【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第71回 議員活動の見える化と、議員版マニフェストの取り組み (2014/2/5 能代市議会議員 安岡明雄氏/LM推進地議連会員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。現在は、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を連載しています。第71回は、秋田県能代市議会議員の安岡明雄氏による「議員活動の見える化と、議員版マニフェストの取り組み」をお届けします。
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市の概要 バスケの街能代
能代市は、秋田県の北西部に位置し人口は約5万8000人(2013年12月末現在)、面積は426.74平方キロメートルです。2006年3月、母なる米代川で結ばれた能代市と二ツ井町が合併し、新たな能代市として歩んでいます。
世界遺産白神山地に連なる山々、日本五大松原の「風の松原」、夕陽を鮮やかに映し出す日本海など、豊かな自然を誇ります。
野球、バレーボール、体操と名選手を輩出したように、スポーツも盛んです。特に全国優勝58回を誇る能代工業高校バスケットボール部の名は、その名を全国にとどろかせ、市では「バスケの街づくり」を推進しています。毎年5月の連休に開催する能代カップには、全国からバスケファンが集まります。
また、日本一高い天然秋田杉(※)が象徴するように、かつて東洋一の規模を誇った木材産業とともに木都能代の名で知られています。
(※)参考:日本一高い天然秋田杉 NPO法人能代観光協会
議員の役割とは何か
地元紙の市民意向調査に、議会のあるいは議員についての設問があります。「よく分からない」「動きが見えない」の回答が多くなっています。おそらく全国どこでも同じではないか、と思います。
市民意向結果について、議会では、「われわれが市民の代表だ」とか、「しっかり審議しているからいいのだ」と言って、気に留めない議員がほとんどです。
議会の現状をみると、「議案のほとんどが首長提案で、99%現案可決といった追認機関ではないか」「首長与党と言ってはばからない会派の存在」など、2元代表制の一翼を担うといった、緊張感を持った当局との協調関係が希薄になっているのではないか。
これは、多様な民意の反映、さまざまな利害の調整、住民意見の集約とともに、政策形成プロセス全般への関与など、本来果たすべき議会のあるべき姿を、示していないから議会は「よく分からない」「必要なのか」と、言われてしまうのだと思います。
ただ単に賛成する追認議会からの脱却は当然であり、賛成するには、するなりの説明責任があります。納得できない、市民のためにならないものは、否決すべきです。
前例踏襲主義、類似団体比較に頼るのは、当局のみならず議会にもあります。それに沿った説明を聞き、安心します。「今までこうしてきた」「それでちゃんとやってきた」と言ったドミナント・ロジック(その場の空気)が支配してきたのです。
議員版マニフェストとの出会い
私の議員版マニフェストの取り組みは、早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員で青森中央学院大学佐藤淳先生の研修がきっかけでした。
執行権、予算提案権を持たない議員にマニフェストは書けるわけがない、と言われてきました。佐藤先生は、「議会には議決権、議案の提案権はある。多数派をつくれば条例を提案、制定できる。それによって首長に実行を迫れるのだ。書ける、書けないではなく、政治家としてまず書くべきだ」と説いたのです。
この研修から、私の取り組みが始まりました。マニフェストを作成し選挙で有権者へ告知する。そしてそのマニフェストを実行する。その実行した結果を検証する。この一連のマニフェストサイクルこそ「議員活動の見える化」であり、有権者に対する議員の責務ではないか、と考えています。
佐藤先生は「地方議員には首長のような執行権はないが、議員提案による政策実現は可能。マニフェストを掲げ、それを点検するようになれば議会全体のレベルアップにつながる」と述べています。
今後の取組み
2010年4月、3度目の当選以降、マニフェストに掲げた政策と活動方針に沿って行動しています。一般質問では、マニフェストに掲げる政策の質疑が基本です。政策の獲得目標に近づくよう、同じテーマで2度3度続けることもあります。常に、マニフェストを意識した活動をしているのです。
また、議会にはびこる前例踏襲主義というロジックを、改革する必要があります。そこで佐藤先生を能代に招き、全会派に呼びかけ議会改革研修会(議員有志の形で)を2012年7月から始めました。誰かがやってくれるだろう、では何も変わりません。自身が行動に移し共鳴者を増やす。市民のための改革に与党野党はないはずです。改革の成果を表すことが、今後の課題です。
今年4月の市議選に立候補しようという若者が、相談に来ています。マニフェストにのっとった選挙など、アドバイスしています。私が10年かかった経験値を短期間で身につけるよう、次の世代に伝えること。このようなマニフェスト普及も、私の大切な役割です。
- 著者プロフィール
- 安岡 明雄(やすおか あきお):1956年8月3日兵庫県美方郡浜坂町(現:新温泉町)生まれ。浜坂小学校、鳥取大学附属中学校、鳥取東高等学校卒業、結婚のため花園大学文学部中退し能代市民に。能代JC理事長、渟城第三小学校PTA会長、能代YEG会長等を経て、2003年能代市議会議員に初当選。06年合併後の能代市議会議員当選。通算3期目で会派「市民の声」会長。現在、能代市商店会連合理事長、県立能代工業高等学校・学校評議員、能代山本関税会会長を務める。職業(資)大丸保険センター代表、大丸不動産(株)取締役
Facebook:安岡 明雄
twitter:@aky560803
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