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北朝鮮のシナリオ通り?朴大統領にも恩恵?韓国メディアが分析する砲撃の裏側  ニュースフィア 2015年8月27日

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 韓国と北朝鮮の軍事的な緊張状態が緩和に向かう見通しだ。

 8月20日、北朝鮮軍は、軍事境界線付近に設置された韓国のプロパカンダ放送用のスピーカーに対して砲撃。韓国側はこれに報復・砲撃を加え、全軍に警戒態勢を敷いた。同武力衝突を受け、翌日21日に北朝鮮は「準戦時状態」に突入することを宣言した。また、特殊部隊や、潜水艦戦力の70%を軍事境界線付近に配置。以後、朝鮮半島における軍事衝突の危機が高まり、国際社会が固唾を飲んで見守る膠着状態が続いていた。

 しかし、25日に入り事態が一気に好転する。軍事境界線に設置された板門店で行われていた南北高官会議が電撃的な合意に至り、軍事衝突の危機が回避されたのだ。

 同会議では、北朝鮮側が準戦時状態を解除すること、また韓国側が北朝鮮を非難するプロパカンダ放送をやめることで双方合意した。また、長らく緊張していた南北関係を改善するために、政府高官会議や赤十字実務者協議、民間交流などを早期に実現、活性化するなどの合意項目も含まれた。戦争の危機から一転、雨降って地固まる結果となったようだ。

◆「北朝鮮側のシナリオ通り」
 ただ韓国では、この一連の事態について「北朝鮮側が当初から描いていたシナリオではないか」というメディアの憶測が後を絶たない。

 実は北朝鮮は、20日に2度目の砲撃を加えたわずか38分後、対韓国関係の責任者であるキム・ヤンゴン労働党秘書の名義で、韓国キム・グァンジン国家保安室長に宛てて書簡を送っていた。

 韓国側が受け取った書簡には「拡声器を使った非難放送を即時中断すべし」と書かれていたが、同時に「現在の事態を収拾し、関係改善の道を模索する意思がある」とも記されていたという。その後、韓国側はホン・ヨンピョ統一部長官の名義で返信を送ろうとした。しかし、北朝鮮側は「キム・グァンジン国家保安室長の名義でなければ受け取らない」と、返信を突き返したという。

 韓国大手新聞社のひとつハンギョレ新聞は、この一幕について次のように分析している。
「北朝鮮側が対話を拒否したというよりも、安保問題と南北関係に意味のある対話をするため、韓国の安保最高責任者であるキム・グァンジン国家保安室長を交渉の席に着かせたかったのではないか」

 その後、双方で会議出席者のやりとりが続けられた後に、南北高官会議が実現。最終的に、韓国側からはキム・グァンジン国家保安室長とホン・ヨンピョ統一部長官が、北朝鮮側からはキム・ヤンゴン労働党秘書と、ファン・ビョンソ朝鮮人民軍総政治局長が出席し、ハードな交渉の末に合意にいたった。

 近年、中国との不仲が取り沙汰され、国際社会で孤立を深めている北朝鮮にとって、南北関係改善は外交的課題といえる。今回の一連の騒動は、韓国と対話の窓口を開いただけではなく、朝鮮半島がいまだに戦争状態にあるということを国際社会に知らしめる契機となった。ある意味、北朝鮮の“外交的勝利”と言っても過言ではない。そのため、韓国では「当初から描かれたシナリオだったのでは」という憶測が飛び交っている訳である。

◆朴槿恵政権にもメリット
 ちなみに軍事的緊張状態を高めて有利な立場で交渉を進める外交戦略は、北朝鮮にとって珍しいものではない。あまり日本では報じられていないが、北朝鮮は以前にも7度ほど「準戦時状態」を宣告している。よく“瀬戸際外交”などと揶揄されるが、北朝鮮にとってはあくまでも“正当な外交手法”のひとつなのだ。

 しかも、今回の騒動で恩恵を受けたのは北朝鮮だけではない。武力衝突および高官会議の期間中、韓国の朴槿恵大統領の支持率が3ヶ月ぶりに40%台まで回復した。MERS(中東呼吸器症候群)への対策などから支持率が低迷していた同政権にとっては、まさに渡りに船である。

 朴槿恵大統領は、南北統一に向けて過去に幾度となく前向きな発言している。しかし、セウォル号事件やMERS騒動で支持率が落ち込む一方だったため、国内の経済政策などを優先せざるを得ない状況に追い込まれていた。そこにきて今回の事態である。北朝鮮の意図がどこにあったかは定かではないが、朴槿恵大統領にとっては南北統一問題を国民に問うための追い風を得たことになる。

◆もっとも近くて遠い隣国
 韓国と北朝鮮は、分断からすでに70年が経過している。民族的にも同一で、もっとも近くにある国家であるが、冷戦の影響や、米中など大国の意向に振り回されてきたため、両国の政治家や国民が直接コミュニケーションを取る機会は非常に限られてきた。いつしか、軍事的緊張やそれを解消するための会議が、両国の重要な接点となった。

 砲撃を通じた北朝鮮側のラブコール。韓国メディアの憶測にならうのであれば、今回の一連の事態をそう理解することも決して的外れではないのかもしれない。

提供:ニュースフィア

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