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ついに「電力自由化」解禁!独占状態を脱した先に見える未来予想図 (2015/12/10 JIJICO

2016年4月に解禁される「電力自由化」

日本だけではないかもしれませんが、「一方的に勝ち続けるのは公平ではない」という考え方があります。これまで、電力業界は参入障壁が高く、東京電力や関西電力など、各地域の電力会社による独占状態が続いてきました。インフラ事業は人が少ない田舎にも設備を作る必要があるため、多額の費用がかかります。そのため、赤字分を黒字に転化できるよう、長らく独占に近い状態が続いていました。

電力

同様にプロ野球の世界にも同一球団ばかりが勝ち続けるのは面白くないという理由で、ドラフト制度が存在します。ビジネスの世界でも独占状態が続けば、現状維持のまま前例主義に陥ります。すると、相対的にサービスの質が低下していきます。そのため、電気小売りの完全自由化によって業界を活性化しようと決まったのが、2016年4月に解禁される「電力自由化」です。

東燃などの石油元売り業界、大阪ガスなどのガス大手などが参入

既に参入企業として名乗り出ているのが、東燃ゼネラルグループをはじめとする石油元売り業界、東京ガスや大阪ガスといったガス大手、そしてドコモやソフトバンクなどの通信大手です。特に東燃ゼネラルグループが電気事業に乗り出すのは、ガソリンスタンドが危機に面しているからと予測されます。燃費の良い軽自動車に加え、ハイブリッド車の出現でクルマの燃費効率は格段に向上しました。一回の給油で200キロ走っていたところが400キロ走れるようになれば、単純計算でガソリンスタンドは半分の店舗で済んでしまいます。

ということは、同社の石油精製工場もガソリンスタンドの減少につれ、能力の余力が増えるということになります。工場には自家発電設備を持ちますが、生産量が減っているため全能力を出したくても出せなかったことでしょう。電力をいつでも供給できる体制にもかかわらず、今までは送電する設備を電力会社が独占していましたが、電力の自由化により障壁がなくなった格好です。電力と同様、太陽光発電システムに風力発電システムなど、発電システムも多様化しています。これも、チャンスがあれば参入余地があります。

当面は価格競争が展開されると予想される

参入企業として名を連ねる携帯会社などは、そうした意味で既に同じような状況を経験しています。携帯電話もサービスが開始された当初は、インフラを持つNTTドコモだけの独占状態でした。自由化されてからはツーカー、セルラー、テレコム、IDO、J-Phone、Vodafoneなど、各社が次々と携帯電話業界に参入してきました。これらの会社は吸収され、現在はドコモとau、SoftBankのほぼ三社に集約されています。電気事業社も同様です。虎視眈々と狙って儲かると思えば、次々に参入する企業は増えます。しかし、そのうち電気事業参入社が過剰になれば、耐えられない会社は吸収されてしまうのです。

電気の自由化は今後、電気業界が現在の携帯電話の契約と同じような状態になることを意味しています。手間のかかる手続きなどは不要、供給安定性にも変わりがないということは、さまざまなプランや価格面が争われる土俵となりそうです。現在、既に各社からさまざまなプランが登場するとの情報はありますが、やはり当面は価格競争が繰り広げられるでしょう。そこで、差別化の一手として各社からインターネットルータのように、室内電力マネージメント装置が登場すると予測します。

装置には人工知能が搭載されていて、居住者の好みを学習し、常に最適温度を最低限の電力(電気料金)で賄うようになるでしょう。ただ、携帯電話の契約で問題になったように、電力マネージメント装置に2年縛りなどのルールが設定されないことを願うばかりです。

提供:JIJICO

著者プロフィール
木村尚義木村 尚義/経営コンサルタント
株式会社創客営業研究所
創客営業研究所代表取締役。六本木ライブラリー個人事業研究会会長。汎用機SEを経てOA機器販売会社へ。売上げ不振パソコンショップのテコ入れを命じられ、たった一人で東北に赴任、秋田店の運営を任される。逆転の発想を駆使して初年度で5倍の売上げを達成。その後、IT教育会社グローバルナレッジネットワークに転職、受講者は通算2万5千名を超える。法人向けITセミナーでは依頼主への受講者レポート提出の経験から、個人の隠れた強みを 発見することが得意。2008年に法人化。通信、銀行、商社で逆転の発想セミナーを実施。1千名以上の受講者から好評を得る。
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