「インターナショナルオープンデータデイ2014」流山市リポート (2014/2/27 政治山)
インターナショナルオープンデータデイとは、Open Knowledge Foundationが主催し、オープンデータの普及啓発を目的として世界で一斉開催されるイベントです。行政機関や自治体が保有する情報を著作権フリーで二次利用できる形式で公開するオープンデータを利活用したアプリケーション開発を行うハッカソンや、アイデア出しをするアイデアソンが開催されています。2014年2月22日に世界158都市、国内では東京、千葉、横浜、名古屋、大阪、京都など32都市で開催されました。今年は32都市と開催地が昨年と比べ4倍となったことからも、国内各地でオープンデータへの関心が高まりを見せています(2014年の国内開催地情報)。今回、流山市のイベントに参加した江戸川大学4年生の中條友里さんが当日の模様をリポートします。
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もっと魅力的なマチへ 市民目線のアイデアを提案したい!
「もっと魅力的なマチへ」を合言葉に「International Open Data Day2014@NAGAREYAMA」が、千葉県流山市にある江戸川大学にて開催された。主催は「Code for NAGAREYAMA IOD 2014 実行委員会」で、流山市在住の学生や子育て世代、同市在住30年以上のベテランまで幅広い年齢層の市民42人が参加した。
オープニングでは、今回の主催者である近藤美保 実行委員長が挨拶。自身の育児休業中に地域活動に参加したことがきっかけとなり、市民が自分の地域に愛着をもち、主体的にマチを良くしていくことに興味をもったことから今回のイベントを企画したこと、また、オープンデータをきっかけとして流山市の政策を知り、考えることで市民目線の新たな提案をしたいと、イベントの主旨が伝えられた。
キーノートスピーチとして、アドバイザーである東京大学公共政策大学院客員教授の奥村裕一氏が発表した。古代アテネの時代から情報は共有されていたこと、さらにオープンデータの取り組み状況に関する世界の潮流が話され、民主主義の確立には情報のオープン化と共有が不可欠であることが強調された。
また、18世紀後半の哲学者カントの言葉にふれ、「啓蒙とは人間が自ら招いた未成年状態から抜け出ることと著書で書いているが、これは『子どもは親から言われたことしかできないが、大人になるということは自分の頭で考えて理解すること』ということ。
これからは『読み書き×そろばん×ICT』の時代で、文字や数字だけでなく、ICTはデジタル文化を操るために必要であり、それを使いこなして21世紀の大人になろう、オープンデータは公共データの開放であるが、それは、市民が自分の考えを持つためのソフトなインフラだ」とメッセージを述べた。
流山市長の井崎義治氏からは、今日は各グループに行政職員も参加しているので良いアイデアが出れば、市の政策に反映させていきたいとの激励があった。
90分の濃密な時間 アイデアソン
アイデアソンは参加者を自然・子育て・防災・広報という4つのテーマに分けてグループごとに行われた。
また、twitterのハッシュタグ機能や、インターネットで生配信できるUstreamを使用して、世界中の人へ情報発信をしていた。まさに、市民の意見を世界に届ける瞬間だった(イベント当日の動画はこちら)。
参加者は、自然・子育て・防災・広報のテーマでファシリテーターを中心に、グループディスカッションを進めていく。まず課題・問題点の共有を確認した後に、改善点・改善策の提案を行い、それらをまとめて必要な公開データは何かまで考えて、最後に発表を行う。そして、どの班の案が一番良かったかを参加者の投票から決定するという流れだった。和気藹々としながらも活発にアイデア出しが行われていた。話し合いのポイントは90分という短い時間で、どれだけ「身近」で「共感」を呼べるものにテーマを落とし込めるかであった。
4グループの発表
自然グループは「自然に触れ合う機会を増やす」ということをテーマとし、市内の自然の中で遊べるスポットの共有のためにオープンデータを使用するという発表だった。
子育てグループは「子どもの健康を見守るアプリ」をテーマとし、子どもの予防接種のスケジュール管理などをするために、病院の所在地や診療時間や、子どものカルテ情報などをオープンデータで使用するという発表をした。
防災グループは「流山防災総合サイト(平常時は市民のコミュニティサイト)をつくる」をテーマとし、情報の一元化と市民との双方向性の追求を課題としていた。
広報グループは「情報をいかにして届けるか」をテーマとし、市の広報に興味のない人にも如何に広報紙を読んでもらうかという観点で発表した。紙媒体ではなく、インターネット掲載・電車の中吊り広告や、クーポンを付けるなど、読みたくなるような斬新なアイデアを出していた。
この取り組みを継続してほしい
各グループの発表後に会場で投票が行われ、1位に輝いたのは子育てグループの「子どもの健康を見守るアプリ」だった。4つのテーマの中で一番具体的かつ身近な、子どもの健康に関する親の心配、切実さが伝わる提案だったことが選ばれた理由だ。東京大学公共政策大学院の奥村裕一教授は「このイベントは、市民が本当にして欲しい行政を話し合う場。一番良いのは、この場で話し合ったことやアイデアが行政に取り入れられることである。しかし、もっとアイデアを深堀りするなり、運動したりしないと、実際に行政に取り入れられることは難しい。また、市民から働きかけることも重要だが、議員や市から積極的にオープンデータを使用していかないと片側通行になりかねない」と述べ、「ここで考えた経験をここで終わりにしないで、今後も続けていってほしい」と参加者たちに呼びかけていた。
取材をしてみて
取材をする前は、もっと堅苦しい場だと思っていたが、実際はお菓子を食べながらリラックスした雰囲気の中、アイデア出しをしていた。グループディスカッションを聞いていて、参加者から出た意見や疑問がアイデアや具体的な解決策に発展していく過程が面白かった。また、議論が白熱しても、参加者が皆、楽しそうにしていたことが非常に印象に残っている。
会場の後方スペースには保育スペースがあり、保育士やスタッフが子どもの保育をしていた。保育の整備はハードルがあったそうだが、子育てを標榜する流山のイベントに保育は必須というスタッフの熱い思いがあり決行したとのこと。結果、白熱したディスカッションと、たまに聞こえる子どもの声が重なって、流山らしい風景になった。主催者の近藤実行委員長は、良質な子育て環境を期待して、流山に移り住んできた二児の母である。今回の企画には、母親ならではの発想が要所に現れていた。
ぜひ今後も継続して、市民の身近な声を世界へと広めていって欲しいと感じた。アイデアソンという気軽な場で出た些細な意見や疑問やアイデアも、やがて大きなうねりとなり、行政を動かすまでに発展していくだろう。
(取材スタッフ/江戸川大学メディアコミュニケーション学部マス・コミュニケーション学科4年 中條友里)
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関連ページ
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