オリンピックの時期はジカ熱に注意を (2016/2/23 JIJICO)
ジカ熱の影響で生まれてくる子供が小頭症に
皆さんはジカ熱という感染症をご存じでしょうか。ジカ熱はこれまでに日本国内でたった3例しか診断されたことのない非常に稀な感染症です。しかし、2015年11月、ブラジルの保健省が「ジカ熱のせいで小頭症が増えているかもしれない」という驚愕の発表をし、それがニュースなどでも取り上げられたことでジカ熱を耳にした方も多いのではないでしょうか。
なぜこの小頭症患者の増加が、ジカ熱によるものと考えられているのでしょうか?一つにはこの小頭症患者が増加している地域とジカ熱が流行している地域が一致しているということがあります。そして、もう一つは妊娠中にジカ熱に矛盾しない臨床症状を呈していた妊婦2人の羊水からジカウイルスが検出され、胎児が小頭症であることが確認されたということも、ジカ熱の関与を強く疑わせます。
ジカ熱の特徴とは
では、ジカ熱はどのようにして、ここまでの広がりをみせたのでしょうか。ジカ熱はほんの10年前まで、ごく一部の地域でしかみられない感染症で症例報告数も数えるほどしかなく、希少感染症だったのです。しかし、2007年にオセアニア地域のミクロネシアの島でジカ熱の大流行が起きて注目を集め、さらに2013年9月よりフランス領ポリネシアで始まったジカ熱の大流行は、ニューカレドニアなどにも波及し、感染者は3万人以上に上りました。さらに2015年6月、ジカ熱がブラジルで報告されると、その後は中南米に飛び火しコロンビア、グアテマラ、メキシコ、パラグアイなどの国々で感染例が報告されています。そして、次々に小頭症患者が報告され、現在の大混乱が起こっているという状況です。
ジカ熱のジカウイルスはデング熱ウイルスと同じ科に属することもあり、デング熱に臨床像が似ていますが、デング熱ほど症状は激しくありません。発熱はみられますが、37℃程度の微熱にとどまり、頭痛や関節痛・筋肉痛もデング熱のように強いことはまれとされます。皮疹もデング熱によく似た紅斑がみられますが、ジカ熱では発症から数日くらいで出現することが多いとされます。また、ジカ熱では眼球結膜充血が現れる頻度が高いともいわれています。ジカ熱の感染者の大半は予後良好であり、これまでのところジカ熱による死亡者は報告されていません。
ジカ熱にかからないための予防方法は
ジカ熱に特異的な治療は今のところありません。発熱や頭痛などに対して対症療法を行うことになります。予防についても、ジカ熱のワクチンはまだありませんし、防蚊対策が最大の予防、ということになります。ヒトスジシマカが媒介するということから、ジカ熱もデング熱と同様に、日本国内で流行する可能性のある疾患です。海外で感染したジカ熱患者が日本国内でヒトスジシマカに吸血されると国内の蚊がジカウイルスを持つようになり、流行が広がる可能性があります。これを防ぐためには、(1)渡航者への防蚊対策の啓発、(2)ジカ熱患者の早期診断と速やかな防蚊対策の指導、(3)媒介者であるヒトスジシマカのコントロール、の3つが重要と考えられます。
今夏にはオリンピックも開催されますので日本からも多くの方々がブラジル方面へ出掛けることが予想されます。中南米方面へ出掛けられる方は十分な防蚊対策が必要と考えられます。実際の防蚊対策としては
(1)蚊が多い時間・時期・場所を避ける。
(2)肌の露出を最小限にするため長袖長ズボンを着用する。
(3)防虫剤を適正に使用する。
(ただ、日本で販売されている防虫剤は防虫成分が少ないため、基本的には2時間ごとにこまめに塗り直すことが推奨されます)
などが考えられます。
(*上記の内容は国立国際医療研究センターの忽那賢志先生の文章を参照・一部改変しております)