【早大マニフェスト研究所連載/週刊 地方議員】
第24回 議会改革が進まない理由 (2013/4/25 早大マニフェスト研究所)
ご好評いただいている「早稲田大学マニフェスト研究所」連載。今週は各地の議会改革や独特の取り組みなどをご紹介する「週刊 地方議員」をお送りいたします。今回は、議会改革を進める上での自己改革の大切さを指摘する「議会改革が進まない理由」をご紹介いたします。
◇ ◇ ◇
なぜ議会改革が進まないのか
地方議員から「うちの議会は議会改革が進みません」という意見をよく聞きますが、その理由を多い順に並べると次の通りとなります。
- ほかの議員の改革意識が希薄
- ベテラン議員の改革意識が希薄
- 首長の与党派議員の改革意識が希薄
- 改革を望まない保守的な土地柄
- 議会内で話がまとまらない
- 予算が伴わない
- 住民は「支持者の意見を吸い上げるのが議員や会派の仕事」だと思っている
- 議会事務局が改革を望んでいない
- 首長が、議会が力をつけることや議会改革を好ましく思っていない
- 総論賛成、各論反対でなかなか賛同が得られない
ここまで並びますと、すでにお気づきの方がいらっしゃるかと思います。そうなのです。議会改革ができない理由は「自分の外にある」と考えられている議員が非常に多いのです。「他の議員が……」「首長が……」「予算が……」などです。見方を変えれば「自分は頑張っているのだが、他の議員が……」とか「自分はやっているのだが、事務局が……」のようにほかに責任があるという考え方、これを“他責文化”と呼んでいます。
議会改革は自己改革
当研究所が行っている議会改革は“自責文化”に立ち位置を置いた改革です。例えば、前述の議会改革ができない理由を考える際には次のようになります。「他の議員の改革意識が希薄なのは、自分の“巻き込み力”が乏しいから」「ベテラン議員の改革意識が希薄なのは、自分の“説得力”が乏しいから」「議会内で話がまとまらないのは、自分に話し合いの技術が足りないから」などです。
自分のことをさておいて、改革が進まない理由を他に置くことはとても楽です。しかし、それではいつまでたっても“変化を起こす”ことはできないでしょう。「どうせできない」「相手が悪い」と考える自分の内にこそ課題があり、この意識こそが改革ができない最大の要因であると考えています。
意見の異なる議員と話をしようとしても、「どうせあの人に言っても○○だから」と勝手に自分で結論を作り出している間は、いつまでたっても話し合いはできないでしょう。「どうすればあの人に理解してもらえるだろうか」という立ち位置に変わり、自らの姿勢や行動が変化して初めて現状が変わっていくのです。議会改革など本当は面倒くさいので、多くの議員がやりたくないのが本音でしょう。
しかし、住民に信頼される議会として、現状を変えなければならないことがあるのなら、それをどのようにすれば変化させることができるのかを考え、その変化を起こすために自分はどうすればよいかという順で考えていくと、適した行動が取れるのではないでしょうか。議会という、民主主義を具現化する崇高な組織へと昇華させるためには、自分のプライド保持は時には小さなことかもしれません。
- ■早大マニフェスト研究所とは
- 早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
- 週刊 地方議員
- 第23回 会派マニフェスト作成を通して政策形成能力を向上~三沢市議会会派「みさわ未来」の取り組み~
- 第22回 議員の仕事から議員定数と報酬を考える~公開セミナー開催~
- 第21回 動き出した議会事務局~いわて議会事務局研究会発足~
- 早大マニフェスト研究所 連載記事一覧