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第1回 緊急報告・トランプ政権の危機-後編- 質疑応答「北朝鮮やISISとどう向き合うか」 (2017/8/2 パシフィック・アライアンス総研株式会社)
2017年6月26日(月)、『90分で分かる政経セミナー(第1回)』が開催されました。第1回となる本セミナーの講演テーマは「緊急報告・トランプ政権の危機」で、講演者は渡瀬裕哉氏(パシフィック・アライアンス総研=PAI=所長)、モデレーターは古賀尚文氏(共同ピーアール代表取締役会長)になります。
本セミナーでは渡瀬氏から「緊急報告・トランプ政権の危機」についてお話いただきました。配信記事の後編では、渡瀬氏とセミナー参加者との質疑応答をお届けいたします。
関連記事:第1回 緊急報告・トランプ政権の危機-前編- 渡瀬裕哉PAI所長講演
1.北朝鮮問題に対するトランプ政権の方針は?(会場参加者)
北朝鮮に対してトランプ政権が攻撃するか否かは、朝鮮半島沖に派遣されている空母数で判断することが可能です。米国はイラク戦争の時でも空母6隻を動員しています。したがって、北朝鮮に対して米国が直ぐに軍事行動を起こすつもりがないことは明らかです。ただし、朝鮮半島近辺での同盟国との共同軍事演習の活発化など、北朝鮮へのプレッシャーを高めていることは確かです。
2.北朝鮮で拘束されていた米国人の死亡が確認されたが、これで局面が変わるのか?(古賀氏)
米国は人権問題に非常に過敏であるため、このような出来事によって局面が変わる可能性はあります。北朝鮮に拘束されている米国人は他にも存在しており、それらの方々も同じ状況になるようなことがあれば、米国内で世論が盛り上がることがあるかもしれません。
3.来年の中間選挙に向けて、トランプ政権はどのような対策を取るのか?(会場参加者)
下院はかなり厳しいものと思いますが、上院の改選州はオバマ政権下で大勝した年の入り替わりであり、トランプ氏が昨年の大統領選挙で勝利した州になります。したがって、中間選挙の世論調査上、共和党は民主党に対して苦しい結果になっていますが、支持率の数字を何とかイーブンまで持っていくことが重要です。そのため、共和党は、来年の選挙に向けて、米国人が反応しやすい大規模な減税政策を実現すること、そして、上院の改選選挙区は製造業が主な産業であることを考慮して、貿易問題にあたり、日中欧NAFTA諸国に対して、強い発言を続けることになります。
4.日本は、北朝鮮情勢に対して、周辺国の状況も変化も踏まえて、どのように対応するべきか?(古賀氏)
北朝鮮問題については、トランプ政権は中国に対応させることを考えています。しかし、中国は一枚岩の状況ではなく、現状では習近平氏に全ての権力が集中しているわけではありません。特に中国東北部と北朝鮮に対しては習近平派と対立関係にある江沢民派の張徳江氏の影響力が強い状況にあります。トランプ大統領は習近平氏に“張っている状態”であり、習近平氏が党大会後に権力集約することを見越して接近しているものと思われます。日本は、人権問題に関心が高い共和党保守派の人々と連携し、拉致問題を含めた人権問題をクローズアップして外交上のプレゼンスを高めておくべきだと思います。
5.シリア・イラクのISIS(Islamic State of Iraq and Syria)の弱体化以後の展開はどうなるのか?(会場参加者)
ISISはイラク・シリアから年内にほぼ消えていくことになるものと思われます。しかし、イラク・シリアからISISが消滅するということは、テロリストが世界中に拡散していくことを意味しています。つまり、グローバルジハードへの移行は必然的なことですから、トランプ政権の入国禁止の大統領令は元々この状況を見据えたものです。また、イランに対しても非常に厳しい対応をしていくことになります。共和党はイランに敵対心が強く、イエメンやレバノンなどイランが支援しているネットワークとの対立が進んでいくことになります。トランプ政権の国防・安全保障戦略は数か月後の展開を予測して行っているものと理解すべきで、何かが起きた際に目の前のことだけを見ておかしいと判断するべきではありません。
6.原油価格についてはどのように考えているのか?(会場参加者)
共和党はイランに対して厳しいスタンスを取っており、再制裁をできるタイミングを狙っています。現在、OPECやロシアなどが減産に向けて合意していますが、必ずしも足並みが揃っている状況ではありません。共和党保守派の支持基盤にはシェール事業者が存在しており、エネルギー価格の上昇は彼らの利益にもなります。原油価格については原則として安くなる土壌はあるものの、政治的な状況としては高くなる可能性もあります。原油価格が高くなることでエネルギー消費国である中国との緊張が生まれる状況も想定されますが、共和党の2016年のマニフェストでは西海岸からエネルギー輸出施設を整備するという話もあり、米国と中国・日本などのエネルギー関係も構築されていくことになるものと推測されます。
- 講演者:渡瀬 裕哉
- パシフィック・アライアンス総研所長、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
[略歴]
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。1981年生まれ。東国原英夫氏など自治体の首長・議会選挙の政策立案・政治活動のプランニングにも関わる。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することから Tokyo Tea Party を創設。全米の保守派指導者が集う FREEPAC の日本人初の来賓。その知見を活かして、日米の政治についての分析を発信している。著書に「トランプの黒幕」(祥伝社)。
- モデレーター:古賀 尚文
- 共同ピーアール株式会社取締役会長、学校法人十文字学園評議員・理事、公益財団法人柔道整復師研修財団理事、一般社団法人地域活性化センター評議員
[略歴]
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1947年東京都生まれ。一般社団法人共同通信社入社し、社会部配属、警視庁キャップ、社会部部長を経て、株式会社共同通信社社長相談役を歴任。2016年より現職。幅広い政財界、報道機関とネットワークを活かして、パブリックアフェーズを担当している。
<『90分で分かる政経セミナー(第2回)』のご案内>
2017年8月30日(水)、『90分で分かる政経セミナー(第2回)』が開催されます。第2回となる本セミナーの講演テーマは「日本版IR(カジノを含む統合リゾート)の課題」で、講演者は大ヒット小説「ハゲタカ」シリーズの真山仁氏(小説家)、モデレーターは渡瀬裕哉氏(パシフィック・アライアンス総研=PAI=所長)になります。この機会を逃さず、ぜひとも真山氏の貴重なお話をお聞きいただければ幸いです。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000024988.html
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