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満足度90%の先へ―自治体を成長させる公務員研修とは (2019/3/15)
東京都日野市は2月8日、魅力発見プロジェクトチームが制作した『絶対に人に見せてはいけない職員手帳』を全職員(臨時職員・嘱託員含む)に配付しましたが、最初の配付対象となったのは、キャリアデザイン研修を受講する若手職員でした。その研修を実施した株式会社学宣(がくせん)の濱田麻紀社長に公務員の研修の変化やこれからのあるべき姿について伺いました。
約40年に渡る組織の人材育成への取り組み
――株式会社学宣はいつごろから公務員向け研修を始めたのですか?
私ども学宣は、1973(昭和48)年に大学広報の仕事からスタートし、1981(昭和56)年に人材育成事業に本格的に参入しました。国内には、俗に言う研修会社がまだ少なかった頃の時代です。今は着実に実績を積み重ね首都圏を中心とした自治体向けに研修を提供しています。
――日野市の研修ではどういった目的や成果がありましたか?
この研修は、働くことにもっとワクワクしてほしいという日野市の思いの下、日々の仕事に対する姿勢を振り返るとともに、市の魅力を発信することの意義を通じて仕事の進め方や自身のキャリアを考える目的で実施しました。今回は、その研修プログラムに、日野市の魅力発見プロジェクトチームが制作した『絶対に人に見せてはいけない職員手帳』の配付をリンクさせました。
市の魅力発信の取り組みと職員研修を組み合わせることで、各人のキャリアと市の未来を真剣に考える、大変貴重な時間になったと思います。
実施後のアンケートでは「市の魅力発信について、誰にどのような魅力を発信していくか考える良い機会になった」「(日野市の)魅力は何か?と問われて答える受け身では魅力は伝わらない。自ら発信することが必要であることを学べた」などの声がありました。
答えはあえて出さず自分で考える―実務に直結した研修スタイル
――そもそも公務員の人材育成はどのようなことを行っているのですか?
最近特に多い研修は、ハラスメント、メンタルヘルス、マネジメント、女性活躍、コミュニケーションといったテーマでの研修ですが、弊社では「人をテーマとした人づくり組織づくり」に主眼をおき、
- 政策形成
- 組織づくり・人づくり
- 対人対応力
- 実務スキル
- 人事・採用
- キャリア開発
- 職場活性化
- 安全衛生
といった幅広いテーマで実施しています。
自治体向け研修ですと、自治体の強み弱みを理解し、課題を抽出して、実際に政策を作り、プレゼンテーションからプロジェクトの進行管理まで行うといった政策形成が特に重要になってきますね。
――研修はどのように役立っているのでしょうか?また研修で重要視していることはどのようなことでしょうか?
もちろん研修の結果が目に見える形で現れるものとそうでないものがありますが、弊社の研修は、研修で学んでいただいたことと日々の実務との結び付けを非常に意識しています。
そのための方法論として、徹底的に参加型の研修、問題提起をして考えてもらう研修の運営スタイルを重視しています。講師と受講者の双方向性を大事にし、眠たくなるような講師からの一方通行の情報提供ではなく、課題を自分事としてとらえていただける研修運営を心掛けています。
そして特に研修のベースとして重要視しているのが、個々人のコミュニケーション能力についてです。組織が最高のパフォーマンスを発揮するために必要な要素は、個々人の高いコミュニケーション能力であると確信しています。しかし、近年はパワハラやセクハラ、若手とコミュニケーションが取れないといった職場環境の問題が深刻化しております。
コミュニケーションの不足による職場環境悪化にどう立ち向かうか
――そのために、御社は何か新しい取り組みをしているということですか?
