めざせ!エネルギーの地産地消~埼玉県が懸ける水素社会における下水道資源利活用 (2016/10/8 クオリティ埼玉)
水素エネルギーを利用した「水素社会」実現に向けて、国内でいろいろな取り組みがされている。埼玉県では、地産地消することができる貴重なエネルギーとして、全国に先駆けた取り組みを進めているところだ。
埼玉県は、快晴日数日本一で太陽エネルギーには恵まれている。しかし、内陸で土地は平坦なため、大規模な風力発電や水力発電は期待できない。エネルギーの自給率は低く、エネルギーの大量消費地のため、CO2削減や省エネ、創エネ、そして新エネルギーの普及に取り組まなくてはならない。そのため、エネルギーを地産地消する方策が必要不可欠となり、さまざまなエネルギーから製造できる水素エネルギーに注目した。
全国に先駆けて、平成23(2011)年から取り組みをスタートし、平成24(2012)年にソーラー水素ステーションを県庁南玄関前に設置。水素社会実現に向けた第一歩として、平成27(2015)年4月に「埼玉県燃料電池自動車・水素ステーション普及構想」を取りまとめた。燃料電池自動車と水素ステーションの普及目標を定め、平成37(2025)年には、燃料電池自動車を60,000台、水素ステーションを30基の普及を目指している。家庭用燃料電池(エネファーム)の普及拡大も進めるために、住宅用設備導入支援事業補助制度を導入し、低炭素社会に資する省エネ機器の普及にも取り組んでいる。
埼玉県が管理している流域下水道は、全国3位までの処理場を有し、下水道汚泥量は全国で5位。下水処理をするプロセスの中でできた汚泥は、建材資材に利用されたり、緑地や農地の肥料や土壌改良剤に利用されたりしている。さらに、汚泥処理の汚泥量を減少させる工程で発生する消化ガスの中のメタンを、エネルギー事業に利用。そして、このメタンガスが水素製造の原料にもなることから、新たな消化ガスの利用法として着目されている。現在事業化に向けて、中川の水循環センターでモデル調査を実施しているところだ。
水素は電気エネルギーを貯めることができるため、利用時間や場所を変えることができる。下水処理場で製造された水素は、水素ステーションに運ばれ、燃料電池自動車のエネルギーとして利用したり、燃料電池発電から売電したりすることも可能だ。
一般的に水素タンクは海岸部にあるので、内陸に位置する埼玉県は、水素社会の実現には不利なように見える。しかし、全国上位を占める流域下水道で、下水道汚泥から水素を製造資源化する事業化ができれば、水素エネルギーを活用していく循環型の社会の仕組みを埼玉県が作る可能性は、大いに秘めている。
エネルギー消費ばかりの埼玉県が、全国、いや世界に誇る「エネルギー地産地消の聖地」となるかもしれない。
岡アヤコ
提供:クオリティ埼玉
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