来る改正障害者雇用促進法の施行に備えて (2015/12/10 企業法務ナビ)
1.概要
平成28年4月(一部公布日又は平成30年4月)より、改正障害者雇用促進法が施行される。本改正のポイントは次の通りだ。
(1)障害者に対する差別の禁止
(2)合理的配慮の提供義務
(3)苦情処理・紛争解決援助
(4)法定雇用率の算定基礎の見直し
今回は、(1)(2)の具体的内容について触れてみようと思う。
2.内容
(1)障害者に対する差別の禁止
障害者であることを理由として、募集・採用、賃金、昇進といった各項目について不当な差別的取扱いをすることが禁止される。差別に該当する行為は、各項目について、障害者であることを理由に、その対象から障害者を排除することや、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすること、である。ここにいう「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害があるため、長期に亘り、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく 困難な者を指す。そして、対象となる事業者はすべての事業者となる。厚生労働省では、改正障害者雇用促進法を受け、差別禁止についての障害者差別禁止指針を策定し告示している。
(2)合理的配慮の提供義務
合理的配慮とは、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、当該障害者の障害の特性に配慮した措置を講じること、および、採用後において均等な待遇を確保するため、障害者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備や措置を講じることをいう。その具体的措は、個々の事情を有する障害者と事業者との話合いの上での相互理解の中で提供されるべきものとなる。
合理的配慮の提供は事業主の義務となるが、採用後の合理的配慮については、事業主が雇用した労働者が障害者であることを知りえなかった場合など、義務違反が問われないケースも存在する。また、事業活動への影響の程度や実現困難度、費用・負担の程度等を考慮し、事業主に対して過重な負担を及ぼすといえる場合は、合理的配慮の提供義務は免除されることとなる。さらに、採用後に講じる合理的配慮は、職務の円滑な遂行に必要
な措置であることから、日常生活に必要となる眼鏡や車椅子の提供、配慮をしても重要な職務遂行に支障を来す場合の当該職務の継続が事業主に求められるものとはならない。
合理的配慮の提供義務については、厚生労働省は、合理的配慮指針を策定・告示するとともに、合理的配慮指針事例集を掲載しているため、こちらも参考にしたい。
3.コメント
いかなる行為が「差別」に該当するかについては、個人の受け取り方によって若干のずれが生ずると思われる。そのため、同法により禁止される差別行為がいかなる行為か十分に把握しておく必要がある。また、合理的配慮の提供についても事例集を参照し、事業者に求められる提供内容について予め準備しておきたい。障害者には様々な障害を抱えた方がいることを念頭に置き、従業員等にはその理解を促す教育も求められているといえよう。障害者への理解を踏まえ、この法律を遵守する姿勢を持つことも、より良い職場環境の生成への第一歩となるのではないだろうか。
4.関連サイト
厚生労働省-改正障害者雇用促進法の施行について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html
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