統一選前の最後の議会、質問テーマはどうやって決まるの? (2015/1/20 政治山)
2月になると平成27年度最初の定例会が始まります。今年4月の統一地方選挙で改選がある議会では、これが今任期最後の議会になります。地方議会では様々なテーマについて質疑が交わされていますが、議員による質問テーマの選別や注目すべき質問について、地方議会の研究をしている東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に尋ねました。
地方議員はどのように質問のテーマを決めるのか?
――地方議員はどのような観点から質問テーマを選んでいるのでしょうか?
「それぞれ議員さんごとに得意分野やライフワークとして取り組む課題があり、それらに沿いながら、その時々の社会情勢や当該地域の現況に合わせて質問テーマを選ぶというのが一般的だと思われます。ただ、選挙によって選ばれている身である以上、支援者や支持団体、地盤とする地域の意向をまったく無視するというのも現実的でありません。ですから、議会での質問も、自身の興味関心から行うものと支援者などの意向を反映したものが混在するということになるのだと思います」
――政党に所属している議員の場合はどうでしょうか?
「党をあげて全国の地方議会で同一のテーマを取り上げるというキャンペーンを行うケースも見られますが、基本的にはそれぞれの議員の裁量に任されていると言っていいと思います。同じ政党に所属している議員同士で、質問の内容を擦り合わせて、質問の内容が重ならないようにするなどといったことも行われているようです」
声なき声を代弁する
――選挙で選ばれる立場であるという話がありました。ということは、「分かりやすい成果」を出すための質問が増えそうな気がしますが、どうでしょうか?
「もちろん、分かりやすい成果が出るようなテーマに関する質問が相次ぐことも多いです。例えば、駐輪場が設置されるとなれば、それについての質問を行う議員さんが相次ぐということが見られます。ですから、どうしても議会では言及されにくいテーマというものも存在します。その1つとして挙げられるのが、動物愛護関連の質問でしょう。いわゆる捨て猫や捨て犬の問題です」
――動物愛護となると、議会でも取り上げられそうな印象もありますが?
「動物愛護に関しては、もう少し広く射程を取れば、地方都市における野生動物の取り扱いといったことも議論の範囲に入ってきます。そうなると、野生動物の食害に悩む農林業を支持者とするような議員さんを中心に、関連する質問が相次ぐことになります。しかし、動物愛護の中でも犬猫の殺処分といった声なき声しかないような問題については、必ずしも取り上げる議員が多くないのが現状です」
香川県議会における動物愛護の動き
――動物愛護に関して議会で質問を行っている議員の例を紹介してください。
「動物愛護の問題について熱心に取り組んでいる1人が香川県議会の山本悟史議員です。直近では、2014年10月2日の香川県議会文教厚生委員会(健康福祉部・病院局)、同年12月の本会議で動物愛護に関する質疑を行っています。その他にも、2011年9月定例会では被災ペットの保護、2013年11月定例会では動物愛護政策全般について質問を行い、日々の活動でも動物愛護に関するイベントなどに精力的に足を運んでいるようです」
――香川県議会で山本議員がそのような質問を行う特別な理由はありますか?
「香川県は保護された犬猫の殺処分率が高い県であるとの報道が過去にはあり、知事宛に県民からメールが送られ、それに対して県としての回答が県のWebサイトに公開されています。香川県全体で、これが問題であるとの認識は醸成されていないとは思いますが、一部では全国的にも不名誉な状態にあるという問題意識をお持ちの方もおり、そのような声を山本議員が代弁する役割を果たしているのだと思います」
参考:香川県HP 知事へのメール「犬猫の殺処分に関して」
参考:香川県インターネット放送局「小さないのちの方程式~だれでも出来る。いろんなカタチの動物愛護~香川県」
――香川県議会では、山本議員の他に動物愛護を質問で取り上げる議員はいますか?
「最近の香川県議会ということでは、自民党の松本公継議員や社民党の高田良徳前議員(2014年総選挙に立候補するため辞職)なども本会議や委員会の質疑で動物愛護を取り上げたことがあります。山本議員は民主党の議員ですが、このように地方議会では、党派を超えて取り組まれている課題もあるということです」
「動物愛護のように動物の声を代弁するような質問を行うのは、なかなか難しいことだと思います。しかし、誰かが問題提起しなければならないテーマです。そういう選挙の票に繋がらないテーマを地道に取り上げる議員もいることをぜひ知ってほしいと思います」
- 【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美
1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
- 本田正美氏の記事
- 決選投票では下克上も―民主党代表選の仕組み(2015/1/15)
- 落選議員の引っ越し期間は3日間、慌ただしい議員会館(2014/12/17)
- 選挙後の収支報告書に頭を痛める会計担当者(2014/12/16)
- そのほかの本田氏の記事