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骨太方針2016を閣議決定、医師偏在対策について「規制的手法」との表現は削除 (2016/6/3 メディ・ウォッチ

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 安倍晋三内閣は2日、経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太方針)2016を閣議決定しました。

 社会保障改革については、疾病予防や重症化予防といった点に力を入れることを明確にする一方で、医師偏在是正については、これまでの「規制的手法」という表現を避けています。

 今年末(2016年末)にかけて、医療保険改革や医療提供体制改革の議論が進められますが、その際にも、この骨太方針2016が重視されます。

消費増税は延期するも財政健全化目標は維持、社会保障改革はより厳しく

 骨太方針は、経済・財政を同時に再建するための政府の基本方針です。歳出(政府の1年間の支出)の無駄をカットするとともに、効果的な配分を行うことを目指しています。

 5月18日の経済財政諮問会議では骨太方針2016の素案が示されましたが、今般の閣議決定に至るまでに若干の修正が行われています。

 まず、消費増税について、「10%への引上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期する」ことを確認。ただし、「2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支を黒字化する」という財政健全化目標は堅持されます。

 消費増税の延期は「歳入(政府の1年間の収入)が減少する」ことを意味し、財政的には厳しくなるにもかかわらず「黒字化目標は堅持」としているところから、今後、より歳出の見直しを厳しく行う方針が示されたものと理解すべきでしょう。

「国民皆保険・皆年金」の維持を強調、疾病予防・重症化予防の視点を明確化

 財政健全化に向けては、歳出の大きな部分を占め、かつ高齢化によって増大を続ける社会保障費の見直しが最重要課題の1つとなります。

 素案の段階で、▽医療費の地域差半減に向けた「見える化」の推進▽ワイズ・スペンディング(歳出についてデータ分析を行った上で、「経済再生と財政健全化の双方に資するかどうか」という点からの優先順位付けをした上で支出を行う)―という大方針が立てられ、より具体的な改革メニューがすでに示されています。

 閣議決定までに、改革メニューの大幅見直しは行われませんでしたが、若干の文言修正がなされました。この背景には、夏に行われる参議院選挙をにらんだものと考えることもできます。

 まず注目できるのが、「世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持し、これを次世代に引き渡すことを目指す」ことを強調している点です。

 政府与党はこれまでに「国民皆保険・皆年金の存続」を否定するような見解は示していません。しかし、たとえば最近話題に上るオプジーボやハーボニーといった「超高額薬剤」の相次ぐ出現によって、「皆保険の維持が厳しくなる」とも指摘されることから、この点を明確にしたものと考えることができそうです。

 

 ところで、社会保障改革は「給付の削減」ばかりを意味するものではありません。ワイズ・スペンディングという言葉どおり、たとえば「将来の医療費適正化につながるのであれば、その分野に重点的に財源を配分する」こともセットで行われます。

 この視点に立って、骨太方針2016では、▽疾病予防、重症化予防▽がん検診受診率向上―の2項目を重視する考えをより明確にしています。

 前者については、素案では「健康づくりなど」という表記でしたが、これが「健康づくりや疾病予防、重症化予防など」とより具体的な表現に修正されました。厚生労働省と日本医師会、日本糖尿病対策推進会議の3者で進めることが示された「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」などが想起されますが、こうした取り組みを今後も推進していく考えが伺えます。

 後者については、「がん」の早期発見を進め、がんによる死亡リスクの低減を狙うものです。わが国のがん対策の礎となる「がん対策推進基本計画」(第2期)では、「がんによる年齢調整死亡率を20%減少させる」という目標を立てていますが、達成はかなり難しい状況にあります。目標未達成の主因と考えられているのが「検診受診率の低さ」と「喫煙率の高さ」です。このため、検診受診率を上げるために、政府が重点的に取り組んでいく覚悟を感じることができます。

医師偏在対策は後退?参議院選挙に配慮した格好か

 一方で、「素案から後退したのでは」と心配される部分もあります。具体的には「医師の偏在対策」について、従前の「規制的手法も含めた」という表現が削除されているところです。

 規制的手法という表現は、医師偏在対策について議論を行っている厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」が5月19日に概ねまとめた中間報告の中にあります。さらに、中間報告にあたっては、日本医師会と全国医学部長病院長会議会長が共同して取りまとめた『医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言』が重要です。この提言の中では、「医師の地域・診療科偏在の解決のためには、医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」との考えを明記しています。

 つまり医療関係団体の決意を汲んで「規制的手法も含めた医師偏在是正策の検討」と表現されたわけですが、このように後退した背景には、やはり夏の参議院選挙が見え隠れしていると言えそうです。

 今後の検討会における医師偏在是正策論議にどれほどの影響が出るのかは不透明ですが、より実のある策が固められることが期待されます。

提供:メディ・ウォッチ

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