに残してもらいインストラクター業のはじまりはじまり。インストラクター養成コース・企業フィットネス・中高年プログラム・コンディショニングセンターメディック(金子整形外科クリニック併設)チーフなどを担当。おめでたい席専門デモチーム「寿シスターズ」としても仲間と活躍。 【実績】 健康運動指導士 日本フィットネス協会 ADD・エグザミナー・AQI・ADI 日体協 スポーツ指導者(体操) 日本ホリスティックコンディショニング協会 HC スポーツシューフィッター フィットネスウォーキングインストラクター 秦フィットネス研究所 所長 首都医校 アスレティックトレーナー科 講師 EBTA認定イヤービューティセラピスト

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