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副市長が逮捕で不在、普段は注目されない副市長という存在 (2015/2/24 政治山)

群馬県渋川市の副市長が2月19日、官製談合の疑いで逮捕されました。このような事態が起きると、副市長が不在となります。普段、注目されることが少ない副市長という存在について、地方自治の研究をしている東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に伺いました。

副市長は首長を補佐する存在

――自治体で、副市長とはどのような存在なのでしょうか?

「副市長の役割については、地方自治法第167条で定められており、市長を補佐する存在として位置づけられています。首長の命を受けて政策や企画を司り、職員の担任する事務を監督するとされています。市長に事故があった際などには、その職務を代理することもあります」

――市長を代理するほど重要な立場であるとのことですが、どのような人が副市長になるのでしょうか?

「一般的には、役所で部長などの要職を務めた方です。役所内部の事情にも精通しているため、そういう方が選ばれることが多いようです。大きな市では複数の副市長が置かれることもあり、外部から招へいされるといったことも行われます。総務省などの中央省庁や都道府県の幹部を招くこともあれば、有力な議員を辞職させて副市長にするという例もあります」

副市長選任には議会の同意が必要

――副市長はどのように選ばれるのでしょうか?

「市長が副市長の候補者を見つけ、副市長選任にかかわる議案を議会に提出し、同意を得なければなりません。以前、市長が専決処分で副市長を決めてしまい、議会の同意を得ないという出来事があったため、2012年に地方自治法が改正されて、専決処分で副市長を決めることができなくなりました」

――議会の同意が必要ということは、同意されずに副市長が決まらないこともあるのですか?

「実際にあります。千葉県が発表した『県内市町村における副市町村長の状況について』という資料を見ると、市レベルでは、八千代市では副市長が決まらずに不在です」

八千代市は副市長不在が続く異例事態

――千葉県の発表資料は2014年6月のものです。八千代市で副市長不在だったとのことですが、現在は誰か任命されたのでしょうか?

「現在も八千代市では副市長不在です。病気などで副市長が退任し、短期的に不在ということは他の自治体でも見られることですが、八千代市の場合、2013年7月に前任の副市長が退任して以来、副市長不在が長く続いています。これだけの長期不在は異例の事態と言えます」

――長期間不在とのことですが、副市長を選任しようという動きもないのでしょうか?

「一度も副市長選任の提案がなされていません。昨年11月に秋葉就一市長に対する辞職勧告決議が賛成多数で可決される事態が起きていますが、副市長の長期不在も決議理由の1つです」

――この問題を八千代市議会はどのようにとらえているのでしょうか?

「八千代市議会議員で最大会派『市民クラブ』の1人である林隆文さんによれば、『議会としては、副市長の長期不在は市民生活にも悪影響を及ぼす大問題であると認識しており、市長が選任案を提案しないことが一番の問題であると考えている。提案があればきちんと議論したいと考えている。提案がないようであれば、今後も副市長の長期不在をめぐって議事が紛糾する可能性があるのではないか』とのことです」

「地方自治法上は『市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。』と定められており、もし本当に必要ないとするのであれば、条例を制定するのが本来のあり方だと思います」

参考:県内市町村における副市町村長の状況について(千葉県)

本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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