【社会】STAP論文撤回か? 「再現できない」海外研究者から相次ぐ疑問 NewSphere(ニュースフィア) 2014年3月17日
理化学研究所(理研)が科学誌『ネイチャー』に発表したSTAP細胞の論文に、海外の研究者達から「実験が再現できない」という声が相次いでいる。
加えて、論文中の画像や文章に、使い回しや無断引用の疑惑が持たれていることから、理研および共同研究者内でも論文を撤回する検討がされていた。理研は14日に中間報告を行い、不正行為はなかったとしている。現時点では著者間で取り下げの検討が検討されていることも明らかにされた、朝日新聞などは、リーダーの小保方晴子氏も論文撤回に同意したとの発言が理研の関係者から得られたと報じている。
論文は、体内の様々な細胞に分化できる「万能細胞」が、マウスの細胞を弱酸性溶液内で刺激するだけで生成できる、というものだった。従来の技術より革命的に簡単な方法で、短期間で安全にできることから、発表当初は「再生医療に大きな進歩」と期待された。
米紙が報じる”5つの疑惑”
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「論文撤回を検討するに至った5つの疑惑」と題し、一連の疑惑を報じている。
1)それぞれ別の実験結果とされる2枚の胎盤画像が酷似
2)ある画像が、2011年に小保方氏が書いた博士論文中の別の実験画像と酷似
3)ある文章に、2005年にドイツの研究者が発表した論文からの無断引用の疑い
4)早大大学院に提出した博士論文の一部が、米国立衛生研究所によるサイトの文章と酷似している
5)理研が3月5日に発表した実験手技の追加解説が、元の論文と矛盾する
これらの疑惑は、『PubPeer』(科学者達が世界の論文を検証・議論するソーシャルメディア)等から寄せられたものだという。
実験が再現できない
世界の科学者達にとっては、画像や文章の転用よりも不服なことがある。論文をもとに、多くの研究者が実験の再現を試みたが、いまだ成功の声があがっていないという。
香港中文大学のケネス・リー教授もそのひとりである。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、同氏は論文を読んで衝撃を受け、直ちにその再現に挑戦。6人の研究員達に、今やっている仕事の手を止めSTAP細胞の再現に取りかかるよう指示したそうだ。
しかしリー教授の実験がうまくいくことはなかった。同様の声が世界中からあがったことから、理研は3月5日、実験手法の追加解説を発表。リー教授はそれを参考に、マウスの心臓、筋肉、結合組織から人間の臍帯にいたるまであらゆる細胞を用い再挑戦したが、いずれもやはり失敗だったという。
意見が分かれる共同研究者達
小保方氏は撤回に同意したと報じられたが、『ネイチャー』では、論文の撤回はすべての著者の同意が原則とのことである。LAタイムズ紙によると、共同研究者である山梨大の若山照彦教授は論文撤回を提唱しているが、同じく共同研究者である米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授は「撤回の必用はない」との主張であるという。
ちなみにLAタイムズ紙は、小保方氏を「一夜にしてスターとなった”rikejo”の象徴」と表現している。「理系女子」の略である「リケジョ」という言葉が、米紙に紹介されるほど旋風を巻き起こした論文だっただけに、海外メディアも今後の動向に注目している。