【政治】日本の核物質削減、象徴以上の意味はあるのか? 海外紙は右翼政治家の「軍事抑止力」評価を警戒 ニュースフィア 2014年3月26日
24日、オランダ・ハーグで開催された核安全保障サミットで、日本・イタリア・ベルギーが、アメリカへの核物質引き渡しに合意した。日本が引き渡すのは兵器級プルトニウム700ポンド(320kg)、および高濃縮ウラン450ポンド(200kg)と推定されている。米当局者らは、2009年以来各国の核物質備蓄削減を進めてきたオバマ大統領にとって、過去最大の成果と歓迎している。
増大する備蓄量
しかし、これらの核物質は、日本の保有量のごく一部に過ぎないと報じられている。日本は現在、原発の使用済み核燃料を再処理することでこれらの核物質を得ており、秋には毎年何トンをも生産できる新施設(青森県・六ヶ所再処理工場)も完成する。
福島第一原発事故以来、国内の原発は停止しており、備蓄は増大し続けている。中国は、核兵器転用を意図していると非難し、平和目的の核開発を主張するイランも、イランを制裁して日本を放置するのはダブルスタンダードだと主張する。
銀行よりセキュリティの甘い核物質の管理
各国の核物質貯蔵施設には、保安管理の貧弱なところもあると指摘されている。日本についても、ニューヨーク・タイムズ紙は、1990年代初めに茨城県東海村の貯蔵施設を同紙記者が訪問した際、「非武装の警備員や、大抵の銀行ほどの保安措置もない現場を目撃した」と指摘している。
ガーディアン紙も、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥・事務局長が昨年、核物質の窃盗が毎年平均100件報告されていると述べたことに触れている。
オバマ大統領はこうした状況を憂慮し、核物質の廃棄またはアメリカへの引き渡しを求めてきたとされる。したがって各紙は、日本が備蓄のごく一部でも明け渡したという象徴的意義以外に、それらの物質がアメリカに送られ、もっとマシな管理体制下に置かれるという実際的意義もある、との評価だ。
前途多難な核削減努力
とはいえ、オバマ大統領にとって、前途多難な状況だ。まず各紙とも、日本は非核主義を堅持し、兵器転用意図があるとの中国の非難も断固否定しているのに、石破自民党幹事長ら右翼政治家は、まさにこうした核物質の軍事的抑止力を買っている、と指摘する。
核安全保障サミットは2010年以来隔年開催され、今回で3回目になる。ガーディアン紙は、本来2013年までにこうした核備蓄廃棄は完了予定だったと指摘する。なお、過去すでに合意が成立していたのはウクライナなど10ヶ国、今回のサミット参加国は53ヶ国である。締め切りは2016年の次回サミット開催予告とともに延長された、と同紙は報じている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、もしウクライナがいまだにソ連時代の核兵器や核物質を保有していたら、現在のウクライナ危機はさらに危険なものになっていたと指摘する。一方、まさにそのウクライナ危機をはじめ、最近の米露関係悪化による核軍縮の頓挫を懸念する。それどころか当の米議会自体、過去に包括的核実験禁止条約を否決するなど、必ずしも核軍縮・不拡散に前向きではないのだ。