【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第103回 次世代のために私たちができること (2014/9/17 千葉県鎌ケ谷市議会議員 松沢たけひと氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第103回は、千葉県鎌ケ谷市議会議員の松沢たけひと氏による「次世代のために私たちができること」をお届けします。
◇ ◇ ◇
鎌ケ谷市は千葉県の北西部にあり、船橋市、松戸市、市川市、柏市に囲まれた総面積約21平方キロメートル、人口約11万人の都市である。市内には東武野田線・新京成電鉄・北総鉄道・成田スカイアクセスの鉄道4線の交通網があり、都心から25キロメートル圏内にあることから、首都圏の住宅都市として発展してきた。また、住宅都市として発展しながらも、豊かな農地や緑の環境をもち、梨の産地としても有名である。梨畑に囲まれた北海道日本ハムファイターズのファーム球場はメディアでも取り上げられ、観光の名所となっている。
鎌ケ谷市は市域が小さく、大規模な面積を必要とする工業団地等もない。また、首都圏の住宅都市として発展してきたため、法人市民税や固定資産税が少ない傾向にある。鎌ケ谷市の財政状況についてはリーマンショック後の経済危機状況に加え、交付金に頼らない独自の自治体運営を促す三位一体の改革により、2007年度決算では危機的な状況になった。厳しい財政状況から、2008年度予算においては事業の廃止や削減等、大幅な緊縮型予算編成を組むが、私を含む全議員による予算案否決という市議会始まって以来の異例の事態となった。しかし、人件費の抑制や事務事業の再編・整理・廃止等、行財政改革を行った結果、2008年度の決算においては、経常収支比率が4%下がり、翌年度以降の大幅な財政状況の改善のキッカケとなった。
現在の財政状況は、2012年度決算において経常収支比率89.9%となり、基金残額も市政施行以来、最高額となる約50億円を確保するような安定した財政状況を迎えている。その要因は市全体で身を切る改革をしたと同時に、地方交付税や臨時財政対策債が増加したことが挙げられる。臨時財政対策債は2007年度末に76億989万円であったのが、2014年度末に156億361万円にまで増加した。返済にかかる費用は後年の地方交付税に算入される性質をもっているが、国の不安定な財政運営のもと、市は依存財源に頼らない財政体質を構築する必要があり、次世代に安定した財政状況を引き渡すためにも臨時財政対策債の発行可能額の満額発行を抑制するなど、臨時財政対策債のあり方について考えていくべきである。
財政状況が落ち着いたとはいえ、老朽化していく公共施設の維持管理費の増加など、自治体の財政を揺るがす課題も全国で叫ばれるようになった。鎌ケ谷市においても保有する公有財産の将来展望について、サービスと負担という観点から世代を超えて議論をしていく必要がある。2008年3月議会一般質問において公共施設のあり方について取り上げて以来、計6回の公共施設関連の一般質問を行った。6年の間に再編計画の策定から実施に至ったが、更新費用を算出していないなど、不備な点も多く存在する。本格的な公共施設の老朽化を迎えるにあたって、財源をどう確保していくか、これからが重要であり、公共施設の長期的な維持管理費等、ライフサイクルコストを意識した総合的な管理・運営が必要である。今後は市域全体で公共施設の再配置や統廃合を含めて適正な施設総量について考えてまいりたい。
金額で示すことができる特別会計を含めた市の借金と多額の公共施設更新費用等、将来世代にのしかかる見えない負担をいかに軽減していくのか、いずれ高齢期を迎える現役世代・将来世代にとっても重要な課題である。将来にわたって鎌ケ谷市の財政を安定させるためには、人口流入を促進し、バランスのとれた年齢構成にすることが求められている。
鎌ケ谷市は交通網が整っていることや、近隣市と比較しても地価が安価であるといった地理的な優位性を生かしつつ、特に女性の働きやすい環境整備を行うことが必要と考え、妊娠・出産・子育て環境の整備に取り組んでまいりたい。しかし、どの事業も実施するには財源が必要であり、限りある財源を優先すべき事業に重点的に予算配分するには、まず、事業に投入されている税金の使い道を分かりやすく説明することが求められる。市民生活における一番身近な市政がより身近に感じられるための議会・議員活動であることを踏まえ、先送り型の対応ではなく20年・30年先の未来のための政策提言をしてまいりたい。
- 著者プロフィール
松沢 たけひと(まつざわ たけひと):1975年8月生まれ。39歳。中央学院大学法学部卒業。五月の節句のお祝いに飾る人形を製造直売しており、千葉県伝統的工芸品に指定されている。節句人形師の傍ら2007年4月の鎌ケ谷市議会議員選挙において初当選。現在2期目。
HP:鎌ケ谷市議会議員 松沢たけひとのホームページ
- LM推進地議連の連載コラム
- 第102回 「人口減少対策」に交流自治体連合で取り組む(長野県箕輪町議会議員 木村英雄氏)
- 第101回 地方議会から日本を元気に マニフェスト大賞とLM地議連~連載101回を迎えて 共同代表からのメッセージ~(斉藤直子 戸田市議、上村崇 京都府議、阿部善博 相模原市議)
- 第100回 『マニフェスト大賞』には歴史的な使命(ミッション)がある(横浜市会議員 黒川勝氏)
- ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM推進地議連)連載コラム一覧