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佐賀市長選2013:川崎稔氏インタビュー (2013/10/11 政治山)

関連ワード : 九州・沖縄 佐賀 佐賀市 川崎稔 

 若者の政治参加、投票意識を高めようと活動している学生グループ「さがCOLOR」代表の岡島貴弘さん(佐賀大学経済学部2年)が、13日告示、20日投開票の佐賀市長選に立候補を表明している4人に、出馬の動機やビジョンを聞きました。政治山では、若者の直球質問に答える4人のインタビューを掲載します。今回は元参議院議員で新人の川崎稔氏です。

■プロフィール:川崎稔(かわさき みのる)1961年佐賀市生まれ、52歳。京都大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。考査局、名古屋支店、日本開発銀行(出向)を経て、新潟支店総務課長、経営企画室調査役などを歴任。2007年第21回参議院議員選挙・佐賀選挙区にて初当選。公式ブログ

関連情報: 佐賀市長選挙(10月13日告示、20日投開票)

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――市長選に出たいと思われたいきさつを教えてください。

インタビューに答える川崎稔氏

インタビューに答える川崎稔氏

 参議院議員を6年間させていただきました。今年7月で任期を終えることになり、次は何をやろうと考えていたのですが、その中で思い出されたのが東日本大震災の光景だったんです。震災の後、救援物資を持って避難所を訪ねたのですが、そこで避難所の皆さんから色んなお声をいただいたんですね。地元の役場、市や町の職員が、自身も被災者であるにも関わらず、一般被災者のために奔走されていた。その光景が強く印象に残ったんです。市、町の基礎自治体の仕事がいかに住民に身近で重要なのかということが、心に残りました。この仕事はやりがいがあると思ったんです。

――市議選もありますよね。なぜ「市長」ですか。

 地方はやはりリーダーによって変わります。議員は、ある意味議会の中の1人。国会でもそうだったんですね。国会議員は約700人近い衆参の議員がいて、その中の一人ですから、やりたいことをやるにはとても時間がかかります。さまざまな人と意見をまとめて省庁と交渉をして、法律を作って、予算を認めてもらって、と時間がかかります。つまり議員の仕事は合意形成のプロセスがどうしても必要なんですね。それに対し首長はリーダーですから、ビジョンを作って政策を「こういう風にやりたい」と打ち出していけば地域は大きく変わっていくことができます。首長という仕事は地域を大きく変えることができる。そこが魅力だと思っています。

――公開討論会、冒頭で「他の市の存在感が強くなっていて佐賀市の存在感が弱くなっている」とおっしゃられていました。例えば武雄市は、ここ最近、全国的にもかなり目立ってきています。川崎さんは、佐賀市の存在感を大きくするためにどのような改革を行いますか。

 佐賀市は県庁所在地ですから、県都としてどうやって存在感を増していくかということだと思います。私が考える改革の柱は2つ。1つは、佐賀県の経済全体を引っぱっていくのが佐賀市の経済だよ、というように「経済」で存在感を増していきたい。私は経済の仕事に関わることが長かったので、元気な経済を佐賀市を中心にして作っていかなければならないと思っています。もう1つは「行政改革」ですね。これから先、佐賀市をめぐる財政事情は厳しさを増していく。経済を元気にしながら、行政が無駄遣いをしない、健全な財政を維持していかないといけない。これはむしろこれからの問題ですね。この2つで佐賀市の存在感を県都として増していきたいと思っています。

――県都として佐賀市の存在感が大きくないといけないというのはわかるんですが、個人的には「他市に比べて…」という見方は必ずしも要るのかなと言う気もしています。

 他の市が頑張っているから、互いに切磋琢磨して頑張ろうという風に私は思いますね。県都として人口も多いわけですし、佐賀県の中で中心的な立場にいますからね。存在感を増すための施策で他市と共に、佐賀全体をよくできればと考えています。

