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IR整備法案、このままで本当に大丈夫?~依存症対策議連が韓国視察報告会を開催 (2018/5/7 大田区議会議員 岡高志)

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韓国視察報告会を開催

 ギャンブル依存症対策地方議員連盟として、韓国のカジノ・IRを視察しました。日本が学ぶべき非常に有益な知見を数多く得ることができましたので、政策決定者(国会議員・地方議員・行政職員)や報道関係者に、得られた知見を共有すべく、視察報告会を企画いたしました。

 視察項目は次の通りです。

  • 韓国人向けカジノ・IR 江原ランド
  • 外国人向けカジノ・IR パラダイスシティ
  • 国立賭博問題管理センター
  • 江原ランド中毒依存症センター(KLACC)

 日本では2016年12月にIR推進法が成立し、カジノ・IRの導入に向けて着々と準備が進められています。その一方で、既存ギャンブルだけでも「ギャンブル大国」であるにもかかわらず、先進国の中では依存症対策において大きく遅れているのが現状です。

 こうした中、公営賭博に加えてカジノ・IRも整備されている隣国・韓国の依存症対策を視察してまいりまして、日本が学ぶべき非常に有益な知見を数多く得ることができました。

 報告会の詳細は下記の通りです。

  • 日時:2018年5月8日(火)15:00~16:30
  • 場所:衆議院第一議員会館 第1会議室(B1階)

参加ご希望の方は、「ギャンブル依存症対策地方議員連盟facebookページ」からご連絡ください。
http://facebook.com/GA.members/

カジノ

IR整備法案の概要

 さて、日本の今後のギャンブル依存症対策の要として、4月27日に閣議決定されたIR整備法案や、議員提出のギャンブル等依存症対策基本法案が今後国会で議論されていきます。今回は、その法律案の概要を私の視点で解説します。

 「特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)案」は13章251条から成り立つ大作です。

第一章 総則(第一条―第四条)

第1条(目的)
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律第5条の規定に基づく法制上の措置として、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ事業の収益を活用して地域の創意工夫及び民間の活力を生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより、我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、特定複合観光施設区域に関し、国土交通大臣による基本方針の作成、都道府県等による区域整備計画の作成、国土交通大臣による当該区域整備計画の認定等の制度を定めるほか、カジノ事業の免許その他のカジノ事業者の業務に関する規制措置、カジノ施設への入場等の制限及び入場料等に関する事項、カジノ事業者が納付すべき国庫納付金等に関する事項、カジノ事業等を監督するカジノ管理委員会の設置、その任務及び所掌事務等に関する事項その他必要な事項を定め、もって観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資することを目的とする。