弊社は創業以来、「組織が発展・成長するためには、組織を構成する一人一人が生き生きと活性化されなければならない」という理念のもと、コミュニケーション能力をもった人材の開発を大切にしてきました。そして、もっと深い部分で効果をもたらす何かをできないかという強い思いがありました。研修を受講するメンバー間のコミュニケーションが円滑であるほど、研修の浸透度合いも高くなるからです。
このような考え方の下、根本的なコミュニケーション能力の向上を目的として「ナチュラルハートコミュニケーション」という研修を開発したのです。
これは既存の研修の概念とは大きく異なるもので、100%体験型の研修です。社交ダンスのメソッドを導入して体を動かし、考え方をほぐすというアプローチです。テキストは一切ありません。机もない。徹底的に体験を通して感じていただく、そういうスタイルの研修を1年前から始めました。
表面的なものではなく、芯の芯から分かり合い同じ目標に向かっていき、様々な意見を建設的に議論し積み上げていくような組織作りに貢献したいと思っています。日野市の大坪冬彦市長も、職員手帳の配付に際し「仕事に対する思いを積極的に表に出していくことを、組織として肯定的に見る土壌を醸成してもらいたい」と話していました。
このプログラムは職場環境の改善や活性化に直結しますので、全ての組織に必要な研修だと考えています。今は、民間企業や福祉施設での導入が中心ですが、今後は自治体向けにも展開していきたいと考えています。
――体を動かすと考え方もほぐれるのでしょうか?
言葉で表すのは難しいですが、コミュニケーションの壁を低くしている感覚です。例えば上司、部下がそれぞれ多大な業務を抱えている中で、部下は常に忙しそうな上司に声をかけにくい、上司はパワハラを気にして部下指導ができないといった、コミュニケーションの壁が存在します。
また、課長だからしっかりすべきとか、新人だから我慢すべきという考え方が積み重なり、壁になることもあります。
しかし、ナチュラルハートコミュニケーションを通して、実はその壁は思っていたほど高くなく、皆思いは一緒であることを理解したり、思い込みに気づいたりして壁を取り払うことができます。
――実際体験した方からはどのような感想がありましたか?
このプログラムは人のマインドにアプローチする方法です。人の本質的な部分を感じていただく、自分の中の何かが体の中から変わっていく感覚を味わっていただきたいと思うのです。開発後約1年ですが、今までご導入いただいたお客様の感想を聞く限り、研修を受講する前と後で気持ちの変化があり、モチベーションの向上には非常に効果が高いと感じています。
実際受講した方からは「社内の人間関係はときに固定化され、ネガティブな感情も生まれがちですが、相手に対する認識が変わり人間関係の改善が期待できる研修内容だった」「身体も心も固まっていては新しいものを生み出したり吸収したりすることはできないことに気がついた」などの声をいただいています。
自治体ごとにカスタマイズされた研修に民間視点を導入
――そのほか御社が公務員研修を実施するにあたり大切にしていることはありますか?
そうですね、主に自治体に寄り添うことと、民間視点を入れることを大切にしています。
――自治体に寄り添うとはどういうことでしょうか?
現在の自治体は、部門横断的なプロジェクトや他の自治体との連携はもちろん、企業など外部との協働も増えています。したがって公務員には、柔軟性、創造力、主体性、課題を発見し解決していく能力が求められていると思います。自治体も民間企業も求められる人材の姿は全く変わりません。
また、これからの自治体には、民間企業をけん引していくようなポジションを求められていることも考えると、その姿は民間企業以上のものかもしれません。その中で、一人一人が自己開発をしていくことが必要とされています。
しかし、一人一人は優秀で、みんな深い考えを持っているにも関わらず、民間企業と比較して、上司の意見が絶対だったり、意見が言えなかったりするトップダウンの風土が一部ではまだ強く、どうしても上の決定、議会の決定を作業レベルでこなす側面があるとも思います。
そうした背景を理解し、それぞれの自治体が置かれている状況、求められる人材像を徹底的にお聞きし、自治体ごとに必要な研修を構築し提供しています。
――民間視点とはどういうことでしょうか?
自治体の仕事は民間企業とは明らかに違った課題を持っていますので、その課題に対応する研修内容にすることは必要です。その上で、弊社は、先ほど述べたように時代が求めていることを考えるために民間視点が必要であると提案しています。
自治体によっては研修講師に公務員経験者を希望されることもありますが、弊社は、「自治体を経営する」という視点からシンクタンクや研修関係の仕事に長年携わってきた講師と共に「お役所仕事という言葉をなくしたい!」という思いで研修内容を考えています。
90%の受講者が満足と評価
――これまで実施してきた研修で参加者の反応はいかがですか?
