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特集「ネット選挙元年2013」

ネット選挙解禁でどう変わるのか?<有権者編>1/3

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松田 馨氏

松田 馨氏

解禁が間近に迫った「インターネットを使った選挙運動(以下、ネット選挙)」。すでにさまざまなメディアに登場しているトピックなので、注目している方も多いと思います。ネット選挙とは何か? メリットとデメリットは? ネット選挙時代を迎える今、選挙プランナーの松田馨氏に“ネット選挙の基礎”を分かりやすく解説していただきます。まずは、前編として基本的な知識のおさらいです。

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◇        ◇        ◇

 今夏の参議院選挙でのネット選挙解禁が現実味を帯びてきました。私は2006年から選挙の仕事に携わっていますが、国政選挙のたびに議論はされるものの解禁されず、という状況が続いてきました。先進国において、ネット選挙運動が禁止されているのは日本だけです。今度こそ、解禁を実現してほしいものです。

 さて、マスコミなどの報道では「ネット選挙解禁」と言われていますが、「ネット投票」が解禁されるわけではありません。今回議論されているのはネット“選挙運動”の解禁であって、ネット“投票”についてはエストニアなどの一部の国を除いて、まだ多くの国で実現していないのが現状です。

選挙運動」と「政治活動」はどう違うのか

 そもそも、選挙運動とは何なのか。整理をすると、次のようになります。

 (1)特定の選挙において
 (2)特定の候補者に
 (3)当選をはかること、または当選させないことを目的に投票行為を勧めること

 例えば「今夏の参議院議員選挙で、◯◯候補に、1票をお願いします(投票しないでください)」というのが「選挙運動」。候補者がたすきをかけて、スピーカーと大きな看板を載せた街頭宣伝車(選挙カー)に乗って「◯◯候補に清き1票お願いします!」という運動です。この選挙運動は、選挙期間中(選挙の告示・公示日から投開票日前日まで)に限って行うことができます。告示・公示日より前に選挙運動を行うと、「事前運動の禁止」という公職選挙法違反になります。

 ネットによる事前運動の例として、2012年12月に行われた東京都知事選挙における、社民党の福島瑞穂党首のツイートが挙げられます。福島党首は、自身のツイッターで「脱原発統一候補宇都宮けんじさんをみんなので力で都知事選で、当選させよう!(原文ママ)」とツイート。これが「事前運動に当たる」との指摘があり、数時間後に削除することになりました。

 とはいえ「多くの候補者・政治家は選挙期間外でも街頭に立って演説をしたり、ビラを配ったりしているではないか」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。実はこれ、ややこしいのですが「政治活動」として認められています。

 政治活動とは、政治上の目的をもって行われる一切の活動を指しますので、本来は選挙運動も政治活動の一部なのですが、公職選挙法では選挙運動と政治活動を明確に区別しています。政治活動の定義は、

”政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの”

画面1

頻繁に更新される安倍首相のページは多くの読者を集めている(フェイスブックより)

 とされています。つまり、上記した選挙運動の定義に当てはまらない、政策を訴える行為や、後援会への勧誘活動などは、政治活動として広く認められているのです。

 ですから、政党や政治家が、ホームページやブログ、メルマガ、フェイスブック、ツイッターといったSNSを利用して政治活動を行うことは禁止されていませんし、実際にネットを使った政治活動はすでに行われています。選挙に立候補する候補者や政党のほとんどが、ホームページやSNSアカウントを開設していますし、最近では安倍晋三首相のフェイスブック(フォロワー約24万人)、橋下徹大阪市長のツイッター(フォロワー約98万人)など、SNSの活用も活発になっています。

時代遅れの公選法

 公職選挙法(以下、公選法)が施行された1950年には、パソコンもインターネットもありません。ですから、公選法に「ネット選挙運動は禁止」と書いてあるわけではないのです。

 公選法は、「候補者の資金力による格差を防ぐ」という名目で、選挙期間中に配布や掲示ができるポスターやビラ(文書図画=ぶんしょとが=)に、サイズや枚数の制限を設けて、すべての候補者が同じ条件になるようにしています。この認められた文書図画以外はすべて違反という前提にもとづいて、総務省がディスプレイ上に表示されるホームページや動画も「文書図画」に当たると判断したため、日本ではネット選挙が禁止と判断され、自粛されてきました(余談ですが、公選法にはネット選挙の記載がない代わりに、個人演説会の会場内外で使用が認められている「ちょうちん」のサイズについての規定があります。昔は街灯が少なかったということの名残なのでしょうが、まったくもって時代遅れの法律です)。

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