第43回 「みんなの想い」で地域公共交通をいきいきしたものに変えていくために~小林市「福祉バス」利用促進の取り組み  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ >  記事 >  連載・コラム >  早大マニ研 人材マネジメント部会 連載 >  第43回 「みんなの想い」で地域公共交通をいきいきしたものに変えていくために~小林市「福祉バス」利用促進の取り組み

【一歩前に踏み出す自治体職員~ありたい姿の実現を目指して~】

第43回 「みんなの想い」で地域公共交通をいきいきしたものに変えていくために~小林市「福祉バス」利用促進の取り組み (2018/8/9 宮崎県小林市市民生活部 生活環境課 資源リサイクルグループ主幹 能勢誠)

関連ワード : 交通 公務員 宮崎 小林市 福祉 

「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に自治体職員のリーダーを育成する実践的な研究会「早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会」受講生による連載コラム。研修で学び得たもの、意識改革や組織変化の実例などを綴っていただきます。

はじめに

 宮崎県小林市野尻地区をつなぐ「福祉バス」は、2000年9月30日、日用品の購入など日常生活の利便性を図ること、高齢者や障害者等の社会的孤立の解消、地域交流センターを活用した健康増進の3つを目的として運行を開始した。年末・年始と日曜日を除く週6日、6路線(1日2路線)を運行している。また、宮崎交通株式会社が運行していた高原野尻線の廃止により野尻小学校の牟田原・猿瀬地区の児童も朝の通学時においてこの福祉バスを利用することとなった。

 地域にとって重要な公共交通機関であるが、年々利用者数は減少している。そうした中で、議会や外部評価から、その利用促進について提言や問題提起がなされた。

 また、2017年3月に策定された「小林市地域公共交通網形成計画」でも「路線の統廃合も含めた見直しを図るとともに、他の公共交通機関との接続等利便性の向上を検討する」との方向性が示されている。

 そこで、福祉バス利用者の満足度と需要を把握し、調査結果を踏まえた各種交通機関の路線との関係性を踏まえたダイヤの変更や利用促進策の検討を行うため、バスに職員が乗車し、利用者に直接聞き取る調査を2017年7月に実施することとなった。

福祉バス

福祉バス(小林市ホームページより)

地域公共交通は住民の思いをくみ取ったものでなければならない

 調査を進める中で、週2回、1日2往復全て利用する88歳の女性との出会いがあった。

「どうしてこんなに利用されるんですか」
「京都にいる息子から福祉バスの日の前に『お母さん、明日は福祉バスの日だから、必ず利用して出かけてくださいね』と言われるんです」
「そうなんですね。息子さんはどういう思いでおっしゃってるのでしょうか」
「息子は『外出するのが健康の秘訣なのだから。外出ができなくなったら困るでしょう?だから、福祉バスに毎回乗ることがお母さんの仕事だよ。福祉バスを守るのがお母さんの役割だよ』と言うんです」

 その女性の最寄りの停留所は、地域の北端に位置した山あいの集落で高齢者が多く、交通手段として福祉バスは貴重である。女性の自宅から停留所までは徒歩で10分ほどかかる道を1日2往復される。

 その路線の利用者はとても多いとは言いがたく、採算面で評価されるとしたら、真っ先に廃止を余儀なくされる路線とされるであろう。

 確かに調査をする中で、利用者からいろんな要望やご指摘をいただき、改善すべき課題が洗い出された。また、職員が同乗して調査することで、気付く点もかなりあり、福祉バス事業のあり方について職員間の情報共有が図られた点は大きい。

 ただ、この話を聴いて、「地域公共交通はもっとこのような思いを汲み取ったサービスでなければならないのでは」と感じた。

 そのためにはどうすべきか模索する中で、ある人物との出会いを思い出した。

地域公共交通をよりよくするために

 2016年度に参加した人材マネジメント部会で東京に出張した翌日に、とあるワークショップに参加し、名古屋大学の加藤博和先生の講話を聴く機会があった。

 当時は前職の農業委員会事務局に従事していたので公共交通とは無縁であったが、加藤先生の公共交通、特に地域バスに関する知識と見識と情熱に感銘したのを思い出した。

 「地域公共交通をどのようによくしていくか」を考えていたそのタイミングで、偶然にも加藤先生が隣町に出張されているのをSNSの投稿で知った。早速面会の申し出をしたところ、ご快諾いただき、福祉バスの課題解決についてお話を聞かせていただいた。

 加藤先生は、地域公共交通会議の仕組みを作った方で、地域公共交通会議の「ありたい姿」の本質を持っておられることを知ることができた。全国的に地域公共交通会議が公共交通助成金の要件になっていて、形骸化になることを懸念されていた。

 先生は、地域公共交通機関、特に地域のバスに造詣が深いという以上に、情熱を傾けていると感じた。全国の地域バスの活性化のためにご尽力されていて、どの地域も抱えている課題は同じだと思った。

 今回の調査の結果、具体的な福祉バスの現状と課題が見つかり、その結果、野尻版地域公共交通会議の構想について思いを伝えさせていただき、アドバイスをいただいた。 「地域公共交通会議を独自に開催することはとても良いので、ぜひ進めてほしい。そして、地域住民が集まって話し合う場ができたら、ぜひ呼んでほしい」との言葉もいただいた。

 しかしながら、私の企画提案の能力と調整不足から、未だ会議の開催に至っていないのが現状である。

 この状況をなんとか打破したいとの思いから、市民活動としての「地域公共交通会議」の場づくりが必要だと感じている。行政主導の会議でなく、市民主導の会議の発足について研究を始めた。

能勢誠さん

宮崎県小林市市民生活部 生活環境課 資源リサイクルグループ主幹 能勢誠さん

今後の取り組みとして

 「みんなの想い」で地域公共交通をいきいきしたものに変えていくために、「みんなが安心して暮らしていける地域を支える公共交通を自ら守り育てる」体制づくりを実現し、なぜ公共交通が地域にとって必要なのかをよく議論したい。

 加藤先生のご指導を胸に、バス停調査毎調査や聞き取り調査等により現状を踏まえ、これからの福祉バスはどうあるべきか、地域が真に必要とする交通を「作り」「守り」「育てる」ことをしていきます。

関連記事
「SIMとよはし2030」を財政健全化に活用~伝え方の工夫で受け手側の行動が変わる
大阪府枚方市「ワークプレイス改革」による働き方改革の推進
市民総参加型映画で「地域の未来をつくる人をつくる」みしまびと
高校生クオリティ高すぎ。小林市の新PR動画は47人のプランナー企画
なぜかモヤモヤ…小林市長が小林市をPRをする小林市の動画が謎すぎ
■早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会とは
安倍内閣が目玉政策として進める「地方創生」をキーワードに、「地方」「自治体」のあり方に改めて注目が集まっている。市民との協働や官民連携が重要になっている中で、特に職員の働きが大きな鍵となっている。これまで自治体では民間の手法を用いた「スキルアップ」は数々試行されてきたが、本来的に必要なのは意識改革であり、人や組織を巻き込むことのできる人材が求められている。早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会では「人材を変え、組織を変え、地域を変える」ことを目的に、立ち位置を変え、主体的に動き、思い込みを打破するリーダーを育成することを目指している。
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所 人材マネジメント部会
facebookページ
関連ワード : 交通 公務員 宮崎 小林市 福祉