小学校の運動会で親がモンスター化するわけ (2016/6/10 JIJICO)
批判が多い小学校の運動会における親のマナー
最近、小学校の運動会での親御さんのマナーについて批判が出ています。バーベキューをしたり、タバコの吸い殻やビールの空き缶を放置したり、場所取りでトラブルを起こしたり。もちろんこういったことはかなりまれなケースだと思いますが、実はこれらは、運動会の根本的なあり方に起因するものだといえるのです。
子どもにとって運動会は教育の一環
運動会は、学習指導要領では「特別活動」のなかの「学校行事」の「健康安全・体育的行事」に位置づけられます。小学校の学習指導要領には「心身の健全な発達や健康の保持増進などについての関心を高め、安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵(かん)養、体力の向上などに資するような活動を行うこと」とあります。子どもの側から見たら、運動会も立派な教育活動なんですよね。
地域のお祭り的位置づけで発展してきた小学校の運動会
では、親御さんの側から見たらどうでしょうか。そもそも運動会は、明治期に学校での体育を普及させるために行われました。運動場がない時代は、河原や原っぱに出かけてやったようです。オープンな場でやるので、親御さんや地元の人たちも観に来ますね。その当時は国民の体育を普及させたかった政府の思惑もあって、はじめは体育でやること(徒競走やボール投げ)ばかりが種目だったのが、観に来る人も体育をしたいと思わせるような、観て楽しい種目(ダンスなど)もやるようになりました。ちなみに戦争中は軍事教練のお披露目や教練に関係ある種目である棒倒しや騎馬戦もされるようになりました。
運動会で観る人を楽しませる種目をするようになり、親御さんは運動会の「観客」になりました。今でも親御さんは「観客」です。親御さんという「観客」を意識して、低学年のお遊戯や最近話題になった組体操など「観て楽しい」種目をしています。
また、「観客」がついたことで、運動会は地域の「お祭り」の意味合いも含まれるようになりました。運動会のついでに、地域の親睦会や演説会などもされたようです。また、祝日などのお祝いのための運動会も行われました。
今でも運動会に露店が出る地域がありますが、昔はそれが当たり前の光景でした。子どもががんばっている姿を肴に、「観客」である親御さんや地域の人が、ござを敷いて酒を飲んで楽しむ光景が見られたようです。今でも運動会に地域の人が「来賓」として参加するのは、運動会が地域の「お祭り」である名残です。
親にとっての運動会のあり方が変わらない限りトラブルは減らない
さて。親御さんが「観客」になりますと、親御さんは「お客さん」として振舞います。「お客さん」は、「お客さん」であるために、時には非常識なことをします。店に入って傍若無人なことをしたり無理なクレームをつけたり。運動会の場合は、相手が学校であるだけの違いです。さらにもともと運動会が地域の「お祭り」の意味合いを持つものですから、羽目を外してしまうこともあるでしょう。
ということで、運動会が「お祭り」であり親御さんが「観客」であるというあり方である以上は、こういったことはなくならないでしょうね。親御さんに羽目を外してほしくなければ、親御さんの公衆道徳向上もさることながら、運動会のあり方も根本から見直す必要があるかと思います。
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