LGBTに潜む法的課題と現実 (2016/3/4 JIJICO)
本当にLGBTに対しての理解が進んでいるのか
大手企業であるパナソニックが今年の4月から、LGBT(いわゆる「レズビアン」、「ゲイ」、「バイセクシャル」、「トランスジェンダー」の頭文字。)といった性的少数者を差別しない姿勢を示すため、同性カップルに対し結婚に相当する関係と認める方針を固めたようです。また、スポーツ用品大手のナイキ社が、マニー・パッキャオ選手が同性愛のカップルに対して暴言を吐いたことを受けて同選手との契約を打ち切ったそうです。昨年、渋谷区や世田谷区が同性カップルに結婚に相当する証明書を発行したり、携帯電話の各社が同性パートナーに家族割引などのサービスを提供することにしたりと、世間の風潮的にも性的少数者に対して肯定的な空気が出来つつあるように感じます。
一方で、昨年秋には海老名市の市議会議員が同性愛者に対する侮辱的なツイートを行ったというニュースも記憶に新しいところです。残念なことに、市議会議員という公人がこういった発言を行うくらいですから、日本では性的少数者に対する差別的な見方が無くなっていない、少なくとも好奇な目で見られているケースがあるというのが現実と言えるかもしれません。
LGBTに潜む法的問題
性的少数者に対して、そのことのみを理由として差別的な取り扱いを行うと、違法と評価される可能性は高いといえます。そうであるにもかかわらず、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(いわゆる「性同一性障害特例法」。性同一性障害者につき戸籍上その他法的に性別を変更することができる法律。)を除き、未だ性的少数者を対象とした法律は日本には有りません。
昨今の肯定的な風潮を受けて、国会でも超党派の議員たちによって、LGBTなど性的少数者にまつわる法的課題を議論する部会が発足したようです。近い将来、性的少数者の差別を明示的に禁止した法律や権利保護を目的とした法律が成立する可能性は十分にあると思います。こうした法律が出来ることは、性的少数者に対する保護的な意味はもちろんのこと、国民の意識という意味でも大きな変革といえると思います。
LGBTを一人ひとりが考えるのが大切
ただ、そういった法的な解決ももちろん重要なのですが、それだけに頼るのではなく、教育や各企業の施策など多方面から差別撲滅に向けた動きが活発になると、より良い方向に流れると思います。
例えば手始めに、皆さんが性的少数者だったらと仮定して、どういった社会を望むか一度考えてみてはいかがでしょうか。こういった小さなことが、差別撲滅の第一歩になると思います。
- 関連記事
- 裁判例にみるLGBT(性的少数者)への企業対応の基準
- LGBTに地方議員らが問題発言
- LGBT居住率日本随一!?中野区は同性パートナーシップ条例には消極的
- 「同性婚」証明書は制度の欠缺を条例制定で埋める試み