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被災地では弱者の立場がさらに弱くなる―金子恵美・衆院議員が菅長官に提言(後編) (2016/6/1 政治山)

 金子恵美衆院議員(38歳、自民党、新潟4区)は5月25日、被災地の経験を新たな被災地に活用するよう促す提言書を菅義偉官房長官に提出しました。金子議員に、今回の背景と内容についてうかがいました。

参考記事:中越地震の経験を熊本支援などに役立てて―金子恵美・衆院議員が菅長官に提言(前編)

熊本地震でも「チーム中越」が活躍

政治山
党や議連ではなく、おひとりで菅長官にお渡しになったのですか?
金子氏
はい。本来は党の手続き等を踏みたかったのですが、「チーム中越」の方からお話を聴き、緊急性を要する話だったので、まずは個人的な提言として菅官房長官に提出しました。長官は熊本地震を検証するワーキングチーム(WT)を近々編成し、課題を聞きたいとおっしゃっていました。

金子恵美・衆院議員1

政治山
チーム中越の活動内容は?
金子氏

被災地があれば赴いて、自分たちの経験を即戦力にして支援活動をしています。熊本地震でも長岡市職員を含めて十数人が複数回にわたって現地入りしました。

行政職員が直接アドバイスすることですぐに信頼してもらい、「こういうやり方ができるんだな」と受け入れてもらえます。市職員だけでなく、青年会議所の方やNPO団体の方々も現地の寺などに寝泊まりして、朝と夜のミーティングで情報共有し、避難所の支援活動をしています。

初めての大災害に被災地自治体は戸惑い

政治山
熊本のような、予想もされていなかった被災地の自治体は、初めての大災害で何から手を付けていいのか分からないでしょうね。
金子氏

行政は全国共通で縦割りです。例えば、各避難所の担当職員がそれぞれの業務だけに集中したり、交代制で担当が代わったりすると、情報が共有されません。長岡市は係長以下の職員のエリア担当が決まっていて、災害があったら各地の避難所に担当者が張り付くという事前の確認ができています。

熊本地震でも各自治体に災害「支援」のマニュアルはありますが、「被支援」の側になったときのマニュアルがありません。そういったノウハウも被災経験のある自治体職員が行くことで助言ができます。

中越地震は小回り効く復興基金が機能

政治山
中越地震でそのあたりが機能した要因は何だったのでしょうか?

金子恵美・衆院議員2

金子氏
小回りの利く復興基金が良かったと思います。熊本地震では総額7780億円の補正予算が成立して復興に向けた動きは進んでいます。今後は、復興基金の仕組みも取り入れていただきたいと思います。中越での復興基金654億円は、住宅再建や解体撤去費用の補助など多岐の分野で活用されました。被災者のニーズに迅速に応えることができ、東日本大震災で「時間と手間がかかりすぎる」と問題になった交付金事業とは対照的です。

被災地では社会的弱者がもっと弱者に

政治山
現地からの声で特に気になることは?
金子氏
プライバシーの問題があるのであまり表には出ていませんが、今回も性被害の問題が出ていると聞きます。また、災害後は、被災地での虐待やDV、性犯罪、離婚率が増加する傾向にあることを、現地の支援団体が繰り返し訴えています。提言にも書きましたが、厚労省の年次報告と現場の訴えにかなりの温度差を感じるので、実態調査が必要だと考えています。この点、塩崎厚労大臣にも面談し、ご協力をお願いしました。社会的弱者は被災地ではなお一層、弱者になります。子育て中の女性はどんなに不安なんだろうなと。

自身も2月に出産経験し、出産・子育てへの思い強く

政治山
ご自身も2月に出産されて、思うところもあるのでは?
金子氏

助産師さんも応援に入っているので、その点では妊婦さんも安心されていると思いますが、妊娠中はただでさえストレスを抱えています。助産師さんの励ましの言葉でポロポロと泣き出す妊婦さんもいます。少しでもストレスを軽くするケアが重要です。

産まれた後も、ミルクには神経を使います。清潔な哺乳瓶を使いたいとか、粉ミルクを溶かすお湯が十分にないといったことが大きな負担になります。お子さんやお母さんのストレスが後になって影響を及ぼすこともあり得るので、後々のケアも必要です。社会的弱者の中でも特に弱い立場…お子さんやお母さん、障がい者のケアが被災地では重要です。

政治山
避難所によっては、そうした弱者の方に行き渡らない物資も多いのではないですか?

常温保温できる液体ミルクの製造認可を

金子氏
乳幼児だと食べ物の内容も違うので、何が必要で何が必要でなかったかの検証も必要だと思います。粉ミルクがあってもお湯が足りずに、満足な授乳ができないというケースだってあります。今回、日本では製造が認められていない液体ミルクが、フィンランドから約5000パック送られてきました。厚労省は救援物資として特例で配布を認めました。

金子恵美・衆院議員3

 
液体ミルクは常温で半年近く保存できることから、被災地では特に重宝されます。北欧では日常的に飲まれているので、早急に国内導入を検討しようと自民党の勉強会が5月25日に立ち上がったところです。
政治山
なるほど。現場で積みあがった課題を一つずつ克服していくことが重要ですね。
金子氏
チーム中越も被災地に赴くことで若い方々の経験も増え、次の支援でより迅速で的確な対応ができるようになります。そういった被災地の経験を活かす制度づくりを政府が早急に取り組んでいただけるよう、私たちも情報を積極的に共有していきたいと思います。

聞き手:上村吉弘(うえむら・よしひろ)

金子 恵美(かねこ・めぐみ)
1978年新潟市南区(旧月潟村)生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社新潟放送に入社。新潟市議、新潟県議を経て、2012年総選挙で初当選し、現在2期目(新潟4区)。衆議院総務委員会、消費者問題に関する特別委員会所属。自民党地方創生実行統合本部本部長補佐、女性局副局長などを務める。
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