第8回マニフェスト大賞
行政評価を議会の政策的議論のツールに (2013/12/3 神奈川県川崎市議会議員 小川顕正氏)
地方自治体の首長・議会の先進的な取り組みや、地域主権を支える市民の活動を表彰する「第8回マニフェスト大賞」のグランプリと各最優秀賞の発表が11月1日、東京・港区の六本木アカデミーヒルズで行われ、8部門16作品が表彰されました。 政治山では受賞された皆様から、取り組みの概要や経緯、今後の展望などを寄稿いただきます。今回は最優秀政策提言賞を受賞された川崎市議の小川顕正氏による『行政評価の改革案提示と実現に向けて』をご紹介します。効率的な行政経営のため、独自で開催した研究会で行政評価改革案を作成し実現に向けての活動を続けています。
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行政評価の改革案提示と実現に向けて
行政は縦割り組織です。この組織体系は無駄を生みやすく、それゆえ組織は肥大化していきます。ですから、議会には横断的な視点で行財政をコントロールしていくことが求められるのですが、現状においては行財政の適正規模を模索するどころか、事務事業レベルのさまざまな“要望“によって行財政を肥大化させているといっても過言ではありません。
このような現状の背景には2つの原因があると考えられます。1つは議員の質。残念ながらこれについては、政策的な議論のできる議員を有権者が確かな目で選ぶよりほかに手段がありません。もう1つは、そもそも「どのような政策によって、どのような成果が得られたのか」を正確に把握するためのツールが不足しているということです。議員の質が向上しても、ツールがなければ現状を変えることはできません。
行政評価(行政活動を評価する仕組み)は政策の成果を把握するツールの1つです。ところが、川崎市が公開している行政評価は「政策の成果」を把握するものではなく、単に「政策の取り組み状況」を把握することに主眼を置いたものとなっていました。つまり、少しでも進捗があれば悪い評価を受けることはないのです。結果、評価の対象となる施策のうち約90%が良い評価となっており、この評価結果を元に政策の優先順位付けを行うことは不可能でした。
こうしたことから、行政評価の改革案を策定し、行政に示すという取り組みを行いました。
改革案の策定にあたっては、独自で研究会を組織し、12回にわたって検討を重ねました。客観性を担保するため、研究会には跡田直澄・嘉悦大学教授をはじめとして公認会計士など有識者に常時出席いただくとともに、宮脇淳・北海道大学教授にも助言をいただきました。さらには、6回にわたる議会質問で得られた行政側の考え方も改革案を策定するうえで参考にしています。
なお、行政評価は単に行政内部の管理ツールとして活用するのではなく、市民、議会が活用してこそ本来の役割を果たすことができます。こうした考えから、議会の決算審査に行政評価を活用すべく、各常任委員会で評価結果について質疑する時間を設けるよう提案し、実現しています。
地方議会の質の向上を目指して
行政評価は、定性的な評価だけではなく定量的な評価も用いながらその客観性を向上させていかなければなりません。具体的に言えば、公会計改革によって企業会計的手法による自治体の財務状況の公開がなされるようになりましたが、この財務データを行政評価にも活用していくことが求められます。ただ、行政評価と財務データを結び付けるのは実務面での課題が多く、国においても議論の真っ最中ですから、時間がかかるかもしれません。
いずれにしても、地方議会にはこれまで以上に政策的な議論が求められています。繰り返しにはなりますが、政策的な議論ができる議員を増やすことは最重要課題です。と同時に、政策的な議論に資するツールをそろえていくことも重要です。行政評価はそのうちの1つです。地方議会の質の向上が図られることを強く望みます。
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