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佐賀市長選2013:小川登美夫氏インタビュー (2013/10/11 政治山)

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 若者の政治参加、投票意識を高めようと活動している学生グループ「さがCOLOR」代表の岡島貴弘さん(佐賀大学経済学部2年)が、13日告示、20日投開票の佐賀市長選に立候補を表明している4人に、出馬の動機やビジョンを聞きました。政治山では、若者の直球質問に答える4人のインタビューを掲載します。今回は元総務省課長で新人の小川登美夫氏です。

■プロフィール:小川登美夫(おがわ とみお)1955年佐賀市鬼丸町生まれ、58歳。東京大学法学部卒業後、自治省に入省。京都府庁、石川県庁、埼玉県庁、沖縄公庫を経て、内閣官房内閣審議官、総務省北海道管区行政評価局長などを歴任。地域活性化のエキスパート。公式ホームページ

関連情報: 佐賀市長選挙(10月13日告示、20日投開票)

◇        ◇        ◇

――なぜ、いま佐賀市の市長に手を挙げようと思われたのですか。

インタビューを受ける小川登美夫氏

インタビューに答える小川登美夫氏

 今の佐賀市に非常に危機感を持っているからです。佐賀がこのままでは沈没する、と言うとキツい言い方かもしれないが、町というのは長い準備期間が必要な話がたくさんあるんです。場当たり的でなく、中期構想とか、長期にわたる計画を準備しないといけない。町にとってそういう時期ってあるんです。いま佐賀は、まさに真ん中が空き家だらけ、駐車場だらけ。そんな状態を放っておくと、本当に落ち込んでいく。せっかく歴史も文化もあるのに、これ以上落ち込んだらもう立ち上がれなくなるんじゃないか。そういう危機感があるんですね。だからいま、私の手で佐賀を元気にしないといけない。そう思い立って出馬を表明しました。いま長期構想をすべきターニングポイントに来ていると思います。いまは競争の時代。どの町も何とかはい上がろうと頑張っている。それで成功したところは元気が出ているし、失敗したところはどんどんさびれています。私は中央から佐賀市をずっと見てきたのですが、県庁所在地ということがかすかな支えになって、かろうじて元気を維持している、という感じですね。

――県庁所在地がかすかな支え、と言いますと。

 県庁があると人が集まるんですよ。県庁がないと、町の魅力自体に求心力がなければ人も企業も集まりません。例えば東京の企業が佐賀県に支店を出そうと思ったら、当然県庁のある佐賀市に出すわけですね。そういうところだけで今はギリギリ持っているんです。町の活力が自分であるかと言えば、それは相当低下していると思います。そこを何とかしないといけないと思っているんです。

――復活と言いますと、どれくらいのイメージですか。30年くらい前?

 もちろん、30年前にストレートに戻るということはありません。特に中心商店街はもう商店街に戻ることはないでしょう。しかしまず人口減少を止めないといけないですね。それから空き地だらけとか、空き家だらけを止めないといけない。どの程度やるかは議論が必要だと思いますが、今のままでは落ち込む一方ですからね。方向を変えないといけないということです。

――具体的な構想を教えてください。

 公開討論会で申し上げたように、構想はたくさんあります。まず、町の真ん中がどうしてあんなにスカスカになったかというと、それは道路構造に問題があるからです。佐賀市に環状線ができたことは良かったと思いますが、中心を貫く南北軸がなく、真ん中のさまざまな事業が中途半端、あるいは失敗した。だからアンパン(中心も充実する)になるつもりが、実際にはドーナツになってしまった。まずは南北軸をきちんと整備することです。どうやって整備するか。いま堀江通り(佐賀市の陸上競技場付近から南に向かって延びる大通り)が整備されつつあります。いま途中まで出来てますが、全通4車線になると、今の状態と全然違う効果が生まれるんですよ。道路というのはそれくらい大きな力があるんですね。だから、堀江通りができたら少し良くなります。だけどその南北軸は町の中心から西に少しずれてますよね。やはり真ん中を復活させるしかない。歴史的に見ても、真ん中が落ち込んだまま発展した土地なんてないですよね。だから、真ん中を復活させることは最重要課題だと思っています。そこで提案しているのが南北を走る路面電車です。JR佐賀駅を貫いて、北は高木瀬から南は城内までですね。もっと長くてもいいと思いますけど、そんな路面電車を導入したい。

――今ある道路の真ん中に路面電車をつくるということですか。

 そうです。中央大通りを走ります。バルーンの時期をどうするか、とか細かい話はたくさんあるんですけどね。最大の問題は、いま道路を走っている車をどうするかですよね。排除するのかしないのか。自分は排除した方がいいと思っていますが、そういう将来構想を真剣に議論していかないといけない。佐賀の一番の弱点は、そういう将来構想を逃げちゃうところがあることです。「これがいい」と思っていたとしても言えなかったり、「あの人の前では反対と思っていても言えない」など。これは佐賀の特徴的な議論の光景です。つまり「しがらみ」。しがらみの排除は大前提です。即座に必要なことはそこですね。しがらみをなくせば、それだけでも市役所のみなさん、前向きに仕事が始まりますよ。

