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消費者庁検討会が発表、公益通報者保護制度改正への動き (2016/12/14 企業法務ナビ

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はじめに

消費者庁は9日、企業や官公署の不正を内部告発した労働者を保護する公益通報者保護制度について改正の方向で検討していることを明らかにしました。制定から10年が経過した公益通報者保護法。保護の対象や罰則等に関して実効性に乏しく、また一般にほとんど浸透していない等の指摘がなされてきました。今回は公益通報者保護制度の概要と改正のポイントを見ていきます。

男性

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は労働者が公益通報をしたことを理由に解雇や不利益な扱いを受けないよう事業者や行政機関に措置を義務付け、国民生活の安定や社会の健全な発展を目的とした法律です(1条)。企業や官公署が法律に反する行為を行っている場合にその内部者の通報を促し事案の解明と解決を図ります。企業不祥事等は内部者からの告発によって発覚することが多く、外部からは探知しにくい事例も多いからです。一定の要件を満たした労働者による公益通報がなされた場合、それを理由に解雇や雇止め等ができなくなります。以下具体的要件を見ていきます。

公益通報者保護の要件

(1)公益通報とは
本法で保護の対象となる「公益通報」とは、労働者が不正な利益や他人に損害を与える目的でなく、勤務先に通報対象事実が生じ、または生じようとしている旨を監督行政機関その他被害拡大防止に必要と認められる者への通報を言います(2条1項)。保護の対象は現に働いている「労働者」限定されます。そして通報先は(1)企業内部(2)監督行政機関(3)その他必要と認められる者が挙げられます。その他必要と認められる者とはマスコミ等の報道機関が該当します。

(2)通報先と保護要件
公益通報として保護されるためには上記通報先に応じて通報対象事実の存在に関する要件を満たす必要があります。まず(1)企業内部への通報の場合は通報対象事実が生じ、または生じようとしていると「思料する場合」で足ります。(2)監督行政機関の場合は通報対象事実が生じ、または生じようとしていると「信ずるに足りる相当の理由がある場合」でなくてはなりません。(3)その他への通報の場合は「信ずるに足りる相当の理由がある場合」に加えて、企業内部への通報では証拠隠滅の恐れがあること、内部通報では解雇等不利益な扱いを受ける相当の理由があること、通報をしないことを正当な理由なく要求されたこと、個人の生命身体等に急迫の危険があることのいずれかに該当する必要があります(3条)。

(3)通報対象事実
通報の対象となる違法事実は、個人の生命または身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正競争の確保等にかかわる法律として別表で指定されている法律に違反する事実を言います(2条3項)。そして別表では刑法、食品衛生法、金商法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法、独禁法、道路運送車両法等が挙げあれております。

公益通報者保護法上の義務

上記公益通報に該当する場合には公益通報者は解雇無効、不利益取扱の禁止という保護を受けます。同時に通報者は他人の正当な利益を害さないようにする努力義務を負います(8条)。また通報を受けた事業者は是正措置等を取り、その旨通報者に通知する努力義務を負います(9条)。そして行政機関は必要な調査を行い適当な措置をとる義務を負います(10条)。

改正のポイント

今回消費者庁の検討会が検討している改正のポイントはまず、保護の対象となる通報者の範囲の拡充です。現行法上は現に働いている「労働者」に限定されていましたが、役員、子会社・取引先の従業員、退職者等も含められることが検討されております。そして通報者の氏名等が漏洩しないよう個人情報の保護の徹底が挙げられております。そして実効性を確保するために罰則や行政措置等を盛り込むことも検討されております。また事業者側への取組促進として、内部通報制度を積極的に整備している企業に行政から認証を与える等も検討されております。

コメント

大規模な食肉偽装問題や不正会計といった企業の不祥事の多くは内部者からの告発によって発覚してきました。それを受け平成16年に公益通報者保護法が制定されました。しかし本法は保護される対象が現役労働者に限られ、保護される要件も厳しく罰則も規定されていないことから不備だらけで実効性が無い等批判がなされてきました。解雇は無効であっても自主退職した場合は保護されないことから事後本法による保護を求めても遅い例が多かったということです。また一般の知名度も低く、アンケートによる認知度は10%程度とされております。それ故に内部通報者は今なお理由なき異動や配置転換、仕事を与えない等の取扱を受けていると言われております。これを受け消費者庁と有識者による検討会ではより実効性のある制度への改正を目指しております。2018年の通常国会を目処に改正案の提出を目指すとしております。企業内で実効性のある内部通報制度を整備することはコンプライアンスの観点からも社会一般による評価という観点からも有益なものと言えます。今回の改正案を参考に内部通報窓口等の設置を検討することも重要ではないでしょうか。

提供:企業法務ナビ

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