――今の秀島市長の政策を見ていて、ここだけはもっと大きく変えたい、という部分が具体的にありますか。

 秀島さんの市政で、佐賀市は非常に安定した8年間だったと思うんですね。ですので、今度はステップアップしていく時期に来ていると思います。次のステップでチャレンジ、新しいことをやっていかなければならない。失敗を恐れずにね。ただし予算がふんだんにある時代ではありませんから、限られた予算の中でやっていかないといけない。プロの知恵を借りたり、若い感性が必要になると思います。先ほど武雄市の例を出されましたが、武雄市の取り組みは見ていて非常に若い感性だなと感じます。これまでの感覚ではなかなか生まれてこない発想ですね。

――川崎さんは他の方に比べてもお若いですよね。武雄市長のような若い感性を持っているという自信はありますか。

 少なくとも若い感覚はあると自分では思っていますね(笑)

――何をガラッと変えるか、もう少し具体的に知りたいです。佐賀市民の先輩からは「自分はこれまで非常に安定してきた佐賀市の市政に満足している。あと4年現職に頑張ってもらって、今やっている政策を完成させてほしい」という意見をもらいました。そうした佐賀市民もいる中で、どんなアイデアで市民をワクワクさせるか、具体的に教えてください。

image005-300x199 今までの佐賀市政について、市民の皆さんから「ここを何とかしてほしい」とよく言われる箇所があります。それは、「ひとつひとつの政策はいいが、全体として佐賀市がどういう方向を目指しているかわからない」ということです。「10年後の佐賀市はこうなっている」という明確なビジョンをリーダーとして示し、そのビジョンに基づいて、ひとつひとつ政策を打っていきましょう、という市政が求められているということですね。これは企業経営なら当然なんですが、拝見していると今の佐賀市は全体のビジョンがわかりにくい。今後佐賀市が、経済の活力あふれる町にしていくのか、それとも福祉が充実した町になるのか、あるいは観光で生きていくのか。きちんとした目標を決め、個別の政策を定めていくことが大事だと思っています。予算には限りがあるので、あれもこれも全部というわけにはいかないからです。その中で市民と「こういう佐賀市にしよう」という目標を共有しないといけない。

――川崎さんが今見ている目標、ビジョンをさらに具体的に教えてください。「誇りある県都を取り戻す」という言葉を何度もお聞きしました。そのために、どんな目標を掲げようと思っていますか。

 具体的にですね、それも二つあると思っています。ひとつは佐賀の基幹産業、農林水産業を活かしていかに経済を活性化していくかということ。国策でもあるのですが、「6次産業化…※農業者(1次産業者)が食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)までをすべて行うこと。1+2+3=6なので、6次産業と呼ばれる」がやはりキーです。佐賀では既にある程度実践はできています。製造業者の30%が食品関係ですね。それをさらに進めていくのです。佐賀にはご存じの通り、美味しい食材がいっぱいありますから、これらを活かし雇用も増やしていくことがひとつの方向性と考えます。

――それは今のままではダメですか。

 いや、今よりもさらに進めるということですね。良い部分を伸ばすイメージです。そのために「選択と集中」を行政として行っていかなければと思います。1次、2次、3次産業それぞれにバックアップをし、民間と一緒になって新製品の開発を進めたり、あるいは売り込んだりということをやっていかないといけないと思っています。

 もうひとつの柱は「観光」ですね。観光産業は世界で言えば自動車産業に匹敵する規模の業種です。しかし残念なことに九州7県の県庁所在地の中で、佐賀市は最も観光客が少ない。でも一番少ないということは増やす余地があるということですよね。ご承知の通り、佐賀は歴史で言えば、明治維新の時の「薩長土肥」の一角ですから、大隈重信候はじめ、歴史の中でいろんな立派な方々がいらっしゃいました。残された足跡などを観光としてもっと活用しようという思いを、多くの市民が持っていると思うんですね。また恵比須像、これは文化遺産です。歴史があって文化があって、おいしいものがありますから。これらは観光資源ですよね。この観光資源をしっかりと活かしたい。ひとつの産業としてしっかり育成したいと思います。これはもう何よりアピールすることが大事なんです。私のビジョンは主にこの二つの柱です。「6次産業化と食を活かしたまちづくり」「観光を中心としたまちづくり」ですね。

――観光の「アピール」の点、他市や他県の人に、佐賀市はどのように目に触れるイメージでしょうか。ホームページやテレビCMなどを活用するということですか?