第3条(国の責務)
国は、推進法第3条の基本理念にのっとり、我が国において国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する施策(特定複合観光施設区域の周辺地域の開発及び整備、交通環境の改善その他の特定複合観光施設区域の整備に伴い必要となる関連する施策を含む。)を策定し、及び実施するとともに、犯罪の発生の予防、善良の風俗及び清浄な風俗環境の保持、青少年の健全育成、カジノ施設に入場した者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響の防止並びにこれらの実施のために必要な体制の整備その他のカジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(私見)この2つの条文から、IR整備法案では、依存症予防に言及があるものの優先順位が低いことがわかります。「第三章 カジノ事業及びカジノ事業者 第二款 依存の防止のための措置及び入場規制等」でしか具体的な依存症対策はありません。ギャンブル等依存症対策基本法案に期待です。
第二章 特定複合観光施設区域(第五条―第三十八条)
第9条(区域整備計画の認定)
⇒ IR整備の認定権者は国土交通大臣。設置数は3カ所までと決められました。
第三章 カジノ事業及びカジノ事業者(第三十九条―第百二十三条)
第二款 依存の防止のための措置及び入場規制等
第68条(カジノ行為に対する依存の防止のための措置)
⇒ 入場者又はその家族その他の関係者の申出による利用制限措置を定めました。
第69条(入場規制)
⇒ 日本人のカジノ利用上限を、週3回、月10回と設定。
第70条(入退場時の本人確認等)
⇒ 日本人の入場管理は、マイナンバーカードで。
第四章 カジノ施設供用事業(第百二十四条―第百三十五条)
第五章 認可施設土地権利者(第百三十六条―第百四十一条)
第六章 カジノ関連機器等製造業等(第百四十二条―第百七十二条)
⇒ 第六章の内容は細かに詰められていまして、パチンコ機器へも許認可を国家公安委員会が担うように、カジノ機器などの関連設備の規制権限をカジノ管理委員会が担うことになることがわかります。
第七章 カジノ施設への入場等の制限(第百七十三条―第百七十五条)
⇒ 未成年者、暴力団員の入場禁止。
(私見)依存症対策の入場制限も章として独立させてもよいのでは。
第八章 入場料及び認定都道府県等入場料(第百七十六条―第百九十一条)
⇒ 国・都道府県等でそれぞれ3,000円の入場料を賦課します。あわせて6,000円の入場料です。
第九章 国庫納付金及び認定都道府県等納付金(第百九十二条―第百九十五条)
⇒ 国と都道府県あわせて、カジノ行為粗収益の30%を徴収します。
(私見)(第215条、232条によれば)ギャンブル依存症対策への財源とはならないようです。第1条に掲げられたように、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資することが目的です。
第十章 カジノ事業者等の監督(第百九十六条―第二百十二条)
第十一章 カジノ管理委員会(第二百十三条―第二百三十条)
第215条(所掌事務)
カジノ管理委員会は、前条の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
一 カジノ事業の監督に関すること。
二 カジノ施設供用事業の監督に関すること。
⇒ カジノ管理委員会は、カジノ事業のみの監督官庁であって、ギャンブル全体の依存症へ関与する組織でないことがわかります。
(私見)ギャンブル等依存症対策基本法案に期待です。
第十二章 雑則(第二百三十一条―第二百三十五条)
第十三章 罰則(第二百三十六条―第二百五十一条)

ギャンブル等依存症対策基本法案の概要

与党提出の「ギャンブル等依存症対策基本法案」

 総則
 ギャンブル等依存症対策推進基本計画等
 基本的施策
 ギャンブル等依存症対策推進本部

 以上の4章からなり、国は官房長官を本部長とするギャンブル等依存症対策推進本部を組織、国や自治体はギャンブル等依存症対策推進基本計画等を策定することになります。

 基本的施策の内容に注目したいですが、教育の振興等、ギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施、医療提供体制の整備、相談支援等、社会復帰の支援、民間団体の活動に対する支援、連携協力体制の整備、人材の確保等、調査研究の推進等が項目として掲げられています。

 すでに今も実施されてるようなことが並んでますから、踏み込んでいない内容です。計画レベルでしっかりしたものになるとも期待できないので、国会で活発に議論してもらいたいです。

 でも、野党が国会審議にやる気を示してないのも困りものです。実態調査が基本的施策に入っていることには期待します。実態がわからないと有効な対策はできません。

 IR整備法案はカジノ事業に限定されており、ギャンブル等依存症対策基本法案でのギャンブルは、「法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技」に限定されます。

 ギャンブル依存に陥った人の中には、違法な闇カジノやオンラインカジノの影響を受けた人もいるでしょう。

 宝クジもギャンブル等依存症対策基本法案の範囲外です。実態調査の中では、より広い範囲を調査対象にしてほしいです。また、オンラインゲームはものによっては、射幸性があったり、依存性があります。

 ユーザーが若年層に多そうであることも踏まえて、政策的対応は間違いなく必要です。

 せっかくの法律ですから、将来に対処が必要になるところも見渡していただきたいです。

岡高志 大田区議会議員

著者プロフィール
岡 高志(おか たかし)
 [ホームページ]
大田区議会議員(2011年から2期目)。1999年東京大学法学部卒業、洛南高校卒業、信託銀行、外資系投資会社にて12年間勤務。企業投融資、不動産開発投資を担当。子どもたちの未来を守るために政治の道を志し、地盤看板もない上に民主党の逆風の中、初めての選挙にて当選。
No事前選挙ポスター議員連盟 共同代表、洗足池自然観察会 主宰、行政書士、社会福祉士
岡 高志氏プロフィールページ

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