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景品表示法に導入される課徴金制度 (2016/2/3 企業法務ナビ

関連ワード : 法律 消費者 

はじめに

消費者庁は1月29日、不当景品類及び不当表示防止法、いわゆる「景品表示法」に新規に導入される課徴金制度についての成案を公表しました。平成28年4月1日から施行される予定です。事業者が優良・有利誤認表示をする行為をしたときに、消費者庁長官により課徴金の納付を命じられる新制度(景品表示法第8条)について、以下に解説します。

お金

優良・有利誤認表示とは

事業者の故意又は過失を問わず、実際のものよりも著しく優良であると示す表示(又は著しく有利であると誤認される表示)により、一般消費者に対し、商品やサービスの選択に大きな影響を与える誇大な広告を指します。容器や包装上のものだけではなく、パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットを始めとして、その範囲は広範に及びます。さらに、口頭によるものもこれに含まれます。

新制度における課徴金額

課徴金額は、優良・有利誤認表示の影響を受けて、事業者が得た売上額の3%となります。具体的には、後述する「課徴金対象期間」に優良・有利誤認表示を行った商品・サービス(以下、「課徴金対象商材」といいます)について売り上げた金額の3%という考え方をします。

<課徴金対象期間>
原則として、優良・有利誤認表示を行った期間が課徴金を算定する上での売上対象期間となりますが、事業者が優良・有利誤認表示終了後も課徴金対象商材についての取引を継続していた場合には、これに、「優良・有利誤認表示をやめてから6ヶ月が経過する日又は誤認解消措置を行った日のいずれか早い日までの間で、最後に課徴金対象商材についての取引を行った日までの期間」を加えた期間が対象期間となります。なお、この期間の年数が3年を超えるときには期間の末日からさかのぼって3年間が対象期間となります。

※誤認解消措置:事業者が、一般消費者に対して、日刊新聞紙等に優良・有利誤認表示を行っていたことを自ら掲載し公表する方法その他で誤認を解消する措置を行うこと。

<売上の算定方法>
(1)総売上額
総売上額については、原則として、課徴金対象期間において引き渡された又は提供された「課徴金対象商材」の対価を合計する方法(引渡基準)によって算定されます。ただし、課徴金対象商材が「新築戸建分譲住宅」のように契約から商品の引渡しまで長期間を要するような場合には、 課徴金対象期間において契約合意した「課徴金対象商材」の対価を合計する方法(契約基準)によって算定されます。

(2)控除項目
上述の総売上額から控除される項目が下記になります。
・数量不足、品質不良、破損等を理由に、事業者が減額又は返金対応を行った際の減額分又は返金分
・返品された商品の対価相当額
・ボリュームディスカウント等の契約書上の約束により事業者が支払った割戻金の合計額

課徴金命令を免れるための要件

(1)事業者が過失なく優良・有利誤認表示であることの認識を欠いていた場合
事業者が優良・有利誤認表示を行っていた場合でも、優良・有利誤認表示を行っていた全期間を通じて、自らが行った表示が優良・有利誤認表示に該当することを認識しておらず、なおかつ、当該表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意を支払っていたと認められるときには、課徴金命令を免れることが出来ます。

正常な商慣習に照らし必要とされる注意を支払っていたか否かについては、基本的には、事業者の業態や規模、課徴金対象商材の内容、優良・有利誤認表示の内容や態様、優良・有利誤認表示であることを認識してからの行動(すぐに表示を止めたか否か)等を元に総合的に判断されることになりそうですが、内閣府が告示しているような下記のような措置をとったいた場合には、必要な注意を払っていたと認定されやすくなりそうです。

事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/141114premiums_5.pdf

(2)優良・有利誤認表示により得た売上の規模が小さい場合
具体的には、課徴金対象商材の売上額が5000万円未満の場合には、課徴金命令を免れることが出来ます。

コメント

インターネットの普及により、一般消費者の目に飛び込む広告の量は以前よりも格段に増えて来ています。それだけ、誇大広告の影響力が増しているという言い方も出来ますし、無数に存在する広告の中で少しでも目を引き、インパクトを与えるために、つい誇大な表現を行ってしまうという事案も増えることが予想されます。従来は、優良・有利誤認表示に対しては、行政が、行為の差し止めや再発防止に向けた措置命令を行い、これに違反した場合に2年以下の懲役や300万円以下の罰金を科するに留まっており、バレてから対応すればよいという風潮が蔓延していましたが、今回の課徴金制度は、こうした誇大広告の数及び影響力の増加という時流の変化に対応する形で設けられたものと考えられます。

課徴金制度としては、独占禁止法における課徴金制度が有名ですが、摘発により、巨額の課徴金を国庫に納めさせることが出来ることから、公正取引委員会の摘発へのモチベーションが上がっているという見方もされています。そのため、課徴金制度の創設により、消費者庁による優良・有利誤認表示に対する取り締まりのモチベーションも同様に向上することが予想されます。企業の視点に立ちますと、それだけ、広告に対する法的リスクが跳ね上がっていることを意味しますが、今回の新制度においては、違反を自己申告した事業者に対しては、課徴金額の2分の1が減額されますし、事業者が課徴金納付命令を下されるまでに、被害者に対し行った自主返金分もまた減額となります。今一度、社内の広告の審査業務や優良・有利誤認表示を認識した後の社内対応について確認してみてはいかがでしょうか。

【参考URL】
不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160129premiums_4.pdf

提供:企業法務ナビ

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