注目を集めるギャンブル依存症の対策を!超党派の議連で実効性のある提言を実施 (2017/9/5 ギャンブル依存症対策地方議員連盟)
取り組みの背景
2016年12月15日にIR推進法が成立し、ギャンブル依存症問題についても注目が集まっています。ギャンブルにのめりこむ中で、破産による生活保護への転落、家族等からの市民相談対応、育児・介護のネグレクト対策など、ギャンブル依存症に関連した負担を地方自治体も迫られます。また、地方自治体は競馬、競艇などの公営競技の主催者としての顔もあります。
つまり、地方自治体にとってこそギャンブル依存症は重要な課題であり、自治体が責任を持ってこの対策に取り組むことが不可欠です。カジノや既存の公営賭博・遊技場への立場や賛否は脇に置いて、全ての地方議員がギャンブル依存症対策を避けては通れません。そのため、関心の高まったこの機をとらえ、2017年2月に超党派でギャンブル依存症対策地方議員連盟を立ち上げました。
議員連盟を立ち上げるに際して、自民党、民進党、日本維新の会、地域政党、無所属など、党派の垣根を越えた活動を意識しました。最終的に提言書に名前を連ねた地方議員は16名ですが、他にも名前は記載していないものの公明党も含めたメンバーが研修会に参加し、活発に議論してきました。
また、パチンコの是非や、最近話題のカジノの是非など、立場も様々です。「カジノは絶対に認めない」「依存症対策をしっかりやって、IRは推進すべき」など様々な考え方があります。しかし、そこで対立しては物事が先に進みません。
立場の違いや賛否は脇に置いて、地方自治の本旨である「住民の福祉の増進」のためにギャンブル依存症は必要だ、との認識を共有しながら、地方議員がギャンブル依存症対策に取り組む議論の土台ができたと考えています。
議連の活動
議連として、4回の研修会を実施しました。
●第1回:ギャンブル依存症の啓発活動に取り組まれている一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会 代表理事 田中紀子氏を講師に招いた研修会
●第2回:国立病院機構久里浜医療センターのギャンブル依存症外来を担当されている成瀬メンタルクリニック院長 佐藤拓 医師を講師に招いた研修会
●第3回:回復施設である認定特定非営利活動法人ワンデーポート施設長の中村努氏とぱちんこ等事業者団体である東京都遊技業協同組合の役員の方々を講師に招いた研修会
●第4回:議員間で各地のギャンブル依存症対策について情報共有をしながら、意見集約
また、研修会以外に現場に出向き、各地のメンタルクリニック、回復施設、自助グループ、ぱちんこ店、競艇、競馬の視察を適宜実施したほか、支援団体との懇談も実施しました。
研修会の講師の選定や視察先もバランスを意識しました。依存症当事者、回復したサバイバー、支援団体、専門医、事業者など、立場によって様々な視点があり、それぞれの見解が食い違う面も目の当たりにしました。こうした中、一部の専門家の見解を鵜呑みにすることなく、幅広い知見を活かすことに留意しました。
さらに、自治体へのヒアリングや、国のギャンブル依存症対策をとりまとめる内閣官房のギャンブル等依存症対策推進チームとの意見交換も実施しました。
ギャンブル依存症対策の提言
本提言書はギャンブル等依存症について、地方議員のみなさまに対策を考えていただく際のガイドブックを目指して制作しました。有志議員で研修会を重ね、自らの自治体の現状を調べ、支援の現場を視察するなどして、議論してきた内容をもとに書き出したもので、この経験から得たものを共有する趣旨です。本提言書では、大きく次の4章に整理をしています。
- 自治体での対策~自分のまちで取り組むべきこと~
- 国での対策~国に取り組んでもらうべきこと~
- 民間での対策~支援団体等に担って頂けなければいけないこと~
- 事業者での対策~企業の社会的責任として期待されること~
また、自治体には、次の3つの側面があります。
(1)「負担者」:生活保護などで依存症の影響を受ける立場
(2)「受益者」:公営競技等からの配当金等を受ける立場
(3)「原因者」:公営競技等の運営者
(1)(2)については、どの自治体にも関係するため、本提言では「1.自治体での対策」に記載していますが、(3)については、「4.事業者での対策」に記載しています(提言書の内容については次のPDFファイルをご参照ください)。
ギャンブル等依存症対策に関する地方議員有志による提言書(PDF)
議連メンバー
岡高志 大田区議(代表)、伊佐治剛 大田区議、伊藤陽平 新宿区議、大岩まさかず 横浜市議、荻野稔 大田区議、奥谷浩一 東村山市議、上町弓子 東村山市議、川名ゆうじ 武蔵野市議、櫻井崇 千葉市議、鈴木綾子 江東区議、田中優子 世田谷区議、谷川しゅんき 京都府議、中妻じょうた 板橋区議、野崎隆太 伊勢市議、三雲崇正 新宿区議、小林伸行 横須賀市議(事務局長)
今後に向けて
自治体のギャンブル依存症対策は、自治体によってまちまちであり、多くの自治体ではほとんど緒についてないのが現状です。この提言書を活用頂き、各地の自治体で議会で議論を重ねていただくことで、全国の底上げを図ることを期待しています。
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