空家が勝手に解体される? (2015/11/4 法、納得!どっとこむ )
もうずっと人が出入りしている気配もなく、一部崩れかかっている…という空家を見たことがある方もいらっしゃると思います。景観も悪くなるし、なにより倒壊して怪我人がでてしまったら大変です。このような空家がある場合、近隣住民はどうすればよいのでしょうか?
2015年10月26日に神奈川県の横須賀市において、倒壊のおそれがある空家を市町村が強制的に解体できる「空家対策特別措置法」に基づいて、全国初となる空家の取り壊しが行われました。
今回は、この空家対策特別措置法について見てみたいと思います。
空家対策特別措置法(正式な名称は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」といいます。)は2014年10月に制定され、2015年2月26日に施行されました(関連の規定は2015年5月26日に施行されています)。適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観など地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているため、地域住民の生命・身体・財産の保護や生活環境の保全、空家等の活用を目的として制定されました(法1条)。
この法律において、「空家等」とは、建物又は建物に附属する工作物であって、居住やその他使用されていないことが常態であるものをいいます(法2条1項)。
「特定空家等」とは、
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
となっている空家等をいいます(法2条2項)。
市町村は空家に対する対策についての計画を定めたり、協議会を設置することが出来ます(法6条、7条)。そして、市町村長は、法律で規定する限度で空家に立入り調査を行ったり(法9条)、空家の所有者を把握するために固定資産税情報を利用することができるようになっています(法10条)。
特定空家等については、除去や修繕、木の伐採等についての助言や、指導、勧告、命令が可能になっています(法14条)。さらには、除去や修繕などについて行政代執行をすることが出来ます。
行政代執行とは、行政上の義務を果たさない人たちの代わりに国や地方公共団体などの行政機関が、代わって義務者のやらなければならない行為をし、その費用を義務者から徴収することをいいます(行政代執行法1条、2条)。
今回の横須賀市のケースは、当該建物の屋根が崩れ落ちており、周辺住民に危険があると判断されたこと、誰も税金を払っておらず、所有者不明と確定したため、行政代執行に踏み切ったそうです。費用の約150万円は市が負担するとのことです。
もし、近隣に崩れそうなど人に危害を加えそうな空家があってお困りの場合は、各市町村で相談窓口を設けているところも多いので、ご相談してみることをおすすめいたします。