――私も多久のまちづくりに参加している方に聞くと、しがらみが結構強い、と聞きます。町を盛り上げようとしても上から「そんな面倒しい仕事を回すな」と圧力をかけられることがある。そんなことに従ってばかりだと、市役所の仕事って何だろうと思ったりします。しかし、「しがらみ」って本当になくせますか。具体的にどうやればなくせるのでしょうか。

 「お世話になった人だから」とか、「長いつきあいだから」とか、そんなことで議論を曲げないことですよ。真っ正直なアイデアだけで将来像を議論していくことです。いや、「しがらみ」って市民生活の中では大事だと思いますよ。あの人にお世話になった、とか、そういうことを大切にするから佐賀は住みやすい。だけど佐賀市政は、将来佐賀の町をどうしていくかの議論の場。当然、賛成論もあれば反対論もある。それを真剣に中身で議論することが大事です。しかししがらみがあるとそれが歪んでしまうんですよ。悪い意見だと本当は思っていても、あの人にはお世話になっているからその意見を支持するとか。身勝手だと思ってもあの人には恩義があるから支持するとか、そういう議論の結果が、良くなるわけがないですよね。

――それはもちろんわかります。問題は、「どうやって」それをなくしますか。

 排除するんです。しがらみでモノを言っている人たちを市政から排除していくんです。純粋な内容で真剣に議論しましょうということ。

――現市長の前、木下市長の時代には、それに近いような体制がありましたが、うまくいかなかった部分もあり、いまの秀島市長が誕生したという経緯があります。その点はどう思われますか。

 いや、まぁ前の市長さんがどういう手法だったのか、詳しくは存じません。要は率直な議論が大事なんですよ。ただ、市民の意見を聞くことは大事ですよ。100人いたら100通りの意見があるでしょう。それをひとつにまとめていかないといけませんから。ただし、そのひとつひとつの意見が本当に自分の意見ならいいけど、しがらみによって曲げられた意見なら困る。そこだけです。意見は聞かないといけないし、それを束ねてひとつの方針にしていく。しかし、しがらみがあると本心でない意見を言うでしょう。本心でない意見は採用しないということです。

 例えば駅前の再開発。当然みなさん利害関係があるわけですね。自分の利益を主張するでしょう。それをまとめる時に、町づくりの構想を利害関係者のしがらみでモノを言っていると変なものができるんですよ。全員が利益を享受できるような形にしないと事業そのものが成り立ちませんね。

――多久駅前でも開発をしています。それを見ていますと、もし「しがらみ」でモノを言う人を排除していくと、町の形は便利になったが、悪い人間関係が残らないか、という気もします。議論をしている人もまた市民であるならば、完全に排除は無理では。

 市政にしがらみがあっていいことなど、ひとつもありません。しがらみがあって計画が頓挫することがほとんどです。しがらみを市政から排除すると人間関係が悪くなるという人は確かにいますが、実際にはそんなことはないと思います。いい結果が出るわけですから。結果が何も出ないよりは、結果が出る方が絶対にいいんです。町が良くなって苦労が増えた、なんて人はいませんよ。結果を出すこと、やったことが目に見える形になることが大事です。ただ、時間はかかりますからね。そのプロセスが難しい。そこで市役所が頑張るんですよ。他の都市では歯を食いしばって夜討ち朝駆けをやって、関わる人たちを説得して再開発を成功させている。出来てないのは佐賀だけ。なんで佐賀だけ出来ないんですか。市役所の中枢の人間がしがらみにとらわれているからですよ。

――では、その体制を作るため、市長になられたらまず最初に手がけられることはなんでしょうか。

 「戦略会議」を持ちます。外部の知恵も入れて、佐賀の町をどうしていくか、純粋な議論をしていく。その会議では「しがらみ」にとらわれたことを言う人は退場していただきます。意見にしがらみが入っているかどうかは、聞けばすぐにわかりますよ。大体、「しがらみ」な人は会議が終わった後に言ってくるんです。簡単ですよ、会議の中で、表の議論で全部決めてしまえばいいんです。

――私が思う会議の一般的なイメージって、会議の前後、表じゃないところであらかじめ話が決まっていて、会議そのものにあまり意味がないようなことも多いように思います。

 だから戦略会議の場でカンカンガクガクの議論をやればいいし、そこで決めてしまう。それもなるべく公開すればいいんです。「そうすると何でおれの意を汲んでくれなかったんだ」という人を排除できるんですよ。オープンというのはひとつのやり方なんです。意見を聞かないのはダメですよね。しかし影でコソコソ言わないでオープンの場で言うことだけ採用するということです。オープンでならどんな意見にも一考の余地を持たせます。