受講者の満足度に関しては、ある市で実施した全職員対象の苦情対応をテーマとした研修のアンケート(回収数456人)において、A大変良かった、B良かった、C普通、D必要なかった、という4段階評価を行ったところ、Cが53名、Dは1名で、AとBは合わせて402名でした。回答数の90%に当たる職員から一定の評価をいただきました。
これは全職層、また多様な職種を超えて必要とされる研修を行えた結果だと受け止めております。
研修の価格競争は税金を「死に金」にする恐れも
――研修を行う上で課題となっていることなどはありますか?
研修の世界では、受講者からの満足度で一定数評価を得る必要があり、ましてや公務員向けの研修は税金を使っている以上、失敗は許されず、一つ一つの研修全て緊張感をもって行っています。これはどの研修会社でも同じだと思います。弊社の場合、ご提案する研修の品質を第一に考え、日々、努力を重ねております。
一方で、委託業者の決定において、一部の自治体では競争入札の方式を採用しています。競争入札ですと中身に関係なく金額が優先されてしまうため、人材育成の重要性を認識していただいていても、研修会社間の価格競争に陥っているのが実状です。
自治体を経営するのは「人材」です。人材育成に対する先行投資は民間企業において何より重要視されている部分でもあります。その視点に立って、金額だけではなく内容も見た上での判断で人材育成を考える時代になってきていると思います。
弊社は、どの研修においても、研修を研修で終わらせないために、取り組んだ内容を職場に戻って深めていただくことを重視しています。そのためには研修を1回限りで終わらせずに、研修後の実施状況をフォロー研修で振り返る、PDCAサイクルを回すことが大切であると考えています。
施政方針をブレークダウンした研修が理想
――そうした問題もある中で、公務員の研修はどうあるべきだとお考えですか?
長年研修を行ってきた経験から弊社が考えているのは、研修内容は自治体の施政方針からブレークダウンされたものが望ましいということです。施政方針の内容を実現するためには、どういう人材と学びが必要かをその都度考え、学びの場を提供していくのが本来の姿だと思います。施政方針は、民間会社でいう中期経営計画や長期ビジョンに該当します。その計画に基づいた人材育成が必要です。
弊社としては、自治体によって求めることが違いますので、それぞれの目的に対応したカリキュラムと講師をご提案しています。そして、自治体の大小にかかわらず、目的が同じであれば同様の研修内容を提供しています。
モチベーションはトップの意識で変わる
――研修は面倒だと思う人もいるかと思いますが、モチベーションはどう保つのでしょうか。
研修のモチベーションを維持するには、その必要性をどれだけ認識できるかにもよりますが、組織のトップの意識がとても重要です。
ある自治体で、冒頭に市長が挨拶にいらした自治体がありました。実はこうしたケースは非常に稀なのです。
私自身も、実際にその場面を見たとき驚きましたし、大変感動しました。時間にしましたら、研修前のほんの3分ほどなのですが、新規採用職員にも幹部にも同じように、市長が直接、ご自身の言葉で職員に対する日ごろの感謝や研修の趣旨を話され、最後に職員への期待の言葉を贈られました。研修のモチベーション維持に大変大きな効果があったと思います。先日の日野市の職員手帳の配付でも、大坪冬彦市長からのビデオメッセージがありました。
これは自治体に限らず民間企業も同じです。トップが研修に目を向けてくれているというその気持ちが大切なのです。
企業は人なり、行政も人なり、自治体経営を共に考えたい
――最後に、これからの御社の展望をお聞かせください。
これからの公務員には、今まで以上に多角的な知識の習得と経験の積み重ねによる高いレベルのサービスが求められています。
弊社は、そうした時代の流れを敏感に感じ取り、勇気をもって民間視点を入れていき、自治体が先進モデルになり、職員一人一人が生き生き働ける環境づくりを人材育成という観点からお手伝いしたいと考えております。
これからは行政も破綻するかもしれない時代の中「いかに生き残っていくか」を共に考え、「企業は人なり、行政も人なり」という思いで、研修を通してご協力できれば幸せです。
- 株式会社学宣
- 【本社】東京都新宿区高田馬場1-28-18
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- TEL:03-6205-5691(平日9:30-17:30)
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