統一地方選挙の重要な争点~人口減少と公共施設の更新をどう考えるのか  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

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統一地方選挙の重要な争点~人口減少と公共施設の更新をどう考えるのか (2015/3/17 政治山)

4年に一度の統一地方選挙が近づいてきました。全国各地で選挙戦が繰り広げられることになりますが、それらの選挙ではどのようなことが主な争点になりそうなのか。地方自治の研究をしている東京大学大学院情報学環交流研究員の本田正美氏に伺いました。

(左写真)小金井市庁舎、(右グラフ)人口減少のプロセス

(左)使い続けるなら耐震診断が必要な築50年を迎える小金井市本庁舎、(右)人口減少のプロセス(東京大学大学院客員教授 増田寛也氏「人口減少問題と地方の課題(2014年1月30日)」より)

現在の自治体における主要な課題とは?

――それぞれの自治体が抱える課題への対応が選挙の争点になると思いますが、一番大きな課題は何になりますか?

「昨年話題になった増田レポートの衝撃はどの自治体においても非常に大きなものだと思います。人口減少という課題を抱えていない自治体はごく少数です。全国各地で、まずは人口減少への対応が主要な争点になるのではないでしょうか」

――人口減少への対応ということですが、具体的にどのような施策が自治体において考えられるのでしょうか?

「人口減少には、生まれる子どもの数が減る自然減と、その地域から別の地域へ人が流出する社会減の2つの減少があります。日本全体では、自然減が大きな課題となっていますが、自治体レベルで言えば、その両方の減少にどう対応するか。両方の面での対応が必要と言えます」

2つの人口減に対応する施策とは?

――人口減少には2つの減少があるとのことでした。それぞれについて、どのような施策が選挙では焦点になるのでしょうか?

「自然減については、子育てに関する施策の充実が焦点になります。子どもを産み育てやすい環境をいかに作っていくのか。今回の統一地方選挙でも、この点について様々な主張をする候補者が多く見られることになると思います。それこそ財政的な裏付けのない大盤振る舞いを主張する候補者も続出するでしょうから、注意が必要です」

「社会減については、他の自治体と比較して、自分たちの自治体が『選ばれる』自治体であることが第1の対策になります。自治体としての魅力をいかに向上させていくのか。昨今では、シティプロモーションに努め、30代夫婦を域外から集めることに成功している流山市のような例もあります。各地域の産業政策などとも関連して、その地域の魅力向上策についても今回の選挙では様々なアイデアが出されてくるのではないでしょうか」

公共施設の更新という隠れた大問題

――人口減少への対応ということが主な争点になるとのことですが、他に重要な争点は何かありますか?

「人口減少の陰に隠れてしまった印象はありますが、公共施設の更新をいかに行っていくのかということは数年前から自治体の関係者の中で議論されている重要な課題です。先日も、静岡県伊豆の国市の韮山庁舎が耐震診断の結果、強い地震が起きると倒壊する恐れが極めて高いと判断され、3月27日限りで閉鎖されることになったという報道がありました」

――公共施設の更新ということですが、具体的にどのようなことが選挙では争点になりそうですか?

「既に、政治山でも議員コラムなどでこの問題は何度も取り上げられています。選挙での争点ということでは、今後どのような施設を新たに整備するのか、現在の施設をいかに維持・管理し、更新していくのかということになります。これまでは、新しく施設を作ることが選挙でも争点になってきましたが、今回は維持・管理や更新が争点になると思います」

――公共施設の更新でも特に注目すべき施設はありますか?

「それは、間違いなく市町村の庁舎になると思います。小金井市の白井亨議員が、新庁舎建設凍結と第二庁舎取得問題について政治山に寄稿していますが、このような事例は全国各地で見られるもので、今回の統一地方選挙でも、特に首長選挙では市庁舎のあり方が主な争点になるところがあるでしょう」

――具体的に、市庁舎の建て替えが争点になっている自治体を紹介してください。

「以前、ポエム条例で紹介した人吉市はまさに市庁舎の新設の是非が問われる市長選挙になるでしょう。現職の市長は、市役所別館地一帯への庁舎移転と新設を目指しています。これに対して、市議会議員を辞職して市長選へ立候補を表明している松岡隼人氏は市庁舎の移転には賛成するものの、新設ではなく、既存の公共施設の利活用を主張しています」

――既存の施設の利用ということについて詳しく教えてください。

「これは、富山県氷見市の市庁舎の事例が参考になると思います。松岡氏もこれを意識しての発言だと思われます。氷見市は、市庁舎の移転にあたって、旧有磯高校体育館等を改修整備して氷見市役所新庁舎としました。この事例のように、使われなくなった公共施設を再利用するという手法は今後注目を集めていくと思われますし、今回の統一地方選挙でも、新設に反対する候補者から代替案として主張されることになるのではないでしょうか」

(写真)氷見市新庁舎

廃校をリノベーションした氷見市新庁舎

参考記事
氷見市の庁舎移転について(外部サイト)
富山県氷見市の「フューチャーセンター庁舎」
「新庁舎建設凍結と第二庁舎取得問題」で感じた議会の役割とは
公共施設の維持・管理・更新。みなさんの街は今後どうしていきますか?
これからの箱モノ建設のあり方について
次世代のために私たちができること
地域の独自色が出るポエム条例、全国でポエム化は拡がるのか!?
本田正美氏【取材協力】
東京大学大学院情報学環交流研究員 本田正美

1978年生まれ。東京大学法学部卒。2013年、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環交流研究員。専門は、社会情報学・行政学。特に電子政府に関する研究を中心に、情報社会における行政・市民・議会の関係のあり方について研究を行っている。共著本に『市民が主役の自治リノベーション』(ぎょうせい刊)がある。
本田正美氏の記事
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