 私が掲げる政策、路面電車に反対の理由を言う人もいるでしょう。お金がかかるとか、そんなことは無理だとか。それでいいですよ。あくまでオープンの場で、全部意見が出そろったところで議論しましょうということ。

――それができれば、本当に理想ですよね。

 いやいや、簡単なことですよ。別に理想なんかじゃない。トップが「しがらみ」のことを一切考えません、って言うだけ。今はそれができていない。ハードの話は特にしがらみが出やすい。エスプラッツ開業の話もね、立ち上げからもっとオープンにしておけば良かったと思います。目的がずれちゃったように思いますね。損が出る再開発というのは成立しないけれど、一部の人がもうかる再開発というのもまた成立しない。そもそも中途半端な計画でしたよね。せっかくアーケードがつながってたのにブチ切りしたような話になってしまったし。

image013-300x199 まあ、商店街が生き残れるかどうかは難しいんですが、うまく残ってるところもあるんです。鹿児島とか熊本とか長崎は商店街がまったくシャッター通りになっていない。やっぱり交通基盤ですよ。バスではダメです。かといって、20年前くらいに佐賀市は駐車場がないからさびれていくんだと言う人がいましたけど、いま駐車場が出来て、全く活性化してないじゃないですか。何でだと思いますか。車社会になって車を停めるところがたくさんあれば活性化する、という話がウソだったということです。要するに「便利じゃないから」。環状線の方が便利だから。

 逆のことを言うと、中心街で数少ない黒字の駐車場があるんです。エスプラッツに併設されている駐車場。あそこは黒字。あそこだけ高いんです。便利な駐車場だからですよ。お金の問題じゃないんです。いくら無料でも便利じゃないと使わない。高くても便利だから使うんです。人が集まる交通基盤があるかどうか、車の場合は「便利な」駐車場があるかどうかで決まるんですよ。玉屋の駐車場はちょっと離れてますよね。あれで既に不便なんですよ。雨の日はカサささないといけないでしょ。あれがもし、玉屋の地下にあれば全然違うでしょう。人は便利な方にいっちゃう。ゆめタウンは雨の日、濡れなくても停められるビルの駐車場を持っているでしょう。便利な道路があって、便利な駐車場があれば車社会でもちゃんと人が集まる。同じ箏を中心街でやれば良かったんですが、道は狭いし、駐車場は無い、あるいはあっても狭くて不便だし、それでにぎわうはずないですよね。

――では、もし路面電車ができれば…

 人がどっと来ますよ。

――しかしお店などはまだないですよね。

 いやいや、お店なんかすぐできますよ。今度、堀江通りが佐大の前までボンと通るしょ。清和と旭学園の跡地を使って立地表明されてる事業者があるんですよ。大規模な店舗をつくるそうです。ご存じですか。つまり、便利になるからですよ。

 道路って2車線の道路と4車線の道路で、車の容量でどれくらい違うと思いますか。容量は4倍近くにもなるんですよ。2車線だと1日交通量1万4千台くらいで渋滞するんですね。それが4車線だと4万台近い、3万7~8千台くらいまでは渋滞が起こらない。不思議でしょう。車線変更でうまく避けたりするから渋滞が起こらない。これが6車線。片側3車線になるとどれくらいになると思いますか。7倍くらいまで容量が増えます。東京から延びている東名高速道路。これは1日10万台くらい走りますよ。でも渋滞は土日などでないと起こりません。だから中央通りが片側3車線の6車線だったら、今のようにはなっていない。しかし現時点で車が少ない玉屋の前のあの通りを6車線でつくる、なんて言っていてもね、新聞社さんなんかに「こんな無駄な通りを造ってどうする」なんて怒られちゃいますよね(笑)。そういう批判に今は非常に弱いんですが、先に作ってしまえば後は便利になります。環状線だってね、最初は批判されてましたが、いますごく便利になって店がどんどんできたでしょう。ゆめタウンのところなんか、むしろ車線が少ないから渋滞するって文句が出てるくらいです。くり返しになりますが、便利なところに人、もの、車、全部集中するんです。

 中心街は不便です。だから寂れる。だから便利にするんです。シンプルな話です。ただし、お金がかかるのと、物議を醸すはずです。現実の話としてきちんと議論するために、最初に戻りますが「しがらみ」でものを言う人がいると困る、というわけですね。

――ありがとうございました。最後に、デートコースとしてオススメの佐賀市のスポットを教えてください。

 これは佐賀城ですね。お堀のほとりを歩くというコースですよ。日本でこんなに綺麗にお堀が残っているところはそんなに多くはありませんよ。ここが断然、一押しですね。

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