[解説]築地市場、豊洲移転
小池都知事を悩ます築地市場の豊洲移転、何が問題なのか? (2016/8/18 政治山)
小池百合子東京都知事による都政改革は、東京五輪の予算見直しで注目されていますが、11月7日に開場が迫った築地市場の豊洲移転も、予定通りに開場するか延期するかの結論を早く出さなければいけない差し迫った課題です。小池知事は8月16日、築地と豊洲の双方を視察し、リオ五輪出張から帰国後に結論を出すと述べました。
そもそもなぜ築地市場が移転されることになり、豊洲市場への移転は何が問題になっているのか振り返ってみます。
戦前に開場した築地市場は老朽化と渋滞で非効率に
築地市場は1935年に開場してから80年以上が経過し、施設の老朽化が進みました。また、世界最大規模の取引金額に成長したため手狭になり、トラックの渋滞などで作業が非効率になりました。移転ではなく、敷地内での再整備も検討されましたが、工期の長期化や仮設建設費用が高騰するおそれがあり、多くの市場業界団体は豊洲移転でまとまりました。
5つの候補から豊洲地区を選定
豊洲地区のほかに、晴海や有明北など5地区を候補地として、現地調査も行って比較検討した結果、約40ヘクタールの敷地確保や良好な交通アクセス、築地の商圏との継続性等の条件などを検討し、豊洲地区が選ばれました。
豊洲新市場の予定地は、1954年から海面の埋立てが始まり、ガスの製造工場が建設され、1956年から1988年まで、都市ガスの製造・供給が行われていました。現在、工場跡地は広大な更地となり、東京都は1997年から土地区画整理事業を行い、一体整備が行われています。
ガス製造工場の名残りで土壌汚染を観測、対策へ
予定地の土壌汚染は、かつての石炭から都市ガスを製造する過程で生成された副産物などによるもので、7つの物質(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)による、土壌及び地下水(六価クロムを除く)の汚染が確認されています。
都は土壌汚染対策として、ガス工場操業時の地盤面の下2メートルまでの土壌を入れ替え、その上に厚さ2.5メートルの土壌を盛り、地盤面の下2メートルより下の土壌から汚染物質も取り除きました。地下水汚染の対策としては、環境基準を超える汚染が見つかっている区画の地下水を汲み上げて浄化。地震などの影響で液状化しないように、砂杭で締め固める工法や、固化剤を用いて地盤を格子状に固化する工法を用いました。地下水管理は、敷地全域にわたって、地下水の水位・水質を継続的に監視し、地下水位を一定に保つことにしました。
土壌汚染やアクセス整備の遅れなど理由に移転延期論
豊洲新市場への移転を懸念する仲卸業者の中には、(1)土壌汚染の心配、(2)交通インフラの整備が不十分でアクセスしづらい、(3)家賃相場や駐車場の数に不安、(4)11月から年末にかけては繁忙期に当たり移転の準備期間が短すぎる…などの不満があります。加えて、床掃除に海水を使えない点や、鮮魚を冷やす「バラ氷」の製造設備と貯氷庫が不足する点などから、コバエやボウフラが沸くのではないか、という指摘もされています。
移転跡地に「築地魚河岸」が10月開業予定
築地の場内市場は移転しますが、商業地である築地の場外市場は、移転対象ではありません。移転後の跡地には、生鮮品などを扱う商業施設「築地魚河岸」が10月15日に開業する予定です。
一方、豊洲の場外には一般の人も利用できる千客万来施設を整備する計画です。18年8月に商業施設を、19年8月に温泉施設を開設する予定です。温泉施設の事業者を巡っては、大和ハウス工業(大阪府大阪市北区梅田)や「すしざんまい」の喜代村(東京都中央区築地)が相次ぎ撤退するなど一時は計画に黄色信号が灯りましたが、再募集の結果、今年3月に万葉倶楽部(神奈川県小田原市)が選定されました。
温泉施設は泉質の違いで差別化
4km南と至近にあるお台場の大江戸温泉物語について、万葉倶楽部は泉質の違いで差別化を図る予定です。大江戸温泉物語は、現地の地下1400mから汲み上げた茶褐色の「ナトリウム-塩化物強塩泉」が源泉で、海水に近い塩分濃度の強い温泉。一方、万葉倶楽部は、湯河原温泉からタンクローリーで運んできた無色透明の「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」で、東京にいながら名湯の泉質を堪能できそうです。
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