一般病床、平均在院日数を短縮した上での病床利用率向上に成功―病院報告、16年2月分 (2016/6/3 メディ・ウォッチ)
今年(2016年)2月には、一般病床の平均在院日数が短縮。その上で病床利用率もわずかながら高めることに成功した―。こうした状況が、2日に厚生労働省が発表した2016年2月分の病院報告から明らかになりました。
一般病床の平均在院日数は16.5日、病床利用率は76.6%
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しており、2016年2月の状況は次のようになっています。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院128万6147人(前月比14万9994人、2.6%増)、外来140万6335人(同14万9994人、11.9%増)で、入院は増加、外来も大幅増となりました。
病院の一般病床に注目すると、入院患者数は70万1366人で、前月に比べて2万8906人・4.3%増加しました。また病院の療養病床では、入院患者数は29万3918人で、前月に比べて3124人・1.1%の増加となっています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では28.4日で、前月から1.9日短縮しています。
病床種別に見ると、▽一般病床16.5日(前月比0.8日減)▽療養病床148.9日(同15.4日減)▽介護療養病床315.6日(同23.1日減)▽精神病床270.6日(同30.6日減)▽結核病床61.5日(同11.8日増)―となっており、すべてで短縮しました。
また有床診療所の療養病床は97.1日で、こちらも前月に比べて10.9日短縮しています。
メディ・ウォッチで何度もお伝えしていますが、在院日数の不必要な延伸には「ADL低下」「院内感染」などのリスクを高めると同時に、医療費の膨張を誘発する(わが国では1日当たりで入院料やDPC点数などが設定されているため)可能性もあります。
したがって在院日数の短縮は歓迎すべきですが、長期的に傾向を把握していかなければいけません。
一方、(3)の月末病床利用率を見ると、病院全体では80.9%で、前月に比べて1.3ポイント上昇しました。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床76.6%(前月から2.0ポイント増加)▽療養病床89.0%(同0.5ポイント増加)▽介護療養病床91.3%(同0.3ポイント増加)▽精神病床85.7%(同0.2ポイント増加)▽結核病床32.8%(同0.8ポイント増加)―という具合にすべてで増加しています。
平均在院日数の短縮は、延べ患者数の減少、つまり病床利用率の低下=減収に繋がります。このため「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」の両立を目指すことが医療機関、とくに病院においては極めて重要です。この点、2016年1月から2月にかけてこの難しいミッションをクリアできている点はよろこばしいと言えるでしょう。もちろん、今後の長期的な傾向を見ていくことが必要です。
病院におかれては利用率向上に向けて、地域のクリニックや中小規模病院との連携(重症患者の紹介を受けられるような関係の構築)や、救急患者の積極的な受け入れがなどを進める必要があります。ただし、地域の他病院も同様の取り組みを進めているでしょうから、そう簡単に利用率を向上させることはできません(関連記事はこちら)。このため、自院の機能や地域の患者動向を的確に見極めた上で、最終的には「病床数の削減」という選択肢の考慮も必要になってきます。
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