蓮舫氏の二重国籍問題 問題の本質はどこに (2016/9/15 JIJICO)
民進党代表戦出馬のタイミングで蓮舫氏の国籍問題が注目を浴びることに
民進党代表戦出馬のタイミングで、蓮舫氏の国籍問題がクローズアップされました。蓮舫氏は日本国籍を有していますが、同時に、台湾籍、正確には中華民国の国籍との二重国籍だったのではないか、そうであれば政治家として問題があるのではないかという議論です。しかし、後述のように、この問題は法律的にはかなり複雑な問題です。
蓮舫氏の国籍の変遷
前提事実を整理しておくと、蓮舫氏は、母親は日本人ですが、父親が中華民国(台湾)の国籍でした。蓮舫氏が生まれた頃の日本の国籍法は父系主義を採っていたので、出生と同時に父親の国籍、つまり中華民国の国籍になったと思われます。
しかし、その後日本は1972年にいまの中国と国交を結びましたので、結果として、中国と対立する中華民国との国交を断絶しました。そのため、日本の建前上の立場(台湾は中国の一部)からすると、蓮舫氏の国籍は中国になったとも言えます。
さらにその後、1985年に国籍法が改正され、男女平等の趣旨から父系主義を廃止し、母親のみが日本人の場合も子は日本国民とされました。蓮舫氏の出生は国籍法改正前ですが、経過措置として、届出をすれば日本国籍を取得できることになりました。そこで、蓮舫氏は日本国籍を選択し日本国民になりました。
この時点で、蓮舫氏には二重国籍の可能性がでてきます。この点、国籍法16条は、日本国民になることを選択した場合には、「外国籍の離脱に努めなければならない」としています。もっとも、この規定は努力義務なので、罰則はありません。蓮舫氏の場合、父親が台湾籍離脱の手続きをとった“と思う”と本人が説明していましたが、結局、離脱できていなかったことが判明しました。ただ、蓮舫氏は“念のため”として、調査と同時に新たに国籍放棄の手続をとりましたので、現在、二重国籍は解消されています。
問題をさらに複雑にする中国と台湾の関係
ご覧のとおり、この時点でかなり複雑な様相を呈していますが、問題はさらに複雑です。
1つは中華人民共和国(中国)と中華民国(台湾)の関係です。日本が台湾と国交断絶したため、日本政府として蓮舫氏の国籍を「中国」と扱うのであれば、蓮舫氏の国籍は中国法に基づいて処理されます。中国法に照らせば、蓮舫氏が日本国籍を選択した時点で原則として自動的に中国国籍は喪失することになるようです。これに従えばそもそも二重国籍は生じていなかった可能性もあるわけですが、中国法の国籍喪失規定にも例外規定があるため、仮に蓮舫氏を「中国籍」として扱ったとしても国籍喪失をしていたかは微妙です。また、蓮舫氏自身、自らを「中国籍」とは考えていなかったでしょう。
いずれにせよ、中国と台湾の関係をめぐるこの議論は、蓮舫氏の当時の意思や国籍離脱努力を離れた「結果論」であるため、蓮舫氏自身がこのようなロジックを使って、「私は二重国籍ではなかった」などと主張してしまうと、おそらく国民からは詭弁だと反発を買うでしょう。
政治家は二重国籍でも問題ないのか?
では、仮に二重国籍だった場合、政治家が二重国籍だと問題があるのでしょうか。実は国会議員にせよ、内閣総理大臣にせよ、公職選挙法により日本国民である必要はありますが、外国籍の有無については問題とされていません。そのため蓮舫氏が二重国籍でも法的な問題はありません。
もっとも、外務公務員法7条は、外国籍を持つ人は外務公務員(外交官を含む外務省で働く人の総称)になれないとしています。そのため、外務公務員ですら国籍条項があるのに、外務公務員以上に日本の対外的な主権を代表することがある内閣総理大臣その他の大臣に外国籍があっていいのか、という議論がでてくるのは自然なものだと思います。
加えて、今回の問題は、違法かどうかという問題だけでなく、蓮舫氏の当初からの説明内容や説明態度が適切だったか、という問題もありそうです。過去の国籍問題は変えられません。しかし、少なくとも二重国籍が無事解消された現在、国民から選んでもらう国会議員の立場にある以上、国民に納得してもらえる説明、あるいはそれを超えた「国民の心に響く説明」ができるかどうかが、蓮舫氏には問われていると思います。
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