第2回 日本版IRの課題-後編-真山仁氏「カジノと地方創生」  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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政経セミナー「専門家の目線で、政治・経済がわかる!」

第2回 日本版IRの課題-後編-真山仁氏「カジノと地方創生」 (2017/11/8 パシフィック・アライアンス総研株式会社)

関連ワード : カジノ 地方創生 

 2017年8月30日(水)、『90分で分かる政経セミナー(第2回)』が開催されました。第2回となる本セミナーの講演テーマは「日本版IR(カジノを含む統合リゾート)の課題」で、講演者は大ヒット小説「ハゲタカ」シリーズの小説家・真山仁氏、モデレーターは渡瀬裕哉氏(パシフィック・アライアンス総研所長)です。

 本セミナーでは真山氏から「日本版IR(カジノを含む統合リゾート)の課題」についてお話しいただきました。配信記事の後編では、真山氏とモデレーターの渡瀬氏、セミナー参加者との質疑応答をお届けいたします。

関連記事:第2回 日本版IRの課題-前編-小説家・真山仁講演「カジノはバラ色か」

講演者の真山氏(右)とモデレーターの渡瀬氏(左)

講演者の真山氏(右)とモデレーターの渡瀬氏(左)

1.先日マカオに行って、中国人の社会を作る力は、日本とは次元が違うと思った。そのため、日本でカジノを作ることと中国でカジノを作ることは話が違うことだと思うが、どうか?(渡瀬所長)

 おっしゃるとおりです。おそらく世界で“Greed is good”が通用するのは、アメリカ、フランスと中国だけだと思います。中国人の見た目は日本人と似ているところがあります。だけど、日本人はカジノに24時間もいたらシンドイなって思う人が多いと思いますが、中国人は勝っても負けても元気になっていきます。間違いなく、欲望が国の推進力になっています。

2.地方にカジノを誘致すること自体が博打に思うが、どうか?(渡瀬所長)

 地方創生という言葉はきれいですが、地方創生の「創」の意味はクリエイティブです。では、どうやってクリエイティブするのか。小説の中で、ある登場人物が「それぞれの街にはそれぞれの街の良いところがあって、個性がある。この個性を磨いていけば、地方創生できるじゃないですか」と言いますが、日本の都市の半分以上は、本当に何もないところがたくさんあります。そういう何もないところに「個性を磨けば地方創生できる」はたぶん通用しないので、カジノでも何でも目新しければ人が来るという考え方から誘致に動くのではないかと思います。

3.「もっとこうしたら地方創生ができるのでは?」というアイデアはあるか?(渡瀬所長)

 例えば、70歳以上の高齢者をすすんで受け入れて、その代わり、高齢者が介護に支払うお金を受け取るようにするとよいのではないか。地方は、長い間、高齢化が進む中で地域形成をしてきたので、経験と体力がついてきています。今、地方の高齢者は特別老人ホームなどで十分対応できるようになってきていて、地方の高齢者の問題はほぼ終わったと言われています。

 これに対して、これから問題が起きるのは東京などの都市部です。最大の問題は、ニュータウンなど団塊の世代がたくさんいるエリアです。ここの高齢者については、移民を受け入れない限り、面倒を見きれなくなります。そういう時に一番頼りになるのは、経験値を持っている地方の人たちです。ですから地方が高齢者を受け入れることで収入が得られるようにすれば(ビジネス・経済が)回るのではないかと思います。

4.地方の市町村は税収が足りず公共サービスが維持できないが、どうすればいいか?(会場参加者)

 ガッカリな答えになると思いますが、たとえ市町村が潰れても地方交付税交付金は出さない方がいい。もう自分たちで生きなさいよと言うべきで、もらって当然という発想を地方はそろそろやめましょう。例えば、年収1,000万円の人がクビになって、年収500万円の会社に転職したら、その家族は年収1,000万円の生活をしますか。しませんよね。いろいろ始末をして年収500万円の生活をするでしょう。日本の財政についてもそれを一度模索しないといけないのかなと思っています。

 そのうえで、一つ提案としてあるのは、何でもお金を対価とするサービスというは止めましょうということです。「こないだこれをしてもらったから、その代わりに私はお宅に薪を作ってあげますね」というように、そこにいる人たちが助け合うことで多くのことが足りるのではないか。これが日本社会の原点だったと思うので、そこに還ってお金を介さない仕組みを構築するとよいのではないかと思います。

5.カジノによって堕落した人間が生まれてしまうことはどう思うか?(会場参加者)

 カジノは儲けようとしたら失敗します。捨ててもいいお金がある人しかできない遊びですね。堂々と「自己責任です。失敗して、破滅してしまう人もいるけど、よかったらどうぞ」って言えばいいと思います。なのに、「日本のカジノはメンタルケアに対応します」とか言っています。これはよくない。メンタルケアが必要な人が出ることを認めているのに、それを隠してポジティブにすり替えています。

 今の日本はこうした“言葉遊び”が多過ぎです。例えば「女性活躍」という言葉は女性に優しいように思われますが、女性が働かないと生活ができないという事実を隠しています。こうした言葉遊びでごまかさず、カジノで人生破滅するかもしれないけれど楽しいよというスタンスでPRをして、分かっている人がカジノで遊ぶのだったらいいと思います。

セミナーの模様

『90分で分かる政経セミナー(第2回)』
テーマ「日本版IR(カジノを含む統合リゾート)の課題」

講演者:真山 仁
小説家。1962年大阪府生まれ。新聞記者、フリーライターを経て2004年『ハゲタカ』でデビュー。2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカⅡ』を原作とするNHK土曜ドラマが放映され話題になる。2016年には『売国』がテレビ東京でドラマ化された。
「ハゲタカ」シリーズのほか、日本の食と農業に斬り込んだ『黙示』、日本最強の当選請負人が主人公、選挙の裏側にスポットを当てた『当確師』、被災地の小学校を舞台にした連作短編集『そして、星の輝く夜がくる』『海は見えるか』、カジノと地方再生をテーマにした『バラ色の未来』。など著書多数。幅広い社会問題を現代に問う小説を発表している。最新刊は、『売国』に続く東京地検特捜部の冨永検事シリーズ『標的』(文藝春秋、2017年6月刊)。
モデレーター:渡瀬 裕哉
パシフィック・アライアンス総研所長、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、Tokyo Tea Party 事務局長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。1981年生まれ。東国原英夫氏など自治体の首長・議会選挙の政策立案・政治活動のプランニングにも関わる。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACの日本人初の来賓。その知見を活かして、日米の政治についての分析を発信している。

 

<『Japan-US Innovation Summit 2017』のご案内>
2017年11月17日(金)、パシフィック・アライアンス総研株式会社と全米税制改革協議会の共催となる『Japan-US Innovation Summit 2017』が、TKPガーデンシティ竹橋ホールで開催されます。本フォーラムは、日米間で初めて開催される、日米の政治関係者・有識者らによる自由主義・保守主義の連帯に関するフォーラムです。日本側はテレビ・新聞などでお馴染みの新進気鋭の国会議員と大学研究者らが参加し、米国側はトランプ政権下最大の共和党系圧力団体とシンクタンクのメンバーらが参加し、パネルディスカッションを行います。普段、日本では見聞きすることができない経済政策のあり方等について学ぶことができますので、この機会を逃さず、ぜひともご参加いただければ幸いです。
「Japan-US Innovation Summit 2017」開催のお知らせ

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