 いや、もっといろんなことを仕掛けていけばいいと思います。私がよく申し上げているのは、実際に昔の長崎街道などの様子を映像で作ってみるということですね。「プロジェクションマッピング」と言って東京駅などで試みられていることですが、駅舎をスクリーンにして画像をうつしていますよね。いま全国各地でこの取り組みがあるんです。プロジェクションマッピングで歴史の何かを再現して見に来てもらう。ひとつのきっかけになるんですよ。佐賀に行こう、というきっかけを作るべきです。例えばNHKの大河ドラマの舞台になるような、そういう佐賀になってほしいとも思っています。これはリーダーが仕掛けていくことが大事なんです。

――プロジェクションマッピングを、実際にやられますか。

 いま白山のアーケード、何もないですよね。ああいうところにセットをつくって、映像で長崎街道を出現させると全然違う世界になるよ、と思います。実際に建物を造る前に、いろんな知恵を出して作ればいいと思う。そこから始まっていくと思いますね。きっかけができると、お客さんが来ていい循環が生まれます。佐賀に来てもらえれば、他の施設などもアピールできて観光資源がさらに整備されていくと思うんですね。

――プロジェクションマッピングは1千万円くらいかかるとも言われています。投票率が高い、50代以上の有権者は安定している佐賀市政に満足しているかもしれない。つまり、お金がかかるようなアイデアは反対されるかもしれません。選挙ではそのあたり、どのように打ち出されますか。

 いえ、箱物、何か施設をつくるというわけではありませんから、あまり反対を受けないんじゃないかと思っていますよ。できるだけお金をかけずに知恵をだし、効果の大きいことをやっていこうということを訴えたいですね。

――これからみんなの知恵を借りていこう、ということであれば、もっともっと民と官の間の敷居を下げて、話し合っていく機会を設けられる、ということですか。

 民と官で分ける、という感覚自体が古くなっていると思うんです。私は民と官の間に「公(おおやけ)」があると思ってるんです。官だけ、民だけでなく、互いに力を合わせてやっていく部分が「公」だと思います。これは官の仕事だから官だけがやっとけ、というのではなく、ある課題についてNPOなどいろんな団体と力を合わせてやっていくということ。今はそういう時代なんだと思います。

――公開討論会で川崎さんは何度も「経済のプロ」ということを強調されました。ただ、私はどのように「プロ」が発揮されるか、まだ具体的にイメージできずにいます。

 例えば雇用を増やさなければいけないという課題。今は特に若い人の失業率って高いんですね。市全体でいうと9.1%くらいです。この数字を少しでも減らさないといけない。すると色んな政策を打っていく中で、この政策を打てば若い人たちの失業が減るかもしれない、など、そういうチェックを常に頭の中でしていかないといけません。この政策だったら雇用にプラスだ、など。そのチェックをしながら政策を考えていく。その時に自分の経済の経験が生きると思うんですね。あらゆる政策が経済に影響するじゃないですか。この政策を打てば経済にどう影響するか、という観点や視点を常に持ち続けることができる。そこで私の経済の経験が生きる、と申し上げてきました。福祉とか教育とか医療なども、それぞれ単独である問題ではなく全部つながっています。当然経済にもつながっているわけで、経済面にどういう影響が及ぶだろうという視点を持って政策運営をしていきたいと思っています。

――最後の質問です。20歳若返った時に彼女がいたらどこに連れていきますか。

 「干潟公園」ですね。空港から降りると、空の広さにびっくりします。有明海の干満の差を見るだけで感動しますね。学生時代はよく干潟を見に行ったりしていました。東京から来た方には、ぜひこの風景を見せたいと思います。自然のすばらしさ、佐賀らしい景色ですね。宝の海、有明海です。

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原発再稼働についての公開質問 回答一覧(pdfファイル・さよなら原発!佐賀連絡会)
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