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商法(運送・海商関係)改正への動き (2016/2/19 企業法務ナビ

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はじめに

 現在、法務省法制審議会では、商法の運送及び海商関係に関する法改正に向けて議論がなされています。平成26年に会社法が大幅に改正されたのは記憶に新しいことと思いますが、商行為法、海商法の部分が改正されるのは制定以来120年間、初めてのことです。主な改正案について見ていきたいと思います。

船

改正のポイント

(1)文語体を口語体へ
 商法は現在、主要六法の中で唯一カタカナ混じりの文語体表記が残ったままとなっておりますが、これを改めて全部を口語体表記に変更するとのことです。これでカタカナや難解な漢字、古い言い回しが無くなり読みやすくなることでしょう。

(2)航空運送に関する規定の新設
 商法が制定されたのは今から120年近く前の1899年。その頃にはまだ航空運送は存在せず、現行商法には航空運送に関する規定が存在しておりません。しかし現在では毎日のように、国内外へ飛行機を使った輸送が行われております。そこで現在の実情に合わせて既存の陸上運送、海上運送に加え、航空運送に関する規定を追加し、運送に関する総則規定を置き、陸海空の複合的な運送規定を新設することが検討されています。

(3)荷送人の危険物に関する通知義務
 現行商法には規定されていない、「荷送人の危険物に関する通知義務」の新設が提案されています。運送荷物が引火性、爆発性等の危険性を有している場合には、荷送人は運送人に対して品名、性質、その他必要な情報を提供しなければならないというものです。

(4)運送品損傷の際の損害賠償請求権の消滅時効期間見直し
 現行商法では運送人が損傷について善意であれば1年で、悪意であれば5年で損害賠償責任が消滅します(商法566条1項、3項、522条)。それを両者1年に統一することが検討されています。

(5)船舶衝突による不法行為責任の消滅時効期間見直し
 海商法に関しては船舶が衝突した際の不法行為責任について、その消滅時効期間を、現行の加害者を知った時から1年から、不法行為時から2年に変更することが検討されております。現在の国際条約に合わせるというのが趣旨です。

コメント

 以上が現在法制審で討論されている主な改正点ですが、この中で最も重要な論点となっているのが(3)の荷送人の危険物に関する通知義務です。荷送人がこの規定に違反した場合の責任について、注意義務を尽くしており、過失がなければ責任を負わないとする過失責任か、過失の有無に関係なく責任を負う無過失責任かが主要な論点となっているようです。無過失責任案のほうが現在の国際物流業界の考え方に合致しており、運送業界や、鉄道、航空業界から賛同が得られているようです。特に飛行機の場合、危険な荷物によって墜落の危険が生じることから航空運送に関して特に責任を加重するべきとの声もあるようです。

 その一方で、運送人がさらに運送を委託する場合、無過失であっても責任を負う場合があり得るのは過剰な負担となるとの反対意見もだされています。いずれの案になるにせよ将来、物品運送契約締結の際には契約書実務で注意が必要となりそうです。

提供:企業法務ナビ

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