NYの視点:トランプ政権のドル政策を警戒 株式会社フィスコ 2017年2月24日
ムニューチン米財務長官は就任後初めてのメディアインタビューで、トランプ政権が掲げている税制改革、規制緩和が奏功し、米国経済が2018年後半には3%成長を達成するとの見通しを示した。ただ、2017年は、景気刺激策による効果は限定的になるとの見解で、市場にあった成長期待感は若干後退した。また、国境税に関しても今後検討していくとの言及にとどめた。ただ、トランプ米大統領は「何等かの形の国境税を支持する」との方針を示しており、オバマケアへの対処にめどがついたのち、税制改革に取り組むとした。
為替市場が最も注目している為替政策だが、ムニューチン米財務長官は「ドル高や株高はトランプ政策への信頼を反映している」としながらも、「ドル高にはいくらか問題もある」と加えた。トランプ米大統領も2回目となる米製造業の幹部との会談で、ドルの価値を低水準に抑えたい意向を示した。トランプ大統領は建機世界最大手の米キャタピラー社のダグ・オーバーヘルマン会長兼最高経営責任者(CEO)との会話で、「ドルが上昇し、米国が他国の通貨操作を容認した場合、活動が停滞するひとつの理由となる。我々は他国にも公平なフィールドで競争させなければならない」と発言。大統領が過去、通貨に関して言及した例はない。通貨に関しての言及は通常財務長官の任務だ。
トランプ大統領はそのほか、米国に雇用を取り戻すことを焦点とし、貿易に関しては、全ての貿易協定が「信じられないほど粗悪」としたほか、対中貿易赤字に関しては、「どうにかしなければならない」と言及。大統領は選挙中から、中国を通貨操作国として認定する方針を掲げていた。ただ、中国の通貨問題に関し、ムニューチン米財務長官は4月に半年に一度の為替報告書を作成する以前に対応することはないとしている。
実際、商務長官に指名されているウィルバー・ロス氏の上院による承認もまだで、トランプの経済チームはまだ完全にそろっていない。現時点で、メキシコや中国と通商、通貨での交渉を進めることは不可能。従って、米国の通貨政策が明確になるのも当面先になる。米国はルービン元財務長官時代から、「強いドルは米国の国益に叶う」というドル政策を維持してきた。果たして、トランプ政権がこの政策を維持するかどうかが焦点となる。
ムニューチン財務長官の最初の任務は来月17━18日にドイツのバーデン・バーデンで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議となる。
■ムニューチン米財務長官インタビューポイント
●3%成長達成へ
「税制改革、規制緩和が奏功し、2018年には3%成長達成へ」
●税制改革を公約
「税制改革は最優先課題」
「8月までに税制改革で議会承認を目指す」
●国境税
「検討していく」
●ドル高、株高
「ドル高、株高はトランプ政権への信頼を反映」
「ドル高は一定の問題も」
●長期債発行も検討
「50年、100年債の発行など、低金利を有効活用」
●中国
「中国為替政策の判断は半年に一度の報告で見直し」
「中国為替に関する決定は4月報告書前にはしない」
<SK>
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