【海外】アメリカの台湾影響力、対中配慮で弱体化か? 台湾関係法35周年迎え、米機関が憂慮 ニュースフィア 2014年5月19日
アメリカの台湾関係法が今年で35週年を迎えた。アジア太平洋における情勢が緊迫化する中、台湾とアメリカの関係は今後どのような進展をみせるのか。
台湾関係法(TRA)とは
台湾関係法成立の背景には、1979年にアメリカが中国との国交を樹立し、台湾との国交を断絶したことにある。戦略的観点からその後も台湾を防衛する必要のあったアメリカは、米台の友好関係を維持・推進していく目的で、当時のジミー・カーター大統領が法案に署名し、法制化が実現した。
同法は、台湾の未来を平和的手段以外で決定しようとすることは、西太平洋の平和と安全を乱す要因と見なし、アメリカにとっての重大な懸念となる、としている。その上で、アメリカの台湾への武器提供や、台湾の安全を脅かす勢力に対する軍事的圧力の行使を正当化するものとなっている。
TRAの意義と評価
ニュースサイト『ディプロマット』は、「米台関係の未来」と題する記事を掲載し、台湾関係法の意義を高く評価している。アメリカとの経済的、政治的、文化的関係がなければ、「台湾はいまだに苛政に苦しむ人民にとって希望もない一党独裁であったかもしれない」とし、さらに、現在のアジア太平洋地域の緊張状態を考えたときに、同法の重要性はかつてないほど高まっている、としている。
中国の過激なまでの領土権主張によって東シナ海、南シナ海地域の情勢は極めて不安定になっている。アメリカが同地域でのアジア諸国との連携を強化する中、同法が存在するが故に台湾も地域の安定戦略の一部を担っていることを自覚できると、同記事は述べている。
アメリカと足並みを揃えて地域の安全に貢献することが、過去35年に渡り台湾の安全と繁栄を守ってきたアメリカへの感謝の証となる、と同記事は論じる。また台湾は、アメリカのパートナーとして相応しくあることを常に念頭において戦略を練らなければならない、とした。その上で、台湾が前進するための方法として下記の点を挙げている。
1. 防衛への投資増加
2. 研究開発への投資増加
3. 自国の潜水艦計画
4. 情報セキュリティーの強化
5. 戦略的優先事項の定義
6. 南シナ海の問題
7. 経済の多様化
アメリカによる台湾への武器輸出
タイペイ・タイムズ紙では、米共和党のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)が発表した論文を紹介している。オバマ政権下で台湾への武器輸出が決まったことにより、アメリカの対中政策が重要なカギとなる。AEIマッツァ研究員は、「ワシントンは中国に配慮し、台湾への協力を最低限にするだろう」と予測している。
米台が目標とするのは、自衛的また対中の軍事的抑止力となる部隊の設置だが、アメリカは台湾が要望する戦略、武器においても同意していない。「資源と人的資源の制約や米台間の防衛連携における欠陥を考慮すると、台湾が要望する高度な技術を持つ、革新的でハイテクな部隊の設立は疑わしい」と述べる。
馬大統領は自国の強い防衛力を維持することを訴え続けてきたが、両岸関係における政策はその主張に矛盾している。マッツァ研究員は、台中関係が順調であると、自らの政策の成功を宣伝することにより、強力な軍事抑止力を保持する理由の根拠を弱めてしまう可能性がある、と指摘している。