「2016年台湾総統選」突然の候補者変更と各候補について  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   「2016年台湾総統選」突然の候補者変更と各候補について

「2016年台湾総統選」突然の候補者変更と各候補について (2015/11/18 中原慎介 日本政策学校第2期生)

関連ワード : 台湾 日本政策学校 選挙 

来年、2016年に行われる予定の台湾総統選は当初女性対決、民進党の蔡英文氏と国民党の洪秀柱氏の対決、どちらが勝っても台湾史上初の女性総統誕生と見られていた。

が、選挙2か月前に予想外の波乱。突然国民党候補の洪秀柱氏が辞退を余儀なくされた。

今回は、突然の候補者変更と各候補について見ていきたい。

10月9日に公表された世論調査では、民主進歩党(民進党)の蔡英文主席が支持率48.6%に対して与党・国民党の候補者である朱立倫主席は21.4%とダブルスコアで民進党の蔡氏有利と見られていた。支持率で劣っている焦りからか、中国に寄りすぎた発言や様々な問題発言を繰り返し馬英九総統から退陣を求められ臨時党大会で総裁候補交代を決定した。

国民党の新しい総統選候補は新北市市長で国民党主席の朱立倫氏、国民党内での評価も高くやり方によっては逆転勝利も有り得ると見られている。

蔡英文とはどのような人物か。

蔡英文 現民進党主席 1956年8月31日生まれ 台湾屏東県枋山郷出身
台湾大学法学部、アメリカのコーネル大学ロースクール、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業し、法学博士を取った法律の専門家。李登輝初代台湾総統が提唱した二国論(特殊な国と国との関係)構築の法律的な部分を担当したとも言われている。
とにかく選挙に強く、国のトップレベルでの闘い以外は負け知らず。
中国に対する台湾の立場としては非常に穏健な独立派として知られる。
日本に対しては非常に好意的で、経済的政治的に日本と結びつきを深めようとしている。日本統治時代に関しても、「日本人には誤りもあったが、台湾に対する貢献もあった」と是々非々の立場をとっている。先日も日本の山口県を訪問し安倍総理と会談したとの報道があったが、安倍総理蔡氏両方ともその事実を認めてはいない。

その蔡氏に対する朱立倫氏とはどのような人物だろうか。

朱立倫 国民党主席 1961年6月7日 台湾北部の桃園県八徳市生まれ 現新北市長
台湾大学、ニューヨーク大学卒業後台湾大学で教授を務めた学者肌。
2010年11月の新北市長選挙では今回戦う蔡氏を破り当選した。
日本に対しても、「日本統治は悲惨な歴史であり、台湾人が日本人の統治に感謝することは絶対にない」と述べ、尖閣諸島も台湾の領土と考える一般的な中国人の考えを持っている。

せっかくなので洪秀柱氏も少しだけ。

洪 秀柱 1948年4月7日新北市生まれ
熱烈な中台統一派。中国との統一を公言し度々国民の批判にさらされる。気性は非常に激しく時にヒステリックであるため党内での支持基盤も強くない。

今後は、蔡氏と朱氏を中心に戦いが行われるが、その行方に大きくかかわるのが中国である。

中国と台湾の関係はどうあるべきか。政治的に経済的にどのような距離をとるべきか。また、11/7に馬英九総統と習近平国家主席の会談が、台湾総統選にどのような影響を及ぼすのだろうか?

筆者の考えでは、朱子が勝てばもちろん中国との距離は更に近づくが、蔡氏が勝ったとしてもそれほど中国との距離が遠くなるようには思えない。もちろん、民進党・蔡氏が勝った場合に中国は軍事演習等で台湾を威嚇することはあるだろうが、現在の経済状況で台湾を全く無視することはできない。

台湾にとっては個別に厳しい状況は生まれるだろうが、中国以外とも幅広く貿易を行う事で中国よりも先に発展した台湾にとっては、全ての状況が想定し得る範囲内ではないだろうか。

加えて、中国との接近を考える国民党にとっては現在の国際情勢は大きな足かせになっている。

TPPが始まる事、日本で安保法政が可決し他国との軍事協力がしやすくなった事、南沙諸島における周辺国の結束。これら全ての根幹には中国に対する周辺国の不信感があり、その不信をはねのけ中国を擁護する道理を台湾国民は持ち得ないだろう。

現状のまま選挙戦に突入すれば民進党蔡氏が勝利するに違いない。それをひっくり返すには大きなターニングポイント、例えば蔡氏の金銭・異性トラブルやアメリカやイギリスに行ったような中国の桁外れの経済取引等が無ければ厳しいかもしれない。

だからこそ、国民党と朱氏自身がどのように台湾国民にアピールをしていくのかを注視していきたい。

毎回、親日親中の候補が激突する台湾総統選挙、このような構図になった経緯を次回の記事で配信します。

著者プロフィール
中原 慎介(なかはら しんすけ)日本政策学校 第2期生
前船橋市議会議員
常に首長に賛成しかできない地方議会に危機感を持ち首長に対し是々非々で臨む重要性をうったえる。行財政改革を通じ地域の活性化に取り組む。
柔道初段、プロキックボクシング3戦、テコンドーは歴20年以上で世界大会日本代表(スーパーヘビー級)という経歴の持ち主。
関連記事
子育て支援に7000億円、消費税増税分の使い道を知ってますか?
30年後の日本が世界でリーダーとなるために
今の日本に本当に必要なのは、誰に何の教育か?
進まぬ災害復旧事業、防潮堤建設の課題とは
ITにより加速するオープンガバメント~透明性、市民参加、そして行政の縦割りをなくし産学官連携推進できるか
関連ワード : 台湾 日本政策学校 選挙