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地方議会改革の指標としての議会基本条例 (2015/1/29 政治山)

 早稲田大学マニフェスト研究所による「議会改革度調査2013」や日経グローカルによる「議会改革度ランキング」のように、地方議会改革の進捗度を比較する取り組みが見られようになっています。このような地方議会改革の広がりや改革の進捗度の分かりやすい見分け方について、地方議会の研究をしている東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に伺いました。

地方議会改革とは?

――地方議会改革とは、どのような取り組みを指しているのでしょうか?

「何が議会改革なのかという点については、日経グローカルの調査が参考になると思います。この調査では、公開度・住民参加度・運営改善度の3点から評価がなされています。議会について情報の公開を進める。請願や陳情を積極的に議会で取り上げたり、議会報告会を開催したりするなど、住民の参加を拡大する。議員の質問と首長らの答弁の対応関係を明確にするために、質疑に一問一答方式を導入するといった議会運営の改善に努める。それらの取り組みの積み重ねが議会改革であると言えます」

――昨年発生したような地方議会における不祥事を見ると、地方議会改革は進んでいないように思えますが、いつごろから地方議会改革が進められるようになったのでしょうか。

「2000年の地方分権一括法の施行以降、地方議会の役割の重要性が増しました。この法律により、国の仕事を自治体が肩代わりする機関委任事務が廃止されるなど、自治体の自主性・自立性が増したのに伴い、議会の役割も極めて重いものとなったのです。その重要性を特に認識した議会から議会改革の取り組みは始まってきました」

議会改革が進むと、議会基本条例が制定される?

――特に他の議会に先駆けて議会改革を進めた議会はあるのでしょうか?

「先駆的な議会として、北海道の栗山町議会を挙げないわけにはいかないと思います。栗山町議会は、地方分権一括法施行以後、議会の重要性の高まりをいち早く認識し、情報公開や住民参加のための取り組みを進めてきました。そして、それらの取り組みを制度化するために、議会基本条例というものを全国に先駆けて制定しました。この議会基本条例は現在では500を超える議会で制定されるまでになり、町村議会のレベルから横浜市のような政令指定都市の議会、府県議会でも制定されています」

――議会基本条例というものが出てきましたが、その内容を教えてください。

「議会の役割、議会と首長の関係、議会と住民の関係、報酬や定数の変更方法などを体系的に定めたのが議会基本条例です。それまで、地方自治法にも地方議会について規定する条文はありましたが、地方議会に関する大枠を定めるだけで、具体的な仕組みについて明記されていませんでした。そこで、栗山町議会が議会の役割を明確化する条例を制定したのです」

――条例となると、中身を読み解くのが難しそうですが。

「議会基本条例については、栗山町議会が分かりやすい条文を作り、それが全国の議会でも参照されたため、読み解くのが難しい部分はないと思います。特に注目してほしいのは、議会改革の取り組みついて明記した条文です。例えば、情報の公開を進めるために委員会を原則公開にすることを定めた項目とか、住民参加の取り組みである議会報告会の開催を義務化する項目があるのかどうか。そういう部分を確認することで、議会基本条例を定めた議会の「本気度」を判別することができます。議会基本条例自体の善し悪しの見分け方は、私も作成に関与しました東京財団モデルが参考になると思います」

――議会基本条例を制定しているかどうかが重要になるということでしょうか。

「制定していないところは駄目な議会だという訳ではありませんが、早稲田大学マニフェスト研究所の調査では、議会改革が進んでいる議会の大半では、議会基本条例が制定済みであったとされています。ですから、住んでいる自治体の議会の改革進捗度を簡単に判断するのであれば、まずは議会基本条例が制定されているのかどうかを確認してみるといいと思います」

※写真はイメージです

※写真はイメージです

関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所(外部サイト)
日経グローカル(外部サイト)
東京財団モデル(外部サイト)
本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
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