若年性認知症を自治体が独自調査で実態把握 (2016/2/4 認知症ねっと)
正確な患者数、医療機関の受診状況が把握できていない若年性認知症
厚生労働省によると、18~64歳で発症する若年性認知症の患者数は全国で推計約3万8000人いるとされているが、正確な患者数や医療機関の受診状況などは把握できていない状況だ。
若年性認知症は、高齢者の認知症と比較すると患者数は少ないものの、働き盛りの現役世代で発症するため、家族の介護負担が大きい、利用できる福祉サービスが限られるなど固有の問題も多い。
患者本人や雇用主が認知症の症状、支援体制に対する理解が低い場合、働けるにも関わらず職を失ったり、適切な治療をせずに症状が悪化するといったケースもあるようだ。
現在、各自治体では自治体内における若年性認知症者及び家族の生活実態やサービスの利用状況、ニーズ等を把握するための独自調査を行う動きが増えてきている。
各自治体の独自調査について
静岡県の平成26年度若年性認知症実態調査報告書によると、県内の若年性認知症者は444人で、利用中のサービスについては、医療系サービスでは、「外来(通院)リハビリテーション」が31人(18.9%)、介護保険サービスでは、「通所介護(デイサービス)」が39人(23.8%)と最も多い。
青森県が実施した、若年性認知症者及び家族への支援における医療機関からみた課題についての調査(複数回答有)では、「早期の段階で受診される方が少ない」(58.2%)、「診断後、紹介できる支援機関が不明確」(41.8%)、「症状が進行していることが多く、入院を希望される家族が多い」(21.6%)などの声が挙がっており、若年性認知症の治療における課題が浮き彫りになっている。
また、三重県の調査では、若年性認知症患者の要介護度は若年性認知症でない第2号被保険者と比べ「要介護1」、「要介護5」が多い傾向がみられるという結果が得られており、若年性認知症の特徴として、認知機能が低下しても若くて身体能力が高い点や、症状の進行が速く、重度化しやすい点などを指摘している。
各自治体は、独自調査の結果を若年性認知症の相談・支援体制の拡充に生かしていく方針で、三重県では行政機関や介護事業者、一般企業を対象に若年性認知症に関する基本知識の習得やケアの向上のための研修会を開催したり、患者やその家族、支援者が集う「若年性認知症カフェ」を開催するなどの取り組みを行っている。
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