【経済】大企業昇給でも、“焼け石に水”? 消費増税控え、海外紙は景気改善に懐疑的 NewSphere(ニュースフィア) 2014年3月14日
12日、主要企業各社が春闘の回答を発表した。トヨタ自動車が月4000円の平均ベア要求に対し2700円(0.8%相当。他にボーナス6.8ヶ月)、日立製作所が同じく4000円要求に対し2000円、王将フードサービスが要求より多い1万円など、世界金融危機またはそれ以前ぶりに基本給の賃上げが実現したと報じられている。金属労協の西原浩一郎議長は、「結果は我々の要求すべてを満たしてはいませんが、デフレと戦い、経済成長をもたらすところに向けて、一定の前進であります」と声明した。
しかし海外各紙は、これが経済改善につながることには懐疑的であり、安倍政権にはまだまだ課題があると断じている。
官製春闘
ボーナスや残業代と違い、後から下げにくい基本給の賃上げには、従来各社とも消極的であった。賃上げの背景には円安政策による輸出業者の好調や、政権からの強い要請があったと指摘されている。フィナンシャル・タイムズ紙は甘利経財相が「政府は法人減税を前倒しして企業にリソースを与えてあるはずです」として、増益にも関わらず経済改善に協力しない企業に制裁を示唆したことを報じた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、企業寄りである自民党政権としては、賃上げの働きかけは驚くべきことだと評している。
手ぬるい日本の労組
しかし日銀は2%のインフレ目標を掲げており、4月には消費税も5%から8%に上がる。そのため、この程度の昇給では労働者の購買力は改善しないと指摘されている。たとえ組合側の要求が満額回答されていたとしてもである。
ブルームバーグは、デフレ時代に慣れ過ぎた日本の労組は、雇用保障を重視するあまり要求が手ぬる過ぎるとの論調だ。厚生労働省によると、1974年のピークに11575件あったストは、2012年にはわずか90件であった。これに対し韓国の現代自動車労組などは、1987年の結成以来、4年を除いて毎年ストライキを行っている。今年は9月にベア5.1%で妥結して、130万台以上の生産と約16兆ウォンが失われたとされる3週間のストを終えた。ムン・ヨンムン元委員長は「少なくとも4回逮捕され、労働者が警察との衝突で金属パイプや火炎瓶を使用したとして1990年代に解雇された」という。
同紙は、労働者が会社を家族と思っていても、製造業の雇用は1992年の1570万人でピークに達し、昨年は1040万人にまで落ち込んでいると、片想いを指摘する。
円安でかえって苦しむ中小企業
しかし大企業の組合労働者は実際にはすでに年功による自動昇給がかかっており、トヨタなどはそれを計算に入れれば実質2.9%の賃上げだと、ウォール紙は指摘する。それに対し、本当に救われないのは円安による原料高騰などでかえって痛手を受けた中小企業の従業員や、組合も雇用保障も福利厚生もない、元々低賃金な非正規労働者なのだという。中小企業従業員は日本の労働力の多数派であり、非正規労働者も労働力の40%に達している。
同紙は茨城県日立市を舞台に、比較的恵まれた日立製作所、原発停止による需要減のあおりまで受けて賃上げどころではない中小の下請け企業、どこかで昇給がされても将来不安のため貯金に回ると思われ売上増を期待できない個人商店主、という対比を描写している。