本当にやりたい仕事に就いてほしい―ジョブカフェ北海道「職業観」のつくり方  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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本当にやりたい仕事に就いてほしい―ジョブカフェ北海道「職業観」のつくり方 (2016/10/6 70seeds

JR札幌駅のすぐそばにあるジョブカフェ北海道。この場所は2003(平成15)年にオープンした「正規の就職活動をしている44歳以下(含む、学生)の方が、就職相談やセミナー、求人情報検索など様々な就職支援サービスを無料で受けられる就職支援施設」です。

このジョブカフェ北海道の統括をしているのが戸田富重さん。戸田さん自身も、転職をして今の仕事に就いています。「本当にやりたい仕事に就くためには、職業観の形成が必要だと思います」という戸田さんに、北海道の雇用の現状や今後の展望を伺いました。

ジョブカフェ北海道の戸田富重さん1

自分が元気にできた人とできなかった人の違いとは

――戸田さんはもともと就職支援の仕事をしたいと思っていたんですか?

いいえ、私も転職して今の仕事をしています。この仕事に就いて5年ほどですね。その前は美容業界にいました。

――美容業界!全然違う業種だったんですね。

エステを全国展開している会社に15年ほどいたんですが、人事・総務といった管理業務や広報をしていました。そのときに、いろいろなスタッフと今後の仕事に就いて話すことが多かったんです。そうすると、あるスタッフは私と話したことで元気になる、一方そうならない人もいるわけですよ。その違いは何なんだろうとずっと考えていたんです。

――結論は出たんですか?

自分の伝え方に問題があるんじゃないか……と考えていた時に、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格があることを知って勉強して資格を取りました。それと、美容業界は浮き沈みが激しいので、その会社にいた後半は人の採用よりもリストラする仕事が増えてしまったんです。やはり自分で採用した人に解雇を伝えるというのは辛い訳で……できることならずっと採用に携わりたいと思っていました。そのタイミングで今の仕事に空きが出て、アドバイザーを経てジョブカフェの統括をしています。

ジョブカフェ北海道2

――前職と今の仕事の違いはどのような点ですか?

前職では、仕事についての悩みか退職の相談が多かったですね。その中で私がしたことは、モチベーションを上げてもう少し頑張ってもらうこと。そしてもうひとつは、社内的にも『厳しい』と思われている社員に対しては退職への筋道を作ることでした。これは、自分の意思もありますけど、会社の意向もあるわけで。今は、仕事をしたいという意思を尊重して、相談者にとって適した仕事を探していくという感じですね。

「本当にやりたい仕事」の見つけ方

――実際ジョブカフェに来られる方は、仕事への意識が高い方が多いんですか?

自分の意思でここまで来ているということは、仕事をしたい・探したいという気持ちが強いんだと思います。ただ、意思はあるんですけど『どういう風に準備をすればいいのかわからない』『自分に何ができるのかわからない』といった方向性がはっきりしていない方や就職に対して不安を抱えている方は少なくないですね。ここは高校生から44歳までの就職支援を行っているので、本当にさまざまな事情の方が来ていますよ。

――具体的にはどんな相談が多いんでしょうか?

今の仕事について悩みがあって転職を考えているんだけど、という方もいれば、これから仕事をしたいんだけどどうすればいいんですか?という方もいます。前者に関しては、全員が転職をするわけではないです。アドバイザーといろいろな話をして、もう少し頑張ってみようという気持ちで帰る方もたくさんいます。

ジョブカフェ北海道の戸田富重さん3

――メディアでは「求人は売り手市場」と言われていますが、実際どうなんでしょう。

ここ2~3年は、数字上は売り手市場です。ただ、求職者がやりたい仕事と求人がある仕事のバランスは決して良くありません。業種Aの有効求人倍率が1.5倍でも、業種Bは0.3倍なんてこともあります。トータルで見ると1倍を超えていますが、一概にはそれで売り手市場かといわれるとそうでもないのが実情です。

――その中で戸田さんが求職者と接するときに意識していることは何ですか?

求職者の皆さんは、職種へのこだわりが強い傾向にあります。でも突き詰めて聞いていくと、本当にやりたい仕事とは違っていたりするんですよ。視野を広げてあげるというか、固定観念を壊すというか。『こういう仕事もあります』『こういう働き方もあります』『あなたの強みはこちらの仕事に生かせます』というアドバイスをするんです。

――「自分はこれしかできません」ではなく可能性を広げるんですね。

そうです。さまざまな職種に興味が広がることで、仕事の選択肢も増えますから。仕事選びに関していうと、自己分析と企業研究が大切だと良くいうのですが、なかなか自己分析はしっかりできないんですよね。その自己分析をお手伝いして、企業研究した中からマッチングする企業を探していきます。

朝3時から元気に働いている人たちがいる、という気づき

――今年6月には求人票公開前に、高校生を対象とした合同企業説明会が行われました。その中で印象に残っているのが『運命のカード』という仕掛けでした。

この説明会を始めたころは、どうしても仲の良い友達同士が隣同士で企業の説明を聞いてしまうので、なかなかいろいろな職種の説明を聞いてもらえなかったんです。そこで、1回目の説明タイムは希望の企業の説明を聞いて、2回目以降は引いたカードの会社の説明を聞いてもらうようにしました。これは、職業観の形成のために行っています。

――職業観の形成、ですか。

仕事というものは、楽しいことばかりではなく大変なこともつらいこともあります。そして、いろいろな働き方があります。自分の興味のある企業の話を聞くだけでは、興味のない企業の楽しさを知らないまま社会に出てしまうことになりますが、このような説明会で興味のない企業を知ることで仕事の選択の幅が広がると思うんです。

――確かに、知らないだけで知ることで興味が湧くかもしれないですよね。

そのことを、ジョブカフェで高校生以外の方にも伝えていきたいですね。そういえば先日、中央卸売市場へ見学に行ってきたんですよ。市場ですから朝3時に始まって昼には仕事が終わるのですが、凄い活気がある職場なんです。朝3時なんて『寝ている』というイメージですが、その裏ではこんなに楽しく働いている人たちがいる……そのことを知るだけでも、可能性がどんと広がると思います。自分の可能性を限定せず、広い視野で仕事をみてもらいたいですね。

ジョブカフェ北海道4

――戸田さんは、今後ジョブカフェをどんな場所にしていきたいとお考えですか?

今も北海道の雇用に関するプラットフォームという位置づけなんですが、職業・年齢・性別の枠を取り払っていきたいと思っています。どのような方が来られても対応できる場所にしていきたいですね。そしてこの場所に集まってくる方々が交わることで、良いことが起こるはずだと思いますので。

◇        ◇

【取材を終えて】
戸田さんにインタビューをさせていただいて感じたのは、「このような方に相談すると、違った自分が見えてくるかもしれない」ということです。インタビュー中にも出てきますが、本当にやりたい仕事に就くためには自己分析と職業研究が必要だといわれています。しかし、自己分析を的確にできている人はほとんどおらず、カウンセリングをすることで新たな強みを発見できるそうです。

「自分には合わない」「自分にはできない」と思っていた仕事が、実は天職だったりすることもあります。今、仕事について悩んでいる方も、人に話を聞いてもらうことで新たな自分の強みに気づくかもしれません。

【ライター・橋場了吾】
北海道札幌市出身・在住。同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。 北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

提供:70seeds

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