難しい問題をいくつも抱える中小企業の事業承継を考える (2016/6/5 JIJICO)
中小企業の事業承継問題が注目される理由
日本経済を支える中小企業では、近年、経営者の高齢化が進行する一方で、後継者が既に決まっている企業は全体の43%にとどまり、特に親族内での後継者の確保はますます困難になっています。事業承継に失敗して相続紛争が生じたり、業績が悪化するケースも珍しくありません。
日本経済にとって、中小企業の事業承継円滑化は喫緊の課題となっています。
先代経営者と後継者の関係の変化
中小企業庁の中小企業白書(2013年度)によると、20年前と比較した場合に後継者が親族の割合は小規模事業者で93.5%から75.5%へ減少、また中規模企業においても91.3%から54.0%へ減少しています。また、代表者の平均年齢についても事業者全体で54歳から59歳、資本金1,000万円未満の中小企業に至っては62歳から64歳へと非常に高齢化しており、後継者決定が遅れています。
経営者引退後の事業継続について、廃業を検討している中規模事業者が1.3%に対し、小規模事業者は13.7%と多くなっています。廃業を希望する理由は、後継者難に関連したものが半分以上を占め、後継者問題は深刻です。
中でも「息子や娘に継ぐ意思がない」、「息子や娘がいない」といった子供への事業承継が難しいことが主な理由となっており、親族以外への承継や、M&Aについても視野に入れて後継者の確保に取り組む必要があります。
事業承継の円滑な実施
このような状況下で事業承継を円滑に実施するためには、事業承継計画の立案と具体的対策の実行が必要です。立案の手順は以下の通りです。
第一に、現状の把握です。会社の現状(ヒト・モノ・カネ)、経営者自身の資産等の把握、後継者候補のリストアップを行います。次に、承継の方法、後継者の確定を行います。最後に事業承継計画です。中長期計画に、事業承継の時期、具体的な対策を盛り込みます。
具体的対策としては、「親族内承認」、「外部からの雇い入れ・従業員等への承継」、「M&A」のいずれかを検討します。
親族内承認の場合は、関係者への理解を求めた上で、後継者教育、株式および財産の配分を検討します。生前贈与や遺言の活用なども積極的に行いましょう。
外部からの雇い入れ、または従業員への承継を行う場合は、関係者へ理解を求める際に経営体制の整備も行います。また、株式および財産の配分の際には、後継者への経営権を集中させ、種類株式の活用や、MBOの検討も行います。
M&Aの場合については、M&Aへの理解、仲介機関への相談、また会社売却価格への算定と会社の実力の磨き上げを十分に行ったうえで、実行しましょう。
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