【政治】TPP交渉、日本が譲歩を示唆? 日米の駆け引きに海外メディア注目 NewSphere(ニュースフィア) 2014年2月20日
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の妥結に向けて、日米事務レベルの関税協議が始まった。日米の交渉の行方が、TPPの成否の鍵を握るとして、海外メディアが注目している。
TPP交渉の現状
TPPは、輸入品に対する関税の撤廃あるいは削減と、知的財産分野や、国有企業の優遇策廃止などのルール作りを通じ、経済活発化をねらう協定だ。2013年12月の閣僚会合では、米国が日本や新興国に対して強い姿勢を崩さず、協定妥結には至らなかった。
日米の主張と譲歩
日米交渉で障害となっているのが、農産物の「重要5項目」と、工業品関税だと、多くのメディアは報道している。日本は、農産物の「重要5項目」である、コメ、牛・豚肉、乳製品、小麦、砂糖を「聖域」と位置づけ、現在の関税率を維持したいとしている。一方、米国は、自動車業界への配慮から、日本の乗用車に2.5%、トラックに25%の関税をかけており、こうした工業品の関税を維持しようとしている。
TPP交渉に先立ち、日本の甘利TPP相とフロマン米通商代表部代表がワシントンで会談したが、妥協点を見いだすことはできなかった。
しかし、その後の記者会見で、甘利TPP相が、「何一つ変更しなければ、決して交渉は前進しない。関税を現状のまま維持しようとは、だれも考えていないと思う」と発言。重要5項目(586品目)の関税引き下げ、あるいは撤廃もありうるという考えを示した。これに対し、ロイターや中国国営新華社通信は、日本が譲歩するのではないかと報道している。
日米のお家事情
日米両国とも、譲歩を困難にする国内事情を抱えている。安倍政権は、超金融緩和政策、財政政策、成長戦略(構造改革と規制緩和)を3本柱に掲げ、日本経済再建を目指している。しかし、自民党の支持基盤であり政治的圧力をもつ農業団体が、譲歩に反対している。ロイターは、成長戦略は時間をかけて行う必要がある、という菅官房長官のコメントを掲載し、時間がかかるのではないかと示唆している。
一方オバマ大統領は、大統領に強い権限を与えるとされる「貿易促進権限」の承認を得て、TPP交渉やEUとの貿易交渉を迅速に進めたい考えだが、与党民主党党員からも、反対されている。承認を得るためにも、大きな譲歩はできない模様だ。
自動車市場開放も交渉の鍵
農産物の「重要5項目」と、工業品関税が注目される中、AP通信は、「アメリカの自動車や農産物などにとって、日本との間で力強い成果を得ることが引き続き重要だ」というフロマン米通商代表部代表のコメントを掲載。米国が日本に要求している自動車市場の開放(安全基準など非関税障壁の緩和)が、交渉の鍵になるという見解を示している。
いずれの分野でも、閣僚会合の前に行われる首席交渉官会合で、日米間で落とし所がみつかれば、妥結への道筋が見えてくる、と多くのメディアが報じている。閣僚会合は、2月22日から日米の他、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、シンガポールの12ヶ国が参加して